
- 日常業務に自動車を利用している個人事業主で節税対策について興味がある人
- 中古自動車を利用した節税対策に興味がある中小企業の経営者
今回は、中古自動車購入による減価償却を利用した節税対策について説明していきます。
自動車を事業で利用する業種ならば比較的導入しやすく、計画的に行うことでかなりの節税が期待できる方法です。
減価償却の概要
減価償却とは、自動車の取得に要した費用を使用可能期間で分割して経費に計上していく手続のことです。
業務のために使用される自動車は、走行距離や時間の経過によって、消耗していきます。
よって、自動車の取得に要した費用は、取得した時に全額経費にするのではなく、自動車の使用可能期間に渡って、分割して経費に計上していくことになります。
減価償却の方法には定額法と定率法という2つの方法があります。
定額法は毎年同額を減価償却していく方法で、定率法は序盤に大きな費用を減価償却費として経費に計上し、後になるほど減価償却費として経費に計上できる金額が先細っていく方法です。
個人事業主の場合、届出を出さないと自動車の減価償却方法が定額法になってしまいます。
中古自動車購入による減価償却費を利用した節税対策を行うならば、減価償却方法を定率法に変更する届出を変更する年の3月15日までに税務署に提出してください。
もし、個人事業主が定額法から定率法への変更の届出書の提出を忘れると、節税額が半分ぐらいになってしまいます。
会社の場合、届出を提出しないでも自動車の減価償却方法として最初から定率法が採用されますので、そのままで中古自動車購入による減価償却費を利用した節税対策を行うことができます。
中古自動車を購入して節税対策をしよう
減価償却の耐用年数(使用可能期間)について
減価償却は、自動車の取得に要した費用を使用可能期間で分割して経費に計上していく手続だと説明しました。
この使用可能期間が短いほど最初に経費に計上できる減価償却費は多くなります。
なお、使用可能期間のことを専門用語で耐用年数といいます。
そして、自動車の耐用年数(使用可能期間)は新車の場合と中古車の場合で計算方法が異なります。
新車の場合は、法定耐用年数(法律で決められた使用可能期間)というものが定められており、耐用年数(使用可能期間)は、5年又は6年(業種により異なる)になってしまいます。
一方、中古車の場合は、基本的に以下の計算式で耐用年数(使用可能期間)を算定することになります。
耐用年数=(法定耐用年数―経過年数)+経過年数×20%
※ 計算結果の耐用年数の端数は切捨てで、2年未満の場合は2年です。
説明のため、2つ例をあげてみます。
なお、耐用年数(使用可能期間)を計算する時はいったん月数に直して計算し、その後、年数に直すようにしてください。
- 法定耐用年数6年の中古自動車を購入しました。
3年10か月使用された中古自動車の購入だった場合の減価償却で利用できる耐用年数を計算してください。 - 耐用年数=(72か月―46か月)+46か月×0.2=26か月+9.2か月=35.2か月⇒2年11か月
よって、端数切捨てのため、耐用年数は2年になります。
- 法定耐用年数6年の自動車を中古で購入した。
3年9か月使用された中古車だった場合の自動車耐用年数を計算してください。 - 耐用年数=(72か月―45か月)+45か月×0.2=27か月+9か月か月=36.0か月⇒3年
よって、端数切捨てのため、耐用年数は3年になります。
中古自動車の取得価額を即時に経費にできる耐用年数
減価償却は、自動車の取得に要した費用を使用可能期間で分割して経費に計上していく手続だと説明しました。
定率法の場合、耐用年数(使用可能期間)が2年の時は、即時に中古自動車の取得価額の全額を減価償却費として経費に計上できることになります。
ちなみに、定額法の場合、耐用年数(使用可能期間)が2年の時は、中古自動車の取得価額の5割までしか減価償却費として経費に計上できません。
つまり、法定耐用年数が6年である自動車の場合、3年10ヵ月以上型落ちしていれば、中古自動車購入費全額を減価償却費として1年で経費に計上できる可能性があります。
また、法定耐用年数が5年である自動車の場合、2年7ヶ月以上型落ちしていれば、中古自動車購入費全額を減価償却費として1年で経費に計上できる可能性があります。
購入すべき中古自動車は?
ここまでの流れに沿えば、中古自動車購入による減価償却を利用した節税対策は万全です。
ただし、中古自動車購入による減価償却を利用した節税対策を行う上で、絶対に忘れて欲しくない重大な注意点が1つあります。
自動車の売却時にある程度のお金が戻ってこないと節税対策としては成功しても、現金の出入りとしてはマイナスになり、意味がないということです。
例えば、減価償却を通して税金が通算で50万円減っても、自動車の購入価額が300万円で売却価額が100万円にしかならなかった場合、300万円−100万円−50万円=150万円のお金を手出ししていることになります。
個人事業主でも会社でも、最終的な目的は事業を通じて、手持ちのお金を増やすことで、節税対策をして税金を減らすことではありません。
つまり、上記の例では、節税対策としては成功してますが、経営上は失敗しているということになります。
よって、意味のある節税対策にするためには、売却時に購入時と同じ位の価値がある中古自動車を選ぶことが重要になります。
例えば、BMVやベンツだと中古自動車の購入価額も高くなりますが、売却価額も購入時点から下落しにくいので、最終的にお金が残る節税対策になりやすいです。
節税対策を完璧にするための実務上の注意点
最後に節税対策を完璧にするための実務上の注意点を2つ挙げておきます。
中古自動車の売却時期を考えておこう
中古自動車を最終的に売却する時点では、税務上、必ず自動車売却による利益が出てしまい、税金の課税対象になってしまいます。
帳簿上、減価償却を通して、中古自動車の購入価額は年々減価され、最終的には0円になるため、売却時の中古自動車の価格が1円以上になれば、どうしても自動車売却による利益が出てしまうということです。
会社の場合は、中古自動車の売却による利益と他の事業による損失を相殺できるので、他の事業から赤字が出ている時に自動車を売却して、納税額を調整することになります。
個人事業主の場合でも、中古自動車の売却による利益(譲渡所得)と他の事業による損失(事業所得)を相殺できる(損益通算といいます)ので、他の事業から赤字が出ている時に自動車を売却して、納税額を調整することになります。
いずれの場合でも、中古自動車をすぐに売れるとは限らないので、売却時期をきちんと計画して節税対策を行いましょう。
減価償却費は月割り計算しないといけない
減価償却は中古自動車を購入した時から行われますが、経費の計上額は月割り按分になります。
耐用年数が2年で、定率法により、中古自動車の取得価額が即時に償却できる場合でも、期末日間際に購入したら、購入した月~決算月までの月割り分しか減価償却に計上できなくなります。
例えば、3月末決算の会社で、1月末に100万円の中古自動車を購入した場合、減価償却できる期間は1月と2月と3月の3ヶ月分だけなので、100万円×3か月÷12か月=25万円だけを減価償却費として当期の費用に計上できることになります。
つまり、節税効果を最大に享受したいのならば、できるだけ期首の時点で中古自動車を購入しないといけないということになります。
しかし、最終的な決算が赤字の場合は、節税対策を行う意味はないのですが、黒字になるかどうかは期末間際にならないと分からないことの方が多いです。
そんな場合でも、会社ならば、減価償却費を当期の経費として計上するかどうかは任意なので、お金さえあれば、当期首に中古自動車を購入してしまい、当期の決算が赤字のならば、減価償却費の計上を取りやめて、翌期以降に経費に回すこともできます。
残念ながら、個人事業主の場合は、減価償却による経費計上は毎年強制ですので、借入などによる銀行等との関係で期末に赤字を出せない場合には、中古自動車購入による減価償却を利用した節税対策をするかどうかは慎重に判断した方がよいでしょう。