【この記事の概要】
- 相続人には、遺留分という法律で保障された一定割合の相続分がある(兄弟姉妹を除き、遺言書で別の割合が記載されていても相続人が望めば貰える)
- 遺留分の金額の計算には、相続人が受取った10年以内の贈与も含まれるため要注意!
- 遺留分を主張ためには遺留分侵害額請求権を行使しなくてはならない
遺留分とは
遺留分とは、法律で相続人に保障されている一定割合の相続分のことです。
なお、兄弟姉妹が相続人になる場合は遺留分は認められません。
総体的遺留分について
総体的遺留分とは、遺留分権利者(遺留分を請求できる人)全員が有する遺留分の割合いいます。
総体的遺留分は誰が遺留分権利者(遺留分を請求できる人)になるかで割合が以下のように異なってきます。
- 配偶者のみ⇒全体の2分の1
- 子供と配偶者⇒全体の2分の1
- 子供のみ⇒全体の2分の1
- 直系尊属(父親又は母親)と配偶者⇒全体の2分の1
- 直系尊属(父親又は母親)のみ⇒全体の3分の1
- 兄弟姉妹と配偶者⇒全体の2分の1(ただし、兄弟姉妹は遺留分権利者になれないので配分は0)
個別的遺留分について
個別的遺留分とは、総体的遺留分(遺留分の全体)を各遺留分権利者に配分した割合のことをいいます。
なお、各遺留分権利者に配分する割合には法定相続分(民法により定められた一定の割合)を利用します。
各相続人の個別的遺留分は以下のようになります。
配偶者のみ
配偶者のみの場合、総体的遺留分(2分の1)×法定相続分(1分の1)=2分の1が個別的遺留分になります。
子供と配偶者
配偶者の個別的遺留分は、総体的遺留分(2分の1)×法定相続分(2分の1)=4分の1になります。
子供の個別的遺留分は、総体的遺留分(2分の1)×法定相続分(2分の1)=4分の1になります。
なお、例えば、子供が2名いる場合は4分の1をさらに2名で均等に分け合うので、それぞれの個別的遺留分は4分の1÷2名=8分の1になります。
子供のみ
子供のみの場合、総体的遺留分(2分の1)×法定相続分(1分の1)=2分の1が個別的遺留分になります。
なお、例えば、子供が2名いる場合は2分の1をさらに2名で均等に分け合うので、それぞのの個別的遺留分は2分の1÷2名=4分の1になります。
直系尊属(父親又は母親)と配偶者
配偶者の個別的遺留分は、総体的遺留分(2分の1)×法定相続分(3分の2)=3分の1になります。
直系尊属(父親又は母親)の個別的遺留分は、総体的遺留分(2分の1)×法定相続分(3分の1)=6分の1になります。
なお、両親が共に存命の場合は6分の1をさらに2名で均等に分け合うので、6分の1÷2名=12分の1が父親・母親それぞれの個別的遺留分になります。
直系尊属(父親又は母親)のみ
直系尊属(父親又は母親)のみの場合、総体的遺留分(3分の1)×法定相続分(1分の1)=3分の1が個別的遺留分になります。
なお、両親が共に存命の場合は3分の1をさらに2名で均等に分け合うので、3分の1÷2名=6分の1が父親・母親それぞれの個別的遺留分になります。
兄弟姉妹と配偶者
配偶者の個別的遺留分は、2分の1になります。
兄弟姉妹には、個別的遺留分はありません。
つまり、兄弟姉妹には個別的遺留分は認められないため、配偶者が総体的遺留分(2分の1)の全部を個別的遺留分に出来ることになります。
遺留分の金額の計算方法
各遺留分権利者(遺留分を請求できる人)の具体的な遺留分の金額の計算式は以下のようになります。
遺留分の金額=(相続財産-相続債務+贈与財産)×個別的遺留分の割合
相続開始時の亡くなった人の相続財産から相続債務(借金など)を差し引くことはすぐに想像できると思います。
注意が必要なのは、被相続人が生前に行った贈与に関しても遺留分の金額の計算の中に含まれることです。
遺留分の金額の計算に含まれる贈与財産の価額は以下の2パターンに分類されます。
相続人以外への贈与
相続人以外への贈与は、相続開始前1年間にしたものに限り贈与財産の価額に算入されることになります。
ただし、被相続人と受贈者の双方が遺留分権利者に損害を与えることを知って贈与をした時には、1年前より前にした贈与についても贈与財産の価額に算入されることになります。
相続人に対する贈与
相続人に対する贈与については、相続開始前10年間にした贈与が贈与財産の価額に算入されます。
相続人に対する贈与は、1年間ではなく、10年間遺留分の金額の計算に含まれることになるため注意が必要です。
遺留分の放棄について
遺留分権利者は遺留分を放棄することができます。
遺留分の放棄に関しては、被相続人の生前と死後で方法が異なります。
被相続人の生前に遺留分を放棄する場合は家庭裁判所の許可が必要になります。
被相続人の死後に遺留分を放棄する場合には特に手続きは必要ありません。
そもそも遺留分が欲しい遺留分権利者は被相続人の死後1年以内に遺留分侵害額請求権を行使しなければならないからです。
まとめ
税理士業務をしていると遺留分侵害額請求権の行使に関する相談を受けることがあります。
職権で被相続人(亡くなった人)の銀行預金等の財産を確認できるのは、弁護士さんだけなので、最終的には提携の弁護士事務所に依頼することになります。
しかし、その前段階で遺留分の金額の計算に贈与分が含まれることを知らなかったり、他の遺留分権利者から相続財産自体がないと聞かされていたりで遺留分の金額自体が0円だと思い込んでいるお客さんも多いという印象です。
仮に遺留分侵害額請求権を行使するとしたら、最悪の場合、訴訟まで視野に入れなくてはならないのですが、明らかにおかしいと感じた時は、遺留分侵害額請求権の行使も考えてみる必要があると考えられます。
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