【この記事のポイント】
- 減価償却資産・少額減価償却資産・一括償却資産は取得日に固定資産計上する
- 減価償却資産は事業供用日から減価償却を始める
- 少額減価償却資産は事業供用日に全額を損金(経費)に計上する
- 一括償却資産は事業供用日から3年間で取得価額を均等に損金(経費)計上する
- 事業供用日とは一般的に法人(会社)が使用開始できる状態にした日であり、実際にお客さんがいるかどうかは関係ない
事業供用日に減価償却は開始する
減価償却資産を取得すると、固定資産台帳に登録して、減価償却(毎年一定額を経費にしていく処理)を行うことになります。
固定資産台帳には、取得日と事業供用日を入力することになります。
取得日は、減価償却資産を取得した日であり、事業供用日は、減価償却資産を実際に使用し始めた日です。
通常の場合は、取得と同時に事業供用を始めるので取得日=事業供用日になります。
しかし、なんらかの事情により取得後、一定期間事業供用できない場合もあります。
税法上、減価償却資産は、事業供用日から減価償却を開始することになるので、減価償却資産を取得しただけで期末日を迎えた場合、減価償却を行ってはいけない場合もありますので注意が必要です。
少額減価償却資産及び一括償却資産の償却日について
少額減価償却資産とは、中小企業で、取得価額が30万円未満の減価償却資産を①取得し、②事業に供した場合に、減価償却をしないで、全額を一括で損金(経費)に計上できる資産のことです。
一括償却資産とは、取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産を①取得し、②事業に供した場合に、減価償却をしないで、事業供用日以後3年間で、取得価額の3分の1の金額を毎年損金(経費)に計上することができる資産のことです。
つまり、少額減価償却資産・一括償却資産は、事業供用日が到来していない限り、損金(経費)に1円も計上できないので注意が必要です。
事業供用日はいつ?
前述の通り、事業供用日とは減価償却資産・少額減価償却資産・一括償却資産を実際に使用し始めた日のことです。
では、税務上、実際に使用し始めた日とはいつになるのでしょうか?
税務上は、前後の事実関係からみて個別に判断することになりますが、以下の減価償却資産と少額減価償却資産の代表的な事例2つを確認すれば事業供用日の判断ができるようになるでしょう。
建物を賃貸の用(事業の用)に供した時期の判定
DVDを事業の用に供した時期の判定
まとめ
減価償却資産・少額減価償却資産・一括償却資産のいずれも「取得日」に固定資産計上することになります。
ただし、減価償却等の損金(経費)計上は「取得日」ではなく、「事業供用日」から行うことに注意が必要になります。
最後に、通販サイトのAmazonで、パソコン(15万円)を取得した場合の状況別の仕訳を確認して終わりにしましょう。
期末パソコン未入手の場合
注文をAmazonにしていて、当期末までにパソコンが届かなかった場合は、「取得」自体がないので仕訳は必要ありません。
借方
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金額
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貸方
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金額
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仕訳なし
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-円
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仕訳なし
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-円
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当期中にパソコン入手、使用開始の場合
当期中に法人にパソコンが届き、使用を開始している場合は、期中に一旦、器具備品(固定資産)に計上の上、期末日に少額減価償却資産として全額損金振替を行う必要があります。
借方
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金額
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貸方
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金額
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器具備品
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15万円
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現金預金
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15万円
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借方
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金額
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貸方
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金額
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減価償却費
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15万円
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器具備品
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15万円
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期末パソコン入手、未使用の場合
当期中に法人にパソコンは届いているのですが、梱包されたままで未開封の場合、パソコン自体は取得しているため器具備品(固定資産)に計上します。
ただし、事業の用にまだ供していないため、当期には器具備品を損金には振り替えられません。
借方
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金額
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貸方
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金額
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---|---|---|---|
器具備品
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15万円
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現金預金
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15万円
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最後に少し補足すると、期末日間際で少しでも損金(経費)を増やしたい場合は、早めにパソコンを購入し、事業供用しましょう。
逆に、期末日に少しでも利益を残したい場合は、翌期にパソコンが届くように手配する方が良いでしょう。
当期末に少額減価償却資産を取得していて、事業供用をしていない場合になってしまうと、認識自体が非常に難しく、仕訳も面倒になります。
メリットも一つもないため、できれば、①当期中に余裕をもって事業供用まで開始するか、②注文を翌期以降にしてしまう方が良いでしょう。
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