経営者自身が税金の知識を身につけよ!
この記事のポイント
  1. これから税理士事務所に仕事を頼もうと考えている経営者
  2. 税理士と節税対策の相談をしたが、いまいち論点が噛み合わない経営者
  3. 税理士から少しでも節税対策の情報を引き出したい経営者

あなたは税理士の仕事内容をご存じでしょうか?

いきなり、こんな質問からで大変申し訳ないです…

私は会計事務所経営という立場上、いろいろな経営者の方や税理士事務所の方とお話しする機会があります。

その話し合いの中で、経営者の認識と税理士の認識が大きく食い違っていると感じる、節税対策に関する認識を今回記事にしてみます。

税理士の仕事は税金計算を正確に行うこと

日本では、経営者が「自分」で税金(所得税や法人税)の計算を行って申告・納税をすることになっています。

これを、難しい言葉で言えば、申告納税方式といいます。

ただし、経営者が申告・納税を行うことは結構難しいことです。

日々の取引を仕訳という形で記帳し、それを集計して申告書を作成するためには、時間も知識も必要になってきます。

そして、この煩雑な作業を代行してくれるのが、税理士です

税理士の仕事は、日々の取引を「正確」に記帳・集計し、それを「正確」に申告書に表現することです。

税理士に依頼することよって、税金計算が「正確」に行われれば、以下のようなデメリットが起きるリスクを減らすことができます。

  • 申告漏れによる納税遅延に対する延滞税の支払い
  • 誤った申告方法による追徴課税(加算税)の支払い

つまり、税理士に仕事を依頼すれば、①煩わしい税務申告を経営者が行わなくてよくなり、②追加の税金の支払いリスクを減らせるということになります。

税理士は節税対策を仕事だと思っていない

税理士の仕事は税金計算を正確に行うことでした。

よって、税理士は税金を「減らす」こと、すなわち節税対策を仕事だと思っていないことが多いです

税金計算と節税対策は相関性の高い業務なので、節税対策にある程度知識がある税理士も多いのですが、税理士は決して節税対策のプロではありません!

そもそも、税金計算を正確に行うことと、節税対策を行うことは相反することもあります

節税対策は判断により、税金計算が正しいか見解が分かれるところ(グレーゾーン)もあるため、税理士としてはあまり意見を言いたくない分野でもあります

例えば、法人の生命保険ですが、昔は、掛け金の100%を損金(経費)計上できる生命保険がありました

本来、生命保険の掛け金が資産になるか損金(経費)になるかは解約返戻金率によるのですが、その当時の法人税法に抵触しない形で契約条件を調整する事で、解約返戻金率が90%程度あるのに、100%損金算入できる保険商品がありました

この生命保険は、税法の間隙を縫った生命保険であり、現在は問題になり、100%損金算入できる生命保険はなくなっていますが、当時から、見解が分かれる保険商品でした。

結果的に、ある一定時点の契約開始日から100%損金算入できる生命保険は税務署によって廃止されましたが、税務署の判断で全ての契約を「遡及的に」100%損金算入できないようにするという結論もあり得たはずです。

もし、あなたが税理士で、遡及的に不利な条件に処理が変更されるかもしれない節税商品があったら、後々の責任問題になることを懸念して、税理士として積極的に意見したくないですよね。

上記の事例は、保険会社から生命保険の代理店手数料がかなり貰えるため、経営者にリスクの説明をした上で、販売していた税理士事務所もあったのですが、税理士本来の仕事ではなく、あくまで副業として行っていた事業でしょう。

経営者自らが節税対策の知識を身につけよう!

今回言いたかったことは、税理士は必ずしも節税対策の提案に前向きとは限らないので、節税対策を税理士に丸投げしようと考えるのではなく、経営者自らが節税対策のための知識を身につけようということです。

経営者自らが動かなけば、利益が出ても、税金ばかり支払って、資産が残らないという事態も想定されます

会社経営者は、自ら税金を減らす対策をしっかり練って、正しい方法で実施することが求められます。

そのうえで、節税対策にも多少詳しい税理士に相談すれば、よいアドバイスを貰える可能性があるぐらいに思っておいた方がよいでしょう。