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いきなり、こんな質問からで大変申し訳ないです…私は会計事務所経営という立場上、いろいろな経営者の方や税理士事務所の方とお会いする機会があります。
経営者の認識と税理士事務所の認識が大きく食い違っているのに、放置されているテーマなので、今回記事にしてみました。基本的なことですが、知らないと後々税金を多く払う可能性があります。
税理士の仕事は税金の計算を「正確」に行うことです。
日本では、経営者が「自分」で税金(所得税や法人税)の計算を行って申告・納税をすることになっています。難しい言葉で言えば、「申告納税方式」といいます。
ただ、経営者が申告・納税を行うことは結構難しいことです。日々の取引を仕訳という形で保存し、それを集計して申告書を作成するためには、手間も時間も慣れも必要になってきます。
このめんどくさい作業を代行してくれるのが、税理士です。税理士の仕事は、日々の取引を「正確」に集計し、それを「正確」に申告書に表現するのみです。
税理士によって税金の計算が「正確」に行われれば、以下のようなデメリットを避けることができます。
- 申告漏れによる納税遅延に対する延滞税の支払い
- 誤った申告方法による追徴課税(加算税)の支払い
デメリットを避け、煩わしい申告を経営者が行わなくてよいので、経営者にとっては嬉しいことのはずです…
税理士は節税が仕事ではない。
税理士の仕事は税金計算を正確に行うことだとお話しました。税理士に任せておけば、延滞税や加算税を払う可能性は限りなく0に近づくということです。
ただ、税理士の仕事には税金を「減らす」こと、すなわち節税は含まれていません。税金計算と節税対策は関係の近い業務なので、ある程度知識がある税理士は多いですが、税理士は決して節税対策のプロではありません!
そもそも、税金計算を「正確」に行うことと節税対策を適切に行うことは相反する可能性があります。節税対策は判断により見解が分かれるところ(いわゆるグレーゾーン)があるので、税理士の仕事としてはあまり手を出したくないところでしょう。
例えば、法人のがん保険ですが、2016年11月末現在では、保険料の50%を経費処理できるとの通達があります。(参考:法人が支払う「がん保険」(終身保障タイプ)の保険料の取扱いについて(法令解釈通達))
でも、保険会社が提案してくる商品には、100%経費処理できるものがあります。理論上は100%経費処理できるような契約形態になっているのでしょうが、税務上の裏付けがないので、見解が分かれる可能性があります。
自分がもし税理士だったら、自信をもって100%経費処理できると判断することができるでしょうか?責任問題があるので、保守的に「50%は経費にできるけどそれ以上は経費にできない」という答えをするのではないでしょうか?でも、その回答は、税理士の仕事としては正しい回答ですが、必ずしも経営者のための回答ではありませんよね。
あなた自身が税金(節税)の知識を身につけるしかない!
今回言いたかったことは、税理士は節税のプロではないので、税理士に丸投げするのではなく、経営者自身が節税対策のための税務知識を身につけなければならないということです。経営者が自分で動かなけば、利益が出ても、税金ばかり支払って、資産が残らないという事態も想定されます。
個人事業主であれ会社の社長であれ経営者は、税金を減らす対策をしっかり練って、正しい方法で実施することが求められます。そのうえで、「節税対策」にも詳しい税理士に相談すれば、よいアドバイスを貰える可能性があるぐらいに思っておいた方がよいでしょう。