不動産取得時に優位な土地・建物の按分割合を設定して節税を目指す方法!
この記事の対象者
  1. 土地・建物を取得しようとしている人
  2. 土地・建物取得時に節税したい人

この記事は、建物取得時の土地・建物の按分計算の方法を説明した上で実際にどんな方針で土地・建物の取得価額を決定していけば一番節税できるかについて考察していきます。

土地・建物の取得時の按分方法について

1つの不動産売買契約書で土地・建物の売買契約を締結し、契約書に土地・建物のそれぞれの内訳価格が記載されている場合、その内訳価格に従って、税法上も土地と建物の取得価額を決定することが出来ます(ただし、身内などとの不動産売買契約で、恣意的に土地・建物の取得価額を決定できる場合を除きます)。

また、1つの不動産売買契約書に土地・建物の内訳価格が記載されていない場合は、次の4つの計算方法を参考にして土地建物の取得価額を決定することになります。

  • 消費税から逆算する方法
  • 固定資産税評価額から按分する方法
  • 建物の標準的な建築価額表を利用する方法
  • 不動産鑑定評価に基づく方法

なお、土地と建物の按分方法自体については「土地建物の取得価額の按分方法について」で詳しく解説していますので、興味があればこの記事を読んだ後にでも確認してみてください。

按分の際は建物取得価額を多くできるように考えよう

1つの不動産売買契約書で土地・建物を取得した場合、購入者は建物の金額を少しでも多くできるように按分比率を考えていくと節税対策に繋がります

なぜ建物の取得価額を少しでも多くすると節税に繋がるかというと次の2つの理由があります。

  • 減価償却できる金額が増えるため
  • 消費税の納税額が減るため

減価償却できる金額が増えるため

建物は使用することによって消耗していくため、税法上も毎年消耗した部分を建物勘定から減額して、同額を経費に計上することを認めています

これを減価償却というのですが、建物の取得価額が多いほど減価償却を通して毎年度の経費に計上できる金額が多くなります

経費が多くなるということは、利益が減少することにつながるので、毎年の納税額が少なくなり、納税者にとっては有利になります。

消費税の納税額が減るため

建物の取得は消費税上、課税取引であるのに対して、土地の取得は消費税法上、非課税取引です。

よって、建物の取得価額が大きければ、大きいほど、不動産購入時に多くの消費税を支払っているということになります。

消費税の納税額の計算方法は、受け取った消費税-支払った消費税なので、不動産購入時に多くの消費税を支払っていれば、その分、差し引く消費税が多くなるので、消費税の納税額が減少する又は還付を受けられる可能性が出てきます。

事例で確認してみましょう。

以下の条件で、建物の取得価額が1,000万円の時と2,000万円の時の消費税の納税額を比較してください。

  • 事務所の賃貸料(売上高)に含まれていた消費税額400万円/年でした。
  • 消費税率は10%とします。
【解答】
建物の取得価額が1,000万円の場合の消費税の納税額は300万円、建物の取得価額が2,000万円の場合の消費税の納税額は200万円となります。

【解説】
<建物の取得価額が1,000万円の場合>
消費税の納税額=受け取った消費税-支払った消費税
=400万円-1,000万円×10%
300万円

<建物の取得価額が2,000万円の場合>
消費税の納税額=受け取った消費税-支払った消費税
=400万円―2,000万円×10%
200万円

上記の事例からも分かるように、建物の取得価額を多くできれば、消費税の納税額も「建物取得価額を多くできた分×消費税率」分だけ減少することになります。

売主との建物価格の調整が大変になる理由

少しでも節税をしたい土地・建物の取得者は、不動産売買契約書に①少しでも多くの建物価格を内訳価格として記載してもらうか、②建物価格の内書きとして少しでも多くの消費税額を記載してもらうのがベストになります。

しかし、土地・建物の売主側からすると、建物の内訳価格を多く記載することも、建物価格の内書きとして消費税額を多く記載するすることもなるべく避けたいところです。

さきほど、取得者側でメリットに挙げた消費税の事項が売主側ではそのままデメリットになってしまうからです。

事例で確認してみましょう。

以下の条件で、建物の売却価額が1,000万円の時と2,000万円の時の売主側の消費税の納税額を比較してください。

  • 交際費などの経費に付随して支払った消費税額は40万円とします。
  • 消費税率は10%とします。
【解答】
建物の売却価額が1,000万円の場合の消費税の納税額は60万円、建物の売却価額が2,000万円の場合の消費税の納税額は160万円となります。

【解説】
<建物の売却価額が1,000万円の場合>
消費税の納税額=受け取った消費税-支払った消費税
=1,000万円×10%―40万円
60万円

<建物の取得価額が2,000万円の場合>
消費税の納税額=受け取った消費税-支払った消費税
=2,000万円×10%―40万円
160万円

上記の事例からも分かるように、建物の売却価額が多くなってしまうと、消費税の納税額も「建物売却価額を多くした分×消費税率」分だけ増加することになります。

つまり、不動産売買契約書での建物の内訳金額の記載や建物に対する消費税の内書き金額は売主と買主の綱引きになりやすいということです。

例えば、もし、建物の内訳金額や建物に対する消費税の内書き金額で売主と調整がつかない時には、取得者側が売主のデメリット部分になる消費税の増加額を負担するという交渉をしてみても良いかもしれません(売主の消費税の納税額を多少負担しても、取得者には減価償却できる金額が増えるというメリットが残ります)。

ただし、ここからはあくまで私見ですが、よほど特殊な不動産でない限り、売主と買主の建物価格の綱引きは最終的に固定資産税評価額を基準にすることが多くなりますので、固定資産税評価額から按分する方法と大きく乖離する土地・建物の按分割合を不動産売買契約書で設定する場合は、合理性が欠ける場合も多くなります

よって、固定資産税評価額から按分する方法と大きく乖離する土地・建物の按分割合を設定する場合は、例え第三者との不動産売買契約であっても、建物価格を決定した合理的な根拠を準備しておいた方が良いと考えられるでしょう。