信用保証料は一括で損金・必要経費ではない!長期前払費用計上について!
この記事の概要
  1. 信用保証料は一括で損金(会社の場合)又は必要経費(個人事業主)に計上できません。
  2. 信用保証料はいったん長期前払費用に計上し、保証期間に応じて徐々に損金又は必要経費に計上していきます
  3. 信用保証料は支払保証料という勘定科目を会計ソフトにマスター登録して計上することをお勧めします
  4. 会社で信用保証料が繰延資産に該当する場合、20万円未満の信用保証料については一括損金算入できる場合もあります

信用保証料とは

不動産賃貸業を行っている個人事業主や会社が銀行などの民間金融機関から不動産購入に対する融資を受けようとする場合、銀行側ではリスクが大きいと感じるため、融資を得ることができなかったり、調達金額や利率や返済期間などの条件において不利になる場合が多いです

その不具合を解消し、不動産賃貸業を営む個人事業主や会社がスムーズに資金調達できるように、信用保証協会が不動産賃貸業を営む個人事業主や会社の委託に基づき、銀行などの民間金融機関に対して債務保証を行います

信用保証協会は不動産賃貸業を営む個人事業主や会社などの債務保証をするわけですから、当然それ相応のリスクを負います。

そのリスクに応じて、債務保証を受けた不動産賃貸業を営む個人事業主や会社は信用保証料というものを支払うことになります

信用保証料計上の仕訳について

信用保証料は融資実行時(=金銭の借入時)に全額を一括で支払うことが多いです。

保証期間が5年ならば、5年分を一括して、保証期間が10年ならば、10年分を一括して支払うということです。

全額経費は間違った仕訳になる

信用保証料の全額を一括で支払う場合に以下の仕訳をしていることがありますが間違いなので注意してください。

信用保証料の間違った仕訳
信用保証協会の保証付融資を銀行から受けました。
信用保証協会の保証金額は1,000万円で保証期間は60か月、信用保証料率は1.15%で保証付融資実行時に信用保証料を支払いました。
なお、当社は3月末決算であり、銀行融資時期は10月末でした。

借方
金額
貸方
金額
支払保証料
(非課税)
575,000円 ※1
現金預金
575,000円 ※1

※1 信用保証料=保証金額×信用保証料率×保証期間(月数)÷12か月で計算されます。
よって、今回は、10,000,000円×1.15%×60か月÷12か月=575,000になります。

長期前払費用を計上する正しい会計処理

信用保証料は、信用保証契約に従い、継続して役務の提供を受けるために支出した費用なので、信用保証料を支払った期間に一括で損金(会社)又は必要経費(個人事業主)に計上するのではなく、支払った信用保証料のうち当期に経過した部分のみを損金又は必要経費に計上することになります。

つまり、信用保証期間のうちまだ経過していない部分に対する信用保証料は長期前払費用に計上することになります。

仕訳で表すと以下のようになります。

信用保証料の正しい仕訳
信用保証協会の保証付融資を銀行から受けました。信用保証協会の保証金額は1,000万円で保証期間は60か月、信用保証料率は1.15%で保証付融資実行時に信用保証料を支払いました。
なお、当社は3月末決算であり、銀行融資時期は10月末でした。

(融資実行時)

借方
金額
貸方
金額
長期前払費用 ※1
575,000円 ※2
現金預金
575,000円 ※2

※1 いったん全額を長期前払費用に計上しておき、期末の決算整理仕訳で当期保証期間対応分を支払保険料に振り替えます

※2 信用保証料=保証金額×信用保証料率×保証期間(月数)÷12か月で計算されます。
よって、今回は、10,000,000円×1.15%×60か月÷12か月=575,000になります。

(期末決算整理仕訳)

借方
金額
貸方
金額
支払保証料
(非課税) ※1
38,334円 ※3
長期前払費用 ※2
38,344円 ※3

※1 融資実行時に長期前払費用に計上しておいた信用保証料のうち、期末の決算整理仕訳で当期保証期間対応分を支払保険料に振り替えます

※2 厳密に考えると1年以内期間到来分は長期前払費用(固定資産)から前払費用(流動資産)に振り替えることも考えらます

※3 信用保証料575,000円÷保証期間60か月×当期到来保証期間(11月~3月末)4か月=38,334円

保証金額・保証期間が長いほど信用保証料の税務リスクは高くなる

上記の信用保証料の間違った仕訳例では、融資実行時に全額支払保証料という勘定科目で計上しているため、保証期間未経過部分を長期前払費用できちんと繰り越した場合に比べて、575,000円-38,344円=536,656円も多く損金(会社)又は必要経費(個人事業主)に計上していることになります。

さらに、実務で不動産融資時に信用保証協会の保証が絡むと、今回の仕訳例よりも保証期間は長くなり、保証金額も大きくなることが想定されます。

つまり、信用保証料を融資実行時に全額損金又は必要経費に計上してしまうと過剰経費になり、税務調査時に過少申告加算税が課される可能性が大きくなります

知っていれば全く問題のない仕訳ですが、知らないと痛い目に会うので、必ず「信用保証料は保証期間で按分計算しなければならない!」ということを覚えておいてください。

勘定科目の設定について

保証期間が経過した信用保証料は損金又は必要経費に計上されるのですが、上記の例題では支払保証料という勘定科目を紹介しました。

ただし、一般的な会計ソフト(弥生会計やFreeeなど)には支払保証料という勘定科目は初期設定では存在しないこともありますので、マスター科目の設定で営業外費用の欄に「支払保証料」(消費税は非課税取引)を登録しなければなりません

信用保証料の金額が少額で、会計ソフトのマスター科目を増やしたくなければ、代替え的に支払手数料や支払利息勘定を利用することもできますが、あまりお勧めしません

支払手数料は損益計算書上、販管費の勘定科目で支払保証料の営業外費用と区分が異なる上、消費税の初期設定は「課税取引」に設定されていますので、仕訳計上時に「非課税取引」に直す手間が発生します

支払利息は損益計算書上、営業外費用なので、支払保証料と区分が同じになり、さらにもともと非課税取引なので、この点でも支払保証料と一致しています。

しかし、信用保証料は支払利息と性質が異なるものです。

利息の支払額は税務申告書上いろいろな調整箇所があります。

仕訳上、信用保証料を支払利息に混ぜてしまうと税務申告書を作成する時点で支払利息から信用保証料部分を控除しなくてはならなくなり非常に煩雑です。

もし、支払保証料という勘定科目が会計ソフトの初期マスターに登録されていなければ、先に勘定科目を作成してしまった方が、正しい仕訳が計上でき、仕訳や税務申告を間違えるリスク(=税金が増えるリスク)も減るため良いでしょう

長期前払費用に計上された信用保証料の顛末

借入金残高があるうちは保証期間に応じて年額を均等に支払保証料に振替えていけば良いでしょう。

借入金を期限前に返済してしまった場合、信用保証も必要なくなるので、未経過期間に対する信用保証料の返戻(=返金)が信用保証協会からあるはずです。

返戻(=返金)された金額を借方に計上するとともに長期前払費用を取り崩す仕訳をすることになります。

ただし、保証協会から返戻される金額は払った金額の全額ではないです。

例えば、東京都の場合は一部分(≒今年の未経過保証料部分)は90%の金額で計算されて戻ってくることになります。

仕訳例を記載すると以下のようになります。

(信用保証料の返戻時の仕訳)
借入金の期限前一括返済を行いました。
それに伴い保証協会より返金が15万円ありました。
なお、長期前払費用は16万円計上しています。

借方
金額
貸方
金額
支払保証料
現金預金
1万円(差額)
15万円
長期前払費用
16万円

あとがき

今回は信用保証料の長期前払費用に関して記事にしてみました。

ただし、前提として、保証の対象となる借入金が返済された場合、信用保証料のうち未経過分の保証料が「返金されるもの」を前提としてします。

例えば、会社の場合、信用保証料のうち未経過分の保証料が「返金されないもの」については繰延資産になります。

この場合は、信用保証料が20万円未満の場合は、全額損金計上できることになりますが、「返金されないもの」は、事例としては少ないと考えられます。

契約書等をきっちり精査して判断して頂くことになりますが、基本的には、長期前払費用と判断して良いでしょう。