中古車の減価償却を利用した節税対策について

新車の法定耐用年数は6年ですが、中古車の耐用年数は最短で2年となります。

中古車の減価償却を定率法にすることで、耐用年数が2年の場合、取得価額(≒購入価格+付随費用)は1年で全額を経費に計上することが出来ます

今回は、中古車の減価償却を利用した節税対策について解説していきます。

中古車の減価償却を利用した節税対策は、どんな業種でも比較的導入しやすく、計画的に行うことでかなりの節税が期待できる方法になります。

減価償却の方法を定率法にしよう

減価償却とは、自動車の取得価額を使用可能期間で分割して経費に計上していく手続のことです。

法人や個人事業主の業務のために使用される自動車は、走行距離や時間の経過によって、消耗していきます。

よって、自動車の取得価額は、取得した時に全額を経費にするのではなく、自動車の使用可能期間に渡って、分割して経費に計上していくことになります

減価償却の方法には定額法定率法という2つの方法があります。

定額法は毎年同額を減価償却していく方法で、定率法は序盤に大きな費用を減価償却費として経費に計上し、後になるほど減価償却費として経費に計上できる金額が先細っていく方法です。

個人事業主の場合届出を出さないと自動車の減価償却方法が定額法になってしまいます

中古車の減価償却を利用した節税対策を行うならば、減価償却方法を定率法に変更する届出を変更する年の3月15日までに税務署に提出してください

もし、個人事業主が定額法から定率法への変更の届出書の提出を忘れると、節税額が半分ぐらいになってしまいます。

法人の場合、届出を提出しないでも自動車の減価償却方法として最初から定率法が採用されますので、そのままで中古車の減価償却費を利用した節税対策を行うことができます。

中古車の耐用年数について

減価償却は、自動車の取得価額を使用可能期間(以下、耐用年数といいます)で分割して経費に計上していく手続だと説明しました。

この耐用年数が短いほど最初に経費に計上できる減価償却費は多くなります

そして、自動車の耐用年数は新車の場合と中古車の場合で計算方法が異なります。

新車の場合は、法定耐用年数(法律で決められた使用可能期間)というものが定められており、法定耐用年数は、概ね6年になります

一方、中古車の耐用年数は、以下の計算式で算定することになります。

中古車の耐用年数=(法定耐用年数―経過年数)+経過年数×20%
※ 計算結果の耐用年数の端数は切捨てで、2年未満の場合は2年です。

説明のため、2つ例をあげてみます。

なお、耐用年数を計算する時はいったん月数に直して計算し、その後、年数に直すようにしてください。

3年10か月使用された中古車(法定耐用年数は6年)を取得した場合の耐用年数を計算してください。
耐用年数=(72か月―46か月)+46か月×0.2=26か月+9.2か月=35.2か月⇒2年11か月
よって、端数切捨てのため、耐用年数は2年になります。
法定耐用年数6年の自動車を中古で購入した。
3年9か月使用された中古車(法定耐用年数は6年)を取得した場合の耐用年数を計算してください。
耐用年数=(72か月―45か月)+45か月×0.2=27か月+9か月か月=36.0か月⇒3年
よって、端数切捨てのため、耐用年数は3年になります。

3年10か月以上経過した中古車は取得価額を1年で経費に計上できる

定率法の場合、減価償却に償却率というものが利用されます。

償却率とは、耐用年数に応じて決められた料率で取得価額(もしくは期首帳簿価額)に償却率を乗じることで、その年の減価償却費を計算できます。

なお、定率法の耐用年数が2年の場合、償却率は1になり、取得価額×1(償却率)で計算された金額がその年の減価償却費になります。

つまり、耐用年数2年の中古車は、中古車の取得価額の「全額」を1年で減価償却費として経費に計上できることになります。

つまり、法定耐用年数が6年である自動車の場合、3年10ヵ月以上型落ちしていれば、中古車の取得価額の「全額」を減価償却費として1年で経費に計上できます。

「3年経過の中古車と4年経過の中古車ならどちらが節税になる?」と職業柄よく聞かれますが、「3年10か月以上経過した中古車」が一番節税になるというのが答えになります。

取得すべき中古車について

中古車の減価償却を利用した節税対策を行う上で、絶対に忘れて欲しくない重大な注意点が1つあります。

自動車の売却時の価格が低いと、節税対策としては成功しても、現金の出入りとしてはマイナスになり、意味がないということです。

例えば、減価償却を通して税金が通算で50万円減っても、中古車の取得価額が300万円で売却価額が100万円にしかならなかった場合、300万円−100万円−50万円=150万円のお金を手出ししていることになります。

法人でも個人事業主でも、最終的な事業の目的は、手持ちのお金を増やすことで、節税対策をして税金を減らすことではありません

よって、中古車の減価償却を利用した節税対策を実施するには、売却時にある程度の価値がある中古車を選ぶことが重要になります。

例えば、ベンツなどは、中古車の取得価額も高くなりますが、売却価額も下落しにくいので、最終的にお金が残る節税対策になりやすいです。

減価償却は月割り計算になる

減価償却は中古車を業務に使用した日から行われますが、経費の計上額は月割り按分になります。

よって、耐用年数が2年で、定率法により、中古車の取得価額全額を1年で経費に計上できる場合でも、期末日間際に中古車を使用開始したら、中古車を使用開始した月~決算月までの月割り分しか経費に計上できなくなります

例えば、3月末決算の法人nで、1月末に100万円の中古車を取得した場合、減価償却できる期間は1月~3月までの3ヶ月分だけなので、100万円×3か月÷12か月=25万円だけを減価償却費として当期の経費に計上できることになります。

つまり、節税効果を最大に享受したいのならば、できるだけ期首の時点で中古車を購入しないといけないということになります。