アパートやマンションの入居者募集では、大家が不動産会社に仲介手数料や広告料(AD)を支払います。これらを「何費」で処理し、消費税はどうなるのか迷う方は多いはずです。
この記事では、大家が募集で払う費用の勘定科目・仕訳・消費税を、不動産業専門の税理士が整理します。
入居者募集で大家が払う費用の勘定科目・消費税(早見表)
仲介手数料・広告料・入居促進費の消費税は課税(10%)。ただし住宅向けの賃貸では、払った消費税が戻ってこないことが多い。
まず全体像を早見表で確認しましょう。
| 費用 | 勘定科目 | 消費税 |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 支払手数料 | 課税10% |
| 広告料(AD) | 広告宣伝費 | 課税10% |
| 入居促進費・プレゼント | 広告宣伝費 | 課税10% |
| フリーレント | 費用ではなく家賃の減額 | 居住用=非課税/事業用=課税売上の減少 |
| 賃貸管理料 | 支払手数料(管理費) | 課税10% |
仲介手数料は「支払手数料」|賃料1か月分が目安
大家が払う入居者募集の仲介手数料は、支払手数料として処理し、消費税は課税仕入(10%)です。
宅建業法では、賃貸の媒介報酬は貸主・借主あわせて家賃1か月分+消費税が上限と定められています。大家と借主のどちらがいくら負担するかは、当事者間の合意で決まります。
家賃5万円の物件で、大家が仲介手数料1か月分(税込5万5,000円)を払った場合の仕訳は次のとおりです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払手数料 | 5万5,000円 | 普通預金 | 5万5,000円 |
広告料(AD)は「広告宣伝費」|仲介手数料との違い
広告料(AD)は、大家が仲介手数料とは別に不動産会社へ上乗せして払う費用で、広告宣伝費として処理します。
実務では、空室がなかなか決まらないときに、大家が「AD(広告料)として家賃1〜2か月分」を出すと決め、募集図面に載せて入居者を見つけてくれる不動産会社に物件を優先的に紹介してもらう、という使われ方をします。
仲介手数料の上限(家賃1か月分)とは別枠で払えるのが特徴です。
仲介手数料との違いを表で整理します。
| 項目 | 仲介手数料 | 広告料(AD) |
|---|---|---|
| 性質 | 成功報酬 | 任意の広告依頼 |
| 上限 | 家賃1か月分 | 上限なし |
| 勘定科目 | 支払手数料 | 広告宣伝費 |
| 消費税 | 課税10% | 課税10% |
ただし広告料(AD)は、宅建業法上は大家が特別に依頼した広告で、事前の承諾があるものに限り認められると整理されています(東京高裁の基準)。
家賃1か月分(税込5万5,000円)のADを払った場合の仕訳は次のとおりです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 広告宣伝費 | 5万5,000円 | 普通預金 | 5万5,000円 |
入居促進費(プレゼント等)とフリーレントの扱い
「入居促進費」は、空室を埋めるために大家が負担する費用の総称で、決まった勘定科目はありません。
家電や金券のプレゼント、引越代の負担、キャンペーン費用などは、不特定多数に向けた広告が目的で通常要する範囲なら、まとめて広告宣伝費として経費にできます。
注意:特定の入居者への高額なお礼やプレゼントは、広告宣伝費ではなく交際費に区分されることがあります。交際費も経費にはなりますが、法人は損金にできる額に上限(中小法人で年800万円まで)があり、個人でも事業との関連性が問われます。広告宣伝費と分けて考えましょう。
一方、フリーレント(入居後の一定期間、家賃をタダにすること)は、広告料やプレゼントと違って大家からお金が出ていきません。もらえるはずの家賃をその期間だけ受け取らないだけなので、経費にはならず、家賃収入が減るだけと考えればOKです。
フリーレントの消費税は、むずかしく考えなくて大丈夫です。
住宅(居住用)の家賃はもともと消費税がかからないので、無料にしても消費税は関係ありません。
店舗や事務所(事業用)の家賃には消費税がかかりますが、無料にした期間は家賃をもらわないので、その分の消費税も発生しません。
つまり、実際に受け取った家賃の分だけ消費税を計算すればよく、フリーレントのための特別な処理は必要ありません。
消費税の注意点|住宅向けの賃貸は払った消費税が戻らないことがある
募集費用には消費税(10%)がかかりますが、住宅向けの賃貸では、その消費税が戻ってこない(差し引けない)ことが多いです。
消費税は、「家賃などで受け取った消費税」から「経費で払った消費税」を差し引いて納めるしくみです(差し引くことを、専門用語で「仕入税額控除」といいます)。
ところが、住宅の家賃には消費税がかかりません(非課税)。
家賃で消費税を受け取っていないので、募集費用で払った消費税は差し引く相手がなく、戻ってきません。
一方、店舗や事務所など事業用の賃貸は、家賃に消費税がかかります。
家賃で消費税を受け取っているので、募集費用で払った消費税は差し引ける(戻る)のです。
【補足】そもそも消費税を納めていない大家(免税事業者)や、かんたんな方法で消費税を計算している大家(簡易課税・2割特例)は、この「差し引き」を細かく計算しないので、ここは気にしなくて構いません。
実際の消費税は、家賃の内訳や申告のしかたで変わります。
判断に迷う場合は、必ず税理士にご確認ください。
仲介手数料・広告料(AD)は源泉徴収不要|経費にする時期は入居決定時
大家が不動産会社に払う仲介手数料や広告料(AD)は、源泉徴収の対象になりません。
源泉徴収とは、お金を払うときに相手の所得税を一部天引きして、代わりに国に納める手続きです。
天引きが必要なのは、原稿料や税理士・弁護士への報酬など限られた支払いだけで、不動産会社へ払う仲介手数料・広告料はこの天引きの対象になりません。
不動産会社から請求された金額を、そのまま払えば大丈夫です。
仲介手数料や広告料(AD)を経費にするのは、入居者が決まって賃貸借契約が成立したときです。
これで不動産会社の仕事(客付け)が完了し、支払う義務が確定するためで、支払いが翌月になっても、入居が決まった月の経費になります。
まとめ:入居者募集で大家が払う費用の経理
ここまでの要点を整理します。
- 仲介手数料は支払手数料、広告料(AD)と入居促進費は広告宣伝費で処理する。
- いずれも消費税は課税(10%)。ただし住宅向けの賃貸では、払った消費税が戻ってこないことが多い。
- フリーレントはお金が出ていかないので経費にはならず、家賃収入が減るだけ(消費税も特別な処理は不要)。
- 不動産会社へ払う仲介手数料・広告料は源泉徴収(天引き)不要で、請求どおり払えばOK。経費にするのは入居が決まった月。
募集費用は金額が大きく、何度も発生するため、消費税の扱いしだいで負担に差が出ます。
不動産業に強い税理士に相談すると、経費のもれや消費税の判断ミスを防げます。
よくある質問(FAQ)
- 賃貸の仲介手数料の勘定科目は?
-
大家が払う入居者募集の仲介手数料は、支払手数料で処理します。消費税は課税仕入(10%)です。
- 広告料(AD)は何費になりますか?
-
広告宣伝費です。宅建業法の報酬規定を超えて大家が任意で払う上乗せの広告費で、消費税は課税(10%)です。
- 募集費用で払った消費税は戻ってきますか?
-
住宅向けの賃貸では、家賃に消費税がかからないため、募集費用で払った消費税は戻ってこないことが多いです。店舗や事務所など事業用の賃貸なら戻ります。なお、消費税を納めていない大家(免税事業者)や、かんたんな方法で計算している大家(簡易課税・2割特例)は、そもそも払った消費税を差し引く計算をしないので、この「戻る・戻らない」を気にする必要はありません。
- 仲介手数料や広告料に源泉徴収は必要ですか?
-
不要です。これらは所得税法で源泉徴収が定められた報酬には含まれません。
出典・参考


コメント
コメント一覧 (2件)
実際に不動産会社が賃貸人を探してきて、無事、賃借人が入居してくれると成功報酬として仲介手数料を払うことになります→「賃貸人」は「賃借人」。
ご指摘ありがとうございます。
修正致します。