ユニットバス交換工事の代金は、固定資産計上になるのか経費になるのか、判断に迷われる方は少なくありません。工事代金が100万円を超えることもあり、処理を誤るとその年の税額が大きく変動します。
工事の内容によっては全額を修繕費にできますが、確認しないまま申告すると、税務調査で否認され、過少申告加算税や延滞税の負担が生じることがあります。逆に、経費に算入できる部分まで固定資産に計上すると、その年に計上できるはずの金額が漏れるおそれもあります。
本記事では、ユニットバス交換工事の代金のうち、どこまでが固定資産で、どこからが経費になるのかを整理します。勘定科目と耐用年数、仕訳例、古い浴室の除却損まで、国税庁の通達と実際の裁決に基づいて確認します。
ユニットバス交換工事で使う勘定科目|修繕費・建物・建物附属設備・固定資産除却損
ユニットバス交換工事で使う勘定科目は、修繕費・建物・建物附属設備・固定資産除却損の4つです。
- 修繕費
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修繕費とは、工事代金を支出した年に全額を経費に算入できる科目です。故障したシャワー水栓を同等品に取り替えるなど原状に回復する工事のほか、ユニットバス交換工事のために既存の浴室を解体して搬出する撤去費用も、これに含まれます。
- 建物
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建物とは、屋根と壁を備え、居住や賃貸の用に供する建物本体を計上する科目です。ユニットバス本体・壁・床・天井のように、建物と一体不可分になった工事代金も建物勘定で処理します。
浴室全体を造り替えた工事の代金が該当し、既存の建物と同じ耐用年数で償却します。
- 建物附属設備
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建物附属設備とは、給排水管の引き直しのように、建物本体とは別に設備として独立して把握できる資産を計上する科目です。ユニットバスの交換工事では給排水・衛生設備が該当することが多く、その耐用年数は15年です。
- 固定資産除却損
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固定資産除却損とは、取り壊した資産のうち、まだ経費になっていない金額を一度に経費とする科目です。建物は取得価額を耐用年数で分け、毎年の減価償却によって少しずつ経費に振り替えます。
浴室を途中で取り壊すと、経費に振り替えていない金額(=未償却残高)が残ります。ユニットバスに交換した年に、既存の浴室部分の未償却残高は一括して経費に算入できます。
いずれの勘定科目を用いるかは、工事の範囲と内容によって決まります。
ユニットバス交換工事の勘定科目は3つのステップで決まる
ユニットバス交換工事の勘定科目は、どこまでを1つの工事とみるか、修繕費か資本的支出か、固定資産に計上する科目と耐用年数の順に決まります。
浴室全体を取り壊して造り替えた工事は、工事全体で1つの工事として取り扱います。浴槽や水栓など一部のみを取り替えた工事は、取り替えた設備ごとに1つの工事として取り扱います。
原状に回復するにとどまる工事は修繕費、建物の価値を高める工事や使用できる期間を延長する工事は資本的支出です。1つの工事が20万円未満であれば、内容を問わず修繕費に算入できます。
資本的支出と判定した工事の代金は、原則として建物の勘定科目で固定資産に計上します。耐用年数は新たに見積もらず、既存の建物に適用している年数をそのまま用います。
【STEP1】どこまでを1つの工事とみるか|ユニットバス交換工事の判定単位
浴室全体を取り壊してユニットバスを新設した工事は、工事項目ごとに区分せず、工事全体を1つの単位として判定します。
裁決では、浴室設備と壁・床の表面までを全面的に取り替えた工事について、建物の一部分の取壊し・廃棄と新設が同時に行われたと判断されました(国税不服審判所 平成26年4月21日裁決)。
浴槽のみ、水栓のみといった一部の設備を取り替えた工事は、取り替えた設備ごとに1つの工事として取り扱います。浴室全体に及ぶ工事ではないため、設備ごとに修繕費に該当するかを判定します。
浴室全体を造り替えた工事は、見積書に工事項目別の金額が記載されていても区分できません。解体費・ユニットバス本体・内装を合算した金額により、1つの工事として判定します。
1つの工事の範囲が決まったら、次はその工事が修繕費か資本的支出かを判定します。
【STEP2】修繕費か資本的支出か|国税庁通達の4つの判定基準
修繕費か資本的支出かは、少額・短周期基準、実質基準、形式基準、割合区分の特例の4つを順に適用して判定します(国税庁タックスアンサー No.1379「修繕費とならないものの判定」)。
個人は所得税基本通達、法人は法人税基本通達に、それぞれ同じ内容が定められています。
| 判定基準 | 該当する工事 | 判定の結果 | 根拠通達 |
|---|---|---|---|
| ①少額・短周期基準 | 1つの工事の金額が20万円未満、またはおおむね3年以内の周期で行うもの | 工事の代金の全額を修繕費にできる | 所基通37-12 法基通7-8-3 |
| ②実質基準 | 建物の価値を高める部分、または使用できる期間を延ばす部分がある工事 | 価値を高めた部分と期間を延ばした部分は資本的支出、原状回復にとどまる部分は修繕費 | 所基通37-10・37-11 法基通7-8-1・7-8-2 |
| ③形式基準 | 資本的支出か修繕費か判断のつかない金額が60万円未満、または修理・改良の対象となる固定資産の取得価額のおおむね10%以下 | 判断のつかない金額を修繕費にできる | 所基通37-13 法基通7-8-4 |
| ④割合区分の特例 | ③でも判定できない金額があり、割合による区分を継続して採用している場合 | 判定できない金額の30%と、修理・改良の対象となる固定資産の取得価額の10%のいずれか少ない金額を修繕費とし、残額を資本的支出とする | 所基通37-14 法基通7-8-5 |
①の少額・短周期基準は最初に確認します。1つの工事の金額が20万円未満であれば、工事の内容を問わず全額を修繕費にできます。
②の実質基準は、同等品への取替えかどうかで判断します。老朽化した設備を同じ品質のものに復旧する工事は修繕費、品質や性能を高める工事は資本的支出です。
③の形式基準は、資本的支出か修繕費か判断のつかない金額にのみ適用されます。浴室全体を造り替える工事のように資本的支出であることが明らかな工事には、60万円未満という基準を用いることはできません。
実際の裁決でも、全額が資本的支出に当たる工事には形式基準の適用がないと判断されています(国税不服審判所 平成26年4月21日裁決)。
資本的支出と判定した工事について、次は計上する勘定科目と耐用年数を決めます。
【STEP3】固定資産に計上する勘定科目と耐用年数|ユニットバス交換工事は原則として建物
ユニットバス交換工事を固定資産に計上する場合の勘定科目は原則として建物であり、耐用年数は既存の建物と同じです。
ユニットバスは、防水パネル・浴槽・天井・床が結合して浴室そのものを形づくり、床や壁にコーキングなどで固定されています。取り外すと浴室として使用できなくなるため、建物と物理的・機能的に一体不可分な内部造作に当たります。
裁決も、この一体不可分を理由にユニットバスは「器具・備品」には該当しないと判断しています(国税不服審判所 平成26年4月21日裁決)。取り外せない状態で建物に組み込まれたものは、建物の勘定科目で計上します。
浴室の新設にあわせて配管そのものを引き直した部分は、設備として独立して把握できるため建物附属設備に区分計上できます。給水管や排水管などの配管は、耐用年数表の「給排水・衛生設備」に当たり、耐用年数は15年です(国税庁「耐用年数(建物/建物附属設備)」)。
ただし、既存の給排水管に接続するのみの工事は、ユニットバスの設置工事に含めます。裁決も、設置工事に含まれる給湯・給排水工事の費用は資本的支出に含めるべきと判断しています(国税不服審判所 平成26年4月21日裁決)。
資本的支出は、既存の建物と種類および耐用年数を同じくする減価償却資産を新たに取得したものとして扱われます(国税庁タックスアンサー No.2107「資本的支出を行った場合の減価償却」)。新たに耐用年数を見積もるのではなく、既存の建物に適用している耐用年数をそのまま用います。
既存の建物の耐用年数は、法人であれば固定資産台帳で確認します。個人事業主は、青色申告決算書(白色申告は収支内訳書)の「減価償却費の計算」欄に記載があります。
工事の内容ごとの結論は、次の早見表のとおりです。
【工事内容別】ユニットバス交換工事の勘定科目と耐用年数の早見表
ユニットバス交換工事の勘定科目は、全体を造り替える場合は建物、一部の設備を同等品に取り替えるにとどまる場合は修繕費になります。
| 工事の範囲・内容 | 税務上の区分 | 勘定科目 | 耐用年数 |
|---|---|---|---|
| 浴室全体を造り替え(在来浴室からの新設・全面交換) | 資本的支出(区分せず全体) | 建物 | 既存建物と同じ |
| 一部の設備を同等品に交換(浴槽・壁パネルの上張り・床シートの張替え・浴室ドア・シャワー水栓) | 修繕費 | 修繕費 | - |
| 一部の設備を品質・性能の高いものに交換 | 資本的支出 | 建物 | 既存建物と同じ |
| 浴室の給排水管そのものを引き直し | 資本的支出 | 建物附属設備 | 15年 |
| 既存浴室の解体・撤去費用 | 修繕費 | 修繕費 | - |
| 取り壊した浴室部分の未償却残高 | 除却損失 | 固定資産除却損 | - |
浴槽のみの交換が可能なのは、浴槽が床とは別に取り付けられている場合に限られます。床と一体成型された浴槽は取り外すことができないため、ユニットバス全体の交換となります。
表で資本的支出となっている工事でも、1つの工事の金額が20万円未満であれば全額を修繕費に算入できます。
既存浴室の撤去費用と未償却残高|固定資産除却損の計算方法
既存浴室の解体撤去費は修繕費、取り壊した浴室部分の未償却残高は固定資産除却損として、いずれもその年の経費になります。
撤去費用は既存の浴室を撤去するための費用であり、ユニットバスを設置するための費用ではありません。見積書や請求書の工事明細で金額を把握し、修繕費として計上します。
未償却残高とは、過去に建物として固定資産に計上した金額のうち、減価償却により経費に算入していない残額をいいます。取り壊した浴室部分については、除却損失の金額を必要経費に算入すべきものとされています(国税不服審判所 平成26年4月21日裁決)。
建物を新築した当時は建物勘定に一括して計上していることが多く、浴室部分の金額を個別に把握していない場合があります。まず建築当初の見積書や請求書の工事明細を確認し、浴室部分の工事費用を把握してください。
工事明細が残っていない場合は、建物の取得価額を総床面積で除して算出した1平方メートル当たりの建築単価に、浴室部分の床面積を乗じて算定します。裁決でも、資料が残っていない事案で採り得る合理的な算定方法として認められています。
ここまでの区分を、実際の仕訳と減価償却の計算で確認します。
ユニットバス交換工事の仕訳例と減価償却の計算
ユニットバス交換工事の仕訳は、資本的支出となる部分を建物、既存浴室の撤去費用を修繕費に区分して計上します。
ケース1:浴槽のみを同等品に交換した場合
賃貸アパート1室の老朽化した浴槽を、同等品に15万円で交換した場合の仕訳です。同等品への取替えであり、金額も20万円未満のため全額が修繕費になります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 修繕費 | 15万円 | 普通預金 | 15万円 |
ケース2:在来浴室を解体してユニットバスを新設した場合
築15年の賃貸マンション1室で、在来浴室を解体してユニットバスを新設した場合の仕訳です。工事代金80万円のうち、既存浴室の解体撤去費が10万円、浴室の給排水管を引き直した費用が10万円と見積書で区分されています。
給排水管の引き直しは配管そのものの更新であるため、建物附属設備に区分計上します。既存の配管に接続するのみの工事であれば、区分せず建物に含めます。
まず、工事代金80万円を支払ったときの仕訳です。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 建物 | 60万円 | 普通預金 | 80万円 |
| 建物附属設備 | 10万円 | ||
| 修繕費(撤去費用) | 10万円 |
次に、取り壊した浴室部分を除却したときの仕訳です。未償却残高は20万円と計算されました。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 固定資産除却損 | 20万円 | 建物 | 20万円 |
建物に計上した60万円は、既存建物と同じ耐用年数で償却します。鉄筋コンクリート造の住宅用建物であれば耐用年数47年、定額法の償却率は0.022です。
減価償却費は建物60万円について年1万3,200円、建物附属設備10万円について年6,700円となります。初年度は、工事が完了し使用を開始した月から期末までの月数により按分します。
まとめ|ユニットバス交換工事の勘定科目と耐用年数の要点
ユニットバス交換工事の勘定科目は、工事の範囲と内容に応じて修繕費・建物・建物附属設備・固定資産除却損に区分して計上します。
押さえておきたいポイント
- 浴室全体を取り壊して造り替えた工事は、工事項目ごとに区分せず、工事全体を1つの単位として判定します。
- 浴槽や水栓など一部の設備のみを取り替えた工事は、取り替えた設備ごとに判定します。
- 1つの工事の金額が20万円未満であれば、内容を問わず修繕費に算入できます。
- 20万円以上の工事は、同等品への交換であれば修繕費、品質や性能を高める工事であれば資本的支出です。
- 固定資産に計上する勘定科目は原則として建物で、耐用年数は既存の建物と同じです。給排水管など区分できる設備のみが建物附属設備(15年)となります。
- 既存の浴室の解体撤去費は修繕費、取り壊した部分の未償却残高は固定資産除却損となります。
浴室に限らず、トイレやシステムキッチンを交換する場合も当初の工事金額を把握しておく必要があります。工事明細が添付された最終の見積書は、必ず保管しておいてください。
ユニットバス交換工事の勘定科目に関するよくある質問(FAQ)
ユニットバス交換工事の勘定科目について、実務で寄せられることの多い質問を整理いたします。
- 修繕費の判定に使う20万円や60万円という基準は、税込みと税抜きのどちらの金額で判定しますか。
-
20万円や60万円といった基準は、採用している消費税の経理方式に応じて判定します。税抜経理方式であれば税抜きの金額、税込経理方式であれば税込みの金額で判定します。
免税事業者は税込経理方式によることとされているため、税込みの金額で判定します。
- ユニットバスへの交換工事の費用は、いくらまでなら修繕費として経費にできますか。
-
1つの工事の金額が20万円未満であれば、工事の内容を問わず全額を修繕費にできます。20万円以上であっても、老朽化した設備を同等品に復旧するにとどまる工事であれば修繕費です。
- ユニットバスの勘定科目は、建物と建物附属設備のどちらになりますか。
-
浴室全体を造り替えた工事のユニットバス本体は、建物と一体不可分のものとして扱われるため建物になります。給排水管の引き直しのように設備として独立して把握できる部分だけを、建物附属設備(耐用年数15年)として区分できます。
- ユニットバスの耐用年数は何年ですか。国税庁の耐用年数表に定めはありますか。
-
耐用年数表にユニットバス単独の定めはなく、固定資産に計上した金額は既存の建物と同じ耐用年数で償却します。鉄筋コンクリート造の住宅用建物であれば47年、木造の住宅用建物であれば22年です。
- 交換したユニットバスについて、償却資産としての固定資産税の申告は必要ですか。
-
オーナーが所有する建物と一体になったユニットバスは家屋の一部として評価されるため、償却資産として申告しないのが一般的です。
参考文献
- 国税庁タックスアンサー No.1379「修繕費とならないものの判定」
- 国税庁タックスアンサー No.5402「修繕費とならないものの判定」
- 国税庁「所得税基本通達 〔資本的支出と修繕費等〕(37-10〜37-15の3)」
- 国税庁「法人税基本通達 第8節 資本的支出と修繕費(7-8-1〜7-8-5)」
- 国税庁タックスアンサー No.2107「資本的支出を行った場合の減価償却」
- 国税庁「耐用年数(建物/建物附属設備)」
- e-Gov法令検索「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」
- 国税庁「所得税基本通達 法第51条《資産損失の必要経費算入》関係」
- 国税庁「法人税基本通達 第1款 除却損失等の損金算入(7-7-1)」
- 国税庁「消費税法等の施行に伴う所得税の取扱いについて」
- 国税庁「消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて」
- 国税不服審判所 平成26年4月21日裁決


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