未分割の貸付事業用の宅地がある場合の相続時の処理方法について!

相続時に遺産分割協議が整わなければ、相続人間で未分割の貸付事業用の宅地を共有しなければならない場合があります。

その場合には、①小規模宅地等の特例(敷地の50%減額)の適用可否、②家賃の分配の問題、③未分割財産(不動産)の売却の問題が生じることになります。

そこで、今回は相続時に未分割の貸付事業用の宅地がある場合の処理方法について確認していきましょう。

小規模宅地等の特例の適用可否

相続税の申告期限までに遺産分割が行われていなくても、小規模宅地等の特例を受けることはできます

ただし、未分割の相続財産について、当初の申告時には、小規模宅地等の特例の適用を受けることはできません

相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して提出し、相続税の申告期限から3年以内に遺産分割がなされた場合に、小規模宅地等の特例の適用を受けることができます(遺産分割が行われた日の翌日から4か月以内に更正の請求を行うことが条件)

なお、相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日において相続等に関する訴えが提起されているなど一定のやむを得ない事情がある場合、申告期限後3年を経過する日の翌日から2か月を経過する日までに、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出しなければなりません

その申請書について、税務署長の承認を受けた時に、判決の確定の日など一定の日の翌日から4か月以内に遺産分割がなされれば、小規模宅地等の特例の適用を受けることができます(遺産分割が行われた日の翌日から4か月以内までに更正の請求を行うことが条件)。

未分割の貸付事業用の宅地の賃料について

遺産が未分割の場合、相続財産は各共同相続人の共有に属するものとされます。

よって、貸付事業用宅地等に該当する相続財産から生ずる家賃についても、未分割の間は、各共同相続人にその相続分に応じて帰属することとなります。

仮に、遺産分割協議が整わないため、共同相続人のうちの特定の人が家賃を収受しているような場合であっても、遺産分割が確定するまでは、共同相続人全員がその法定相続分に応じて所得税の申告をすることになります。

なお、遺産分割が確定しても、その効果は未分割期間中の所得の帰属に影響を及ぼすものではありません(過去には遡及しない!)。

よって、法定相続分の割合で計算した過去の賃料が分割で確定した割合で計算した賃料と違うとして更生の請求(納税額が少ない場合)や修正申告(納税額が多い場合)をすることはできません

未分割の貸付事業用の宅地を売却した場合

遺産が未分割の状態でも貸付事業用の宅地は売却することが出来ます

この場合も、相続財産は各共同相続人の共有に属するものとされますので、各共同相続人は法定相続分で所得税の譲渡所得を申告することになります。

ただし、あらかじめ相続人同士で、売却代金を取得する割合を決めている場合には、その割合で所得税の譲渡所得を申告することになります。

注意が必要になるのは、売却時点では、各共同相続人間で売却割合を定めておらず、後で、相続人の協議で分割割合を決定するようなケースです。

この場合、所得税の譲渡所得は、原則通り、法定相続分で計算されることになりますが、所得税の確定申告期限までに①売却代金が分割され、②相続人の全員が売却代金の分割割合に基づき譲渡所得を申告した場合は、その申告が認められることになります。