賃貸用の不動産を所有すると、契約書に貼る収入印紙だけで、数万円から十数万円の出費になることがあります。印紙税は、土地の賃貸借や、土地・建物の売買、銀行融資など、契約書ごとに別々にかかります。
印紙税のルールを知らないと、印紙を貼り忘れて過怠税を取られたり、不要な契約書にまで貼って払いすぎたりします。
本記事では、賃貸用不動産にかかわる印紙税を、契約の種類ごとに整理します。そもそも印紙が必要かどうかから、金額・節税のコツまで、初心者にもわかりやすく解説します。
印紙税は不動産の「契約書」にかかる税金です
印紙税は、契約書や領収書などの文書にかかる税金です。賃貸用不動産を所有する場合は、契約書を作った当事者が印紙税を納めます。
印紙税の金額は、契約書の種類と契約金額によって決まります。契約金額が大きいほど、納める印紙税も高くなります。
賃貸用不動産のオーナーが関わる契約書のうち、印紙税がかかる主なものは次の3つです。
- 土地の賃貸借契約書(土地を貸すとき・借りるとき)
- 不動産の売買契約書(土地・建物を買うとき・売るとき)
- 金銭消費貸借契約書(銀行から融資を受けるとき)
まずは身近な賃貸借契約書から、建物と土地で印紙税の扱いがどう違うのかを確認しましょう。
賃貸借契約書の印紙は建物なら不要、土地だけ必要です
建物の賃貸借契約書が非課税である根拠は、国税庁No.7106「建物の賃貸借契約書」で確認できます。
一方、土地を貸し借りする契約書には、印紙税がかかります。土地の賃貸借契約書は第1号の2文書にあたり、権利金などの金額で税額が決まります。
- 不課税文書
-
印紙税法で課税対象に挙げられていない文書のこと。建物の賃貸借契約書がこれにあたります。
- 第1号の2文書
-
土地の賃借権の設定に関する契約書のこと。土地の賃貸借契約書が当てはまり、課税されます。
賃貸借契約書で迷ったら、まず対象が建物か土地かを確認しましょう。建物なら不要、土地なら必要と判断できます。
賃貸用不動産のオーナーが、アパートや店舗、事務所を入居者に貸すときの賃貸借契約書には、印紙税はかかりません。ただし、賃貸借契約書とは別に、家賃の領収書を発行する場合は、アパートや店舗、事務所に関わらず、5万円以上だと印紙税がかかります(第17号文書に該当)。一方、家賃の請求書には基本的には印紙税はかかりません(受取書も兼ねる場合は印紙税がかかります)。
続いて、不動産の売買契約書にかかる印紙税を見ていきましょう。
売買契約書の印紙税は軽減税率で安くなります【金額表】
不動産の売買契約書には、令和9年3月31日まで印紙税の軽減税率が使えます。売買契約書に記載された契約金額(売買代金)が10万円を超えるものが印紙税の対象です。
軽減後の印紙税は、売買代金(契約金額)に応じて次のようになります。
| 契約金額 | 軽減後の印紙税 |
|---|---|
| 500万円超〜1,000万円以下 | 5,000円 |
| 1,000万円超〜5,000万円以下 | 1万円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 3万円 |
| 1億円超〜5億円以下 | 6万円 |
たとえば売買代金が3,000万円の土地・建物なら、買主が貼る印紙税は軽減後で1万円です。軽減がなければ2万円なので、ちょうど半額になります。
不動産の売買契約書では、売主と買主が、それぞれ保管する契約書に印紙を貼ります。契約書を2通作るときは、2通とも印紙が必要です。
軽減後の正式な税額表は、国税庁No.7108「不動産の譲渡に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」で確認できます。
売買契約書の印紙税を確認できたところで、続いて融資の契約書にかかる印紙税を見ていきましょう。
融資(金銭消費貸借契約書)の印紙税は軽減されません【金額表】
銀行から融資を受けるときに結ぶ金銭消費貸借契約書(=お金の貸し借りの契約書)には、印紙税の軽減税率はありません。
不動産の売買契約書と違い、借主は借入額に応じた通常の印紙税額を納めます。
| 借入金額 | 印紙税(通常) |
|---|---|
| 500万円超〜1,000万円以下 | 1万円 |
| 1,000万円超〜5,000万円以下 | 2万円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 6万円 |
| 1億円超〜5億円以下 | 10万円 |
融資額が大きい不動産投資では、印紙税の負担も無視できません。
契約金額が同じ1億円でも、印紙税は売買で3万円、融資で6万円と差が出ます。
借入の契約前に、借入額に対応する印紙税の金額を確認しておきましょう。
融資の契約書を含む通常の印紙税額は、国税庁No.7140「印紙税額の一覧表」で確認できます。
3つの契約の印紙税を確認できたところで、続いて印紙税の納め方を見ていきましょう。
印紙税は収入印紙を貼って消印すれば納付完了です
印紙税は、収入印紙を契約書に貼り、消印することで納付が完了します。
収入印紙は、郵便局や法務局などで購入できます。
少額の収入印紙なら、コンビニでも購入できます。高額の収入印紙は、郵便局の窓口で買うのが確実です。
消印とは、印紙と契約書にまたがって印鑑を押すことです。消印は認印でもかまわず、署名でも有効です。
納付の手順は、次の3ステップで進めます。
契約書に記載された金額に合った収入印紙を準備します。
契約書の決められた位置に収入印紙を貼ります。
印紙と契約書にまたがって印鑑を押すか署名します。
消印は、印紙の使い回しを防ぐための大切な手続きです。消印を忘れると印紙を貼っても納付と認められず、過怠税の対象になります。
売買契約書は売主の分をコピーにすると印紙税を節約できます
不動産の売買では、売主が自分の分をコピーにすると印紙税を節約できます。原本を買主、写し(コピー)を売主が持つ形になります。
契約書を2通とも原本にすると、売主と買主の双方に印紙税がかかりますが、1通だけ原本にすれば、印紙税は原本1通分で済みます。
なお、実務では、契約書に「原本は買主、写しは売主が持つ」と定める特約を入れます。
売主が持つ写し(コピー)にも証拠能力はあり、契約の証明に使えます。買主が原本を保管するので、もめても原本と照合でき、売主が不利になることはほとんどありません。
節税のポイントを確認できたところで、続いて契約書に印紙を貼り忘れたときのリスクを見ていきましょう。
印紙を貼り忘れると過怠税という重いペナルティがあります
収入印紙を貼り忘れると、本来の印紙税額の3倍にあたる過怠税がかかることがあります。
ただし、調査の前に「印紙税不納付事実申出書」を税務署へ出せば、過怠税は1.1倍に軽くなります。貼り忘れに気づいたら、調査で指摘される前に申し出るのがポイントです。
消印を忘れた場合は、印紙の額面と同額の過怠税がかかります。過怠税は経費(損金)にできないため、負担を減らせません。
印紙税が10万円のとき、過怠税は3つのケースで次のように変わります。
| ケース | 過怠税 |
|---|---|
| 貼り忘れ(調査で指摘) | 30万円(本来の3倍) |
| 貼り忘れ(自主的に申告) | 11万円(本来の1.1倍) |
| 消印を忘れた | 10万円(印紙の額面と同額) |
なお、印紙を間違えて貼っても、消印の前なら郵便局で交換できます。
消印の後は、郵便局では交換できません。その場合、印紙税過誤納確認申請書を税務署に出すと、還付を受けられます。
まとめ|賃貸用不動産の印紙税は契約ごとに確認しましょう
賃貸用不動産の印紙税は、契約の種類ごとに要否と金額が変わります。建物の賃貸借は不要、売買は軽減税率、融資は通常税率と覚えておきましょう。
なお、家賃の領収書は居住用でも事業用でも5万円以上で印紙税が課税され、請求書(受取書も兼ねる場合は除く)には印紙税がかからない点も押さえておきましょう。
印紙税は1件あたりは少額に見えても、件数が増えると無視できない金額になります。正しい知識があれば、払いすぎも貼り忘れも防げます。
賃貸用不動産の印紙税に関するよくある質問
賃貸用不動産の印紙税について、よくある質問をまとめました。
- 建物の賃貸借契約書に印紙がいらないのはなぜですか?
-
建物の賃貸借契約書は、印紙税法で課税対象に挙げられていないためです。
賃料や敷金が書かれていても、収入印紙は不要です。
- 契約を解除したら印紙税は戻りますか?
-
印紙税は戻りません。契約書を作った事実は消えないため、契約を解除しても還付されません。
- 住居用の家賃の領収書にも収入印紙は必要ですか?
-
住居用でも事業用でも、5万円以上の家賃の領収書には印紙税がかかります。
どんなに小規模な個人大家でも継続的な営利活動(つまり、住宅の貸付を継続的に行う活動)を続ける限り印紙税の対象になります。
- 家賃の請求書にも収入印紙は必要ですか?
-
請求書には収入印紙は必要ありません。
ただし「代金を受け取った」旨が書かれていると、受取書とみなされ課税されることがあります。
- 入居時の清算書(敷金・礼金・日割り家賃・保険料などの振込案内)に収入印紙は必要ですか?
-
振り込んでもらう金額をまとめた「案内・請求」としての清算書には、収入印紙はいりません。
お金を受け取ったことを証する文書ではなく、請求書と同じく印紙税の課税文書に当たらないためです。
ただし、入金後に「受領しました」「お預かりしました」と受取りを証する書面として、清算書を発行してしまうと、領収書・敷金預り証などと同じように第17号文書(受取書)として課税対象になります。
その場合の内訳ごとの扱いは次のとおりです。
- 礼金・日割り家賃など(売上代金)=第17号の1文書。5万円以上で、金額に応じた印紙税。
- 敷金(返還される預り金)、保険料=第17号の2文書。5万円以上で一律200円。
参考文献(出典)


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