- 法人税法上の役員報酬の適正額を知りたい人
高額に設定された役員報酬は否認させる可能性がある
役員報酬が高額すぎると法人税法で一部否認されるケースがあります。
よって、もし高額の役員報酬を設定する場合、会社側の対応としては、合理的な算定の基準に則って役員報酬を決めていると調査官に印象づけることが肝要になります。
もし、会社が設定した役員報酬が過大だと疑われて、国税側から妥当な役員報酬に関するデータを提出されると、否認される確率は非常に高くなりますので注意しましょう。
役員報酬の適正額について
役員は会社の所有者である株主から業務遂行について委任を受けた人間であり、会社と雇用関係はありません。
会社と雇用関係がないので、役員報酬0円が正しい考え方ですが、役員は会社から業務を請け負っているので、正当な対価ならば受け取ることも可能です。
ただし、法人税法上は過大な役員報酬を会社が役員に支払うと否認されてしまいます。
では役員報酬の適正額の決め方はどうすればよいのでしょうか?
順番に見ていきましょう。
役員報酬の形式基準
形式的には以下のいずれかに役員報酬の基準が記載されていなくてはなりません。
- 定款規定
- 株主総会議事録
役員報酬の実質基準
形式基準を満たしてうえで、実際の役員報酬を決めることになります。
適正な役員報酬を決定するポイントは以下の4つになります。
- 肩書・担当分野・経験年数・スキルを考慮して職務内容から役員報酬を決定
- 会社の収益の状況
- 使用人の給与の状況
- 類似法人との比較
上から順に重要度が高いと考えられます。
例えば、1.に基づいて「これだけの責任と会社に対する貢献度がこの役員にあるのだからこれぐらいの報酬はもらっていいでしょう」という根拠資料を作成したのに、調査官に論理的に覆されるようなら2.に基づいて「これぐらいはいいでしょう」と話しを進めていくことになります。
なお、役員報酬の要件は役員退職金の要件と違い、類似法人との比較はそれほど重要視されていないということもあわせて覚えておきましょう。
肩書・担当分野・経験年数・スキルを考慮して職務内容から役員報酬を決定
- 肩書
⇒役職(代表取締役>専務>常務>平取締役>監査役) - 担当分野
⇒事業の貢献具合を考慮にいれると営業取締役≧管理取締役 - 経験年数
⇒何年働いたかで貢献度合いは異なります - スキル
⇒漠然としていますが説明できると印象が良くなります
法人の収益の状況
常に赤字なのに役員報酬が多いと当然否認されやすいです。
逆に法人の収益が出ているのに、役員報酬が高いと調査官が指摘してきたら、調査官側の否認根拠が薄いと考えられますので、反論の余地があります。
ただし、利益が2倍になったから、役員報酬を5倍に引き上げた例などで否認事例がありますので、役員報酬を引き上げるときは慎重に行いましょう。
使用人の給与の状況
使用人の中で一番給料が高い人と比べて役員報酬を決定します。
「使用人の給料で一番高い人が○○円なんだから、その1.5倍程度なら適正でしょ?」という理論になります。
よって、使用人の中で一番給料が高い人でもあまり給料を支払っていないと役員報酬の支払いも多くできませんので注意が必要です。
類似法人との比較
同じ事業かつ事業規模が類似している法人の役員報酬の平均と比較して役員報酬が適切かを判断します。
税務調査官側では役員報酬の平均をとることができますが、納税者側では、客観的な情報を入手するのは厳しいのが現実です。
よって、納税者側が圧倒的に不利になりますので、この議論をする前に決着をつけた方がよいです。
役員報酬の結論
4.類似法人との比較までもつれてしまうと微々たる役員報酬しか期待できなくなるので、1.役員の職務の内容(その役員しかできないことの証明)、2.法人の収益の状況、3.使用人の給与の状況から現在の役員報酬が過大ではないというストーリーを考えておく必要があるでしょう。
なお、役員「退職金」に関しては、月次の役員報酬の金額を基礎を算定するのが一般的になっています。
よって、役員報酬が低い金額だと法人税法上で認められる役員退職金の金額も少なくなってしまいます。
役員報酬は一気に上げづらいので、もし、将来的に役員退職金を多く出したいなら、様子を見ながら徐々に役員報酬を上げていくのが良いでしょう。