【この記事の対象者】
- 会社の経営者で退職金を使った節税対策を考えている人
- 個人事業主で節税対策に限界を感じている人
役員退職金は法人税法上の損金(経費)になる
個人事業主の場合、自分や配偶者などに退職金を支払っても必要経費に計上することはできませんでした。
しかし、会社の場合、自分や配偶者などが役員になっていれば、役員退職金を支払うことができ、一定の上限はありますが、支払った役員退職金は法人税法上の損金(経費)に計上できます。
役員退職金の受取側も所得税法上優遇される
役員退職金の受取側では、所得税が課税されることになります。
通常の役員報酬や役員賞与は所得税法上給与所得というカテゴリーに分類されますが、役員退職金は所得税法上退職所得というカテゴリーに分類されます。
この退職所得なのですが、似たような性質を持つ給与所得よりかなり税負担が軽減される措置がとられています。
まずは、退職所得の計算式を見てみましょう。
退職所得=(収入金額-退職所得控除額)×1/2
退職所得控除額は以下のように計算されます。
勤続年数 | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円×勤続年数 (80万円に満たない場合には、80万円) |
20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
退職所得控除額があることは退職所得のメリットの1つですが、給与所得にも給与所得控除があるためそこまで大きな差にはなりません。
給与所得より退職所得の税負担が軽減される最大のメリットは、退職所得の計算式の後ろにある1/2のところです。
この1/2は非常に大きなメリットになりますので、設例を使って同額の役員報酬と役員退職金を受け取った場合の所得税の納税額を比べてみましょう。
給与所得で2000万円を貰った場合は540万も所得税を納税しなければなりませんが、退職所得で2000万円を貰った場合はわずか170万円の所得税を納税すれば済みます。
役員退職金の支給の有無による節税額の比較
会社が役員退職金を支払った場合には損金(経費)に計上でき、受け取った役員の側では退職所得として所得税が課税されるのは分かりました。
では、役員退職金を経営者に支払った場合、役員退職金を経営者に支払わなかった場合に比べてどのくらい節税効果があるのかを確認していきましょう。
役員退職金を経営者に支払った場合は、実に330万円(750万円-420万円)もの節税になります。
ただし、自分や配偶者以外にも他の株主がいる場合は、会社のお金≠経営者一族のお金になってしまいますので、自分や配偶者以外の株主の意向により、税務上の節税対策としては成立しても会社の資金流出(経営者の退職金2000万円-節税額330万円=1670万円)を伴うため、役員退職金を利用した節税対策は採用されない場合もあります。
会社を設立して役員退職金を支払った場合の節税額
最後に、個人事業主が会社を設立して役員退職金を支払った場合にどれぐらい節税できるかを見ていきましょう。
会社を設立して退職金を支払った場合、個人事業主のまま引退するより、実に660万円(1080万円-420万円)もの節税になります。
コメント