消費税が絡むから難しい土地・建物売却時の仕訳方法について!
この記事の概要
  1. 免税事業者の土地・建物の売却仕訳は売却価額と固定資産の帳簿価額の差額を損益に計上するだけ
  2. 消費税課税事業者の場合は、売却価額に対して消費税が課税されるため、仮受消費税が仕訳に登場する
  3. 消費税課税事業者の土地・建物の売却仕訳は入力方法に工夫が必要

不動産賃貸業を営んでいる限り、必ず生じる取引の1つとして所有不動産(土地・建物)の売却があります。

日常的に発生する取引ではないので、仕訳をする機会は少ないのですが、それゆえ、間違った仕訳になってしまうことが多々あります

また、消費税が絡むと会計ソフト(弥生会計やFreeeなど)の仕訳入力の仕方に工夫が必要になりますので、今回は、簡単な仕訳入力方法も紹介します。

消費税免税事業者の仕訳

消費税免税事業者の場合の土地・建物の売買仕訳は非常に簡単です。

簿記の勉強したことがある人は最初に習う仕訳なのですぐに分かるはずです。

売却益が発生する場合

【土地の売却取引-売却益の場合】
更地を1億円で売却しました。なお、更地の帳簿価額は4,000万円です。

借方
金額
貸方
金額
現金預金
1億円
土地
固定資産売却益
4,000万円
6,000万円

【建物の売却取引-売却益の場合】
所有アパートを1億1,000万円で売却しました。なお、建物の帳簿価額は8,000万円です。

借方
金額
貸方
金額
現金預金
1億1,000万円
建物
固定資産売却益
8,000万円
3,000万円

売却損が発生する場合

【土地の売却取引-売却損の場合】
更地を1億円で売却しました。なお、更地の帳簿価額は1億4,000万円です。

借方
金額
貸方
金額
現金預金
固定資産売却損
1億円
4,000万円
土地
1億4,000万円

【建物の売却取引-売却益の場合】
所有アパートを1億1,000万円で売却しました。なお、建物の帳簿価額は2億円です。

借方
金額
貸方
金額
現金預金
固定資産売却損
1億1,000万円
9,000万円
建物
2億円

消費税課税事業者の仕訳

消費税課税事業者が「建物」を売却した場合、売却代金について消費税が課税されてしまいます

根拠は以下のタックスアンサーの通りです。

消費税の課税対象となる取引は、事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等です。
また、その性質上事業に付随して対価を得て行われる資産の譲渡等も含まれます。
したがって、販売用の商品だけでなく、事業に使用していた建物の譲渡についても課税されます

賃貸用や店舗用に限らず建物を売った場合に売却代金(現金預金部分)に対して消費税が課税され、仕訳上は仮受消費税で処理されます

消費税が絡む土地・建物の売却仕訳は以下の通りになります。

売却益が発生する場合

土地の売却に対する消費税は、非課税取引になります。

よって、仮受消費税は計上されず、結果的に消費税免税事業者の時と同じ仕訳になります。

【土地の売却取引-売却益の場合】
更地を1億円で売却しました。なお、更地の帳簿価額は4,000万円です。

借方
金額
貸方
金額
現金預金
1億円
土地
固定資産売却益
4,000万円
6,000万円

建物を売却した時は売却価額に対して(=受取った現金預金に対して)仮受消費税が計上されますので、消費税免税事業者の時よりも仮受消費税の分だけ固定資産売却益が減少します

【建物の売却取引-売却益の場合】
所有アパートを1億1,000万円で売却しました。なお、建物の帳簿価額は8,000万円です。

借方
金額
貸方
金額
現金預金
1億1,000万円
建物
仮受消費税
固定資産売却益
8,000万円
1,000万円
2,000万円

売却損が発生する場合

土地の売却に対する消費税は、非課税取引になります。

よって、仮受消費税は計上されず、結果的に消費税免税事業者の時と同じ仕訳になります。

【土地の売却取引-売却損の場合】
更地を1億円で売却しました。なお、更地の帳簿価額は1億4,000万円です。

借方
金額
貸方
金額
現金預金
固定資産売却損
1億円
4,000万円
土地
1億4,000万円

建物を売却するときは売却価額に対して(=受取った現金預金に対して)仮受消費税が計上されますので、消費税免税事業者の時よりも仮受消費税の分だけ固定資産売却損が増加します

【建物の売却取引-売却損の場合】
所有アパートを1億1,000万円で売却しました。なお、建物の帳簿価額は2億円です。

借方
金額
貸方
金額
現金預金
固定資産売却損
1億1,000万円
1億円
建物
仮受消費税
2億円
1,000万円

会計ソフト(弥生会計やFreee)の仕訳

建物の理論上の仕訳は上記の「消費税課税事業者の仕訳」の通りなのですが、理論上の仕訳では会計ソフト(弥生会計やFreee)に入力することができません

会計ソフト(弥生会計やFreee)では仮受消費税が自動計算されてしまうので、借方と貸方を一致させることができなくなってしまうからです。

そこで、会計ソフト(弥生会計やFreee)に入力する時は、以下の仕訳を行います。

売却益(建物)が発生する場合

所有アパートを1億1,000万円で売却しました。なお、期首の建物の帳簿価額は9,000万円で建物売却時までに1,000万円の減価償却費が計上できます。

1.売却価額全体をいったん固定資産売却益に計上します。

なお、仮受消費税は固定資産売却益1億1,000万円と会計ソフトに入力すれば自動的に計算されます(固定資産売却益が課税売上に設定されているため)。

借方
金額
貸方
金額
現金預金
1億1,000万円
固定資産売却益
(課税取引)
1億円1,000万円

2.建物の帳簿価額を消し込むとともに反対科目にいったん固定資産売却損を計上します。

建物の帳簿価額に関しては、期首~売却日までの減価償却費を計上したあとの帳簿価額になります。

固定資産売却損は不課税取引に設定しましょう(初期設定でおそらく不課税取引になっています)。

(期中売却までの減価償却費の計上)

借方
金額
貸方
金額
減価償却費
(不課税取引)
1,000万円
建物
1,000万円

(建物帳簿価額の固定資産売却損への振り替え)

借方
金額
貸方
金額
固定資産売却損
(不課税取引)
8,000万円
建物
8,000万円

3.固定資産売却損を全額消し込むために固定資産売却益と相殺します。

なお、ここだけ固定資産売却益は「不課税取引」として処理しますので注意してください。

あくまで固定資産売却損と相殺するためだけの仕訳なので、現実上発生しない固定資産売却益(不課税取引)が登場します

借方
金額
貸方
金額
固定資産売却益
(不課税取引)
8,000万円
固定資産売却損
(不課税取引)
8,000万円

売却損(建物)が発生する場合

所有アパートを1億1,000万円で売却しました。なお、期首の建物の帳簿価額は2億1,000万円で建物売却時までに1,000万円の減価償却費が計上できます。

1.売却価額全体をいったん固定資産売却益に計上します。

なお、仮受消費税は固定資産売却益1億1,000万円と会計ソフトに入力すれば自動的に計算されます(固定資産売却益が課税売上に設定されているため)。

借方
金額
貸方
金額
現金預金
1億1,000万円
固定資産売却益
(課税取引)
1億円1,000万円

2.建物の帳簿価額を消し込むとともに反対科目にいったん固定資産売却損を計上します。

建物の帳簿価額に関しては、期首~売却日までの減価償却費を計上したあとの帳簿価額になります

固定資産売却損は不課税取引に設定しましょう(初期設定でおそらく不課税取引になっています)。

(期中売却までの減価償却費の計上)

借方
金額
貸方
金額
減価償却費
(不課税取引)
1,000万円
建物
1,000万円

(建物帳簿価額の固定資産売却損への振り替え)

借方
金額
貸方
金額
固定資産売却損
(不課税取引)
2億円
建物
2億円

3.固定資産売却益を全額消し込むために固定資産売却損と相殺します。

ここだけ固定資産売却益は「不課税取引」として処理しますので注意してください。

あくまで固定資産売却損と相殺するためだけの仕訳なので、現実上発生しない固定資産売却益(不課税取引)が登場します

なお、1.で固定資産売却益(課税取引)1億1,000万円と入力していますが、課税取引のため1,000万円は仮受消費税部分となりますので、ここで相殺できるのは、1億1,000万円÷1.1=1億円までです。

借方
金額
貸方
金額
固定資産売却益
(不課税取引)
1億円
固定資産売却損
(不課税取引)
1億円

まとめ

会計ソフトに仕訳を入力したら必ず一度ソフト上で仕訳を確認してください。

特に仮受消費税がきちんと計上されていることを確認してください。