特定居住用宅地等として小規模宅地等の特例(80%減額)を適用出来れば、宅地等の評価額が大幅に減額され、結果的に相続税が数千万円単位で変わってくる場合もあります。
小規模宅地等の特例は、原則として亡くなった人(被相続人)が居住していた建物の敷地(借地権も含む)について適用されます。
なお、居住用建物が壊された後の更地や未完成の居住用建物の敷地については小規模宅地等の特例は基本的に適用できません。
今回は居住用建物を建て替えた場合に、その建て替えのタイミングと小規模宅地等の特例の適用関係について考えていきます。
居住用建物の建て替え中に相続があった場合
居住用建物の建て替え中に相続があっても、原則としてその居住は継続しており、建物の敷地は特定居住用宅地等に該当し、小規模宅地等の特例を適用することができます(租税特別措置法解釈通達69の4-8)。
例えば、居住用建物を建て替え中に父親が死亡し、生前の父親と同居していた息子が、建て替え後の建物に居住し、敷地を相続により取得した場合には、小規模宅地等の特例(80%減額)が適用できます。
なお、亡くなった人(被相続人)が借家暮らしで、居住用建物を新築している段階で相続が発生してしまって場合、その敷地に対しても特定居住用宅地等として小規模宅地等の特例を適用できます。
ただし、その場合は、居住用建物が建築中であることが要件になります。
土地を取得しただけで、居住用建物の建築に取り掛かっていない場合は、たとえ建築請負契約を建設会社と締結していても小規模宅地等の特例の対象になりませんので注意が必要です。
また、すでに居住用建物Aに住んでおり、新たに別の敷地に居住用建物Bを建築中である場合には、居住用建物Aの敷地についてのみ特定居住用宅地等として小規模宅地等の特例を適用出来ることになります。
相続税の申告期限までに建物を建て替えた場合
相続や遺贈で居住用建物を取得した親族が、ぼろぼろになっている居住用建物の建て替え工事を行い、相続税の申告期限までに居住用建物が完成していないケースもあります。
このケースでは、相続税の申告期限までに建物が居住の用に供していないことになりますが、建物の建て替え後に相続した親族が居住の用に供すれば、継続居住要件を満たすことになり、特定居住用宅地等として小規模宅地等の特例を適用できることになります。
例えば、父親と同居していた息子が、土地・建物を相続し、建物がぼろぼろだったため、建て替え工事を行ったとします。
建て替え工事の完成前に相続税の申告期限が到来してしまったため、相続税の申告期限の段階では、建物は工事中で居住できませんでした。
しかし、建物完成後に息子はその建物に居住しました。
この場合には、継続居住要件を満たし、特定居住用宅地等として小規模宅地等の特例(80%減額)を適用できます。