事業用建物を建て替えた場合の小規模宅地等の特例の取り扱い

特定事業用宅地等として小規模宅地等の特例を適用出来れば、宅地等の評価額が大幅に減額され、結果的に相続税が数千万円単位で変わってきます

小規模宅地等の特例は、原則として被相続人(亡くなった人)が事業を営んでいた建物の敷地(借地権も含む)についても適用ができます

なお、事業用建物が壊された後の更地や未完成の事業用建物の宅地については小規模宅地等の特例は適用できません

今回は事業用建物を建て替えた場合に、その建て替えのタイミングと小規模宅地等の特例の適用関係について考えていきます。

建て替え中に相続があった場合

租税特別措置法解釈通達69の4-5では事業用建物の建て替えがあっても、原則としてその事業は継続しており、建物の敷地は特定事業用宅地等に該当する(=小規模宅地等の特例の対象になる)としています。

例えば、飲食店を営んでいた被相続人(亡くなった人)が、店舗を建て替えている途中で相続が発生してしまった場合です。

この場合、事業の準備状況(〇月〇日新装開店などの広告を行っていた場合など)を勘案し、店舗の完成後に速やかに事業の用に供することが確実であったと認められる場合、建て替え中の事業用建物の敷地について小規模宅地等の特例の適用が認められることになります。

ただし、その敷地で事業が継続して営まれていると言うためには、従来から営んでいた事業用建物の建て替えの場合に限られます

例えば、被相続人(亡くなった人)が脱サラしてペンションを建設している途中に相続があった場合には、従来から営んでいた事業用建物の建て替えとは言えず、小規模宅地等の特例を適用することは出来ません。

つまり、仮に相続後、奥さんがペンションで宿泊業を始めたとしても、それは新規事業として扱われ、小規模宅地等の特例を適用することはできなくなります。

また、建て替えた事業用建物でも、建て替え後に建物の一部を別の用途で使用した場合には、事業用建物の敷地のうち、従来の事業の用に使用された部分に対応する敷地部分のみが小規模宅地等の特例の適用対象になります

相続税の申告期限までに建物を建て替えた場合

相続で事業用建物を取得した親族が、被相続人(亡くなった人)の事業を承継したものの、新たに事業用建物の建て替え工事を行い、相続税の申告期限までに事業用建物が完成していないケースも実務上ではあります。

このケースでは、相続税の申告期限までに建物が事業の用に供していないことになりますが、建物の建て替え後に相続した親族が事業を再開すれば、事業継続要件を満たすことになり、特定事業用宅地等として小規模宅地等の特例を適用できることになります。

ただし、建て替え後の事業用建物の一部を被相続人の事業と違う事業に利用してしまうとその部分に対応する敷地については小規模宅地等の特例の適用対象にならなくなります

例えば、飲食業を承継した息子が、ビル経営を始めるため、事業用建物を建て替えて(相続税の申告期限後に完成)1階で飲食業を2階~5階で不動産貸付業を始めたとします。

この場合、飲食業を営んでいる1階の事業用建物の面積に対応する敷地のみが小規模宅地等の特例(80%減額)を適用対象になります。