従業員の日頃の労をねぎらう目的で社員旅行に行く会社は多いです。
通常、社員旅行の費用に関しては、福利厚生費になるため、法人税法上の損金になります。
ただし、社員旅行の費用であっても、要件を満たしていないと、福利厚生費ではなく、給与手当になってしまいます。
更に、社員旅行が給与手当になってしまうと、従業員に給与が支払われたと認定されてしまうので、各従業員にそれぞれに追加の所得税が課税されてしまいます。
今回は、社員旅行の費用が正しく福利厚生費と認定される要件について解説していきます。
福利厚生費について
まずは、会社の福利厚生費について確認していきましょう。
福利厚生費とは、会社が従業員のために提供する給与以外のサービスに対する費用ことで、法人税法上は、以下の2つの要件に当てはまることが求められます。
- 従業員全員を対象とした支出である事
- 内容や金額が、社会通念上妥当なものである事
福利厚生費の例としては、社員旅行の費用の他に、慶弔見舞金やフィットネスクラブの費用などがあります。
社員旅行を福利厚生費として損金にするための具体的な要件
社員旅行を福利厚生費として損金にするための具体的な要件は、次の3つのすべてを満たすことです。
- 社員旅行の期間が、4泊5日以内であること
- 社員旅行に参加した人数が会社全体の人数の50%以上であること
- 一人当たりの旅費が最大で10万円前後であること
社員旅行の期間が、4泊5日以内であること
福利厚生費として認められる社員旅行の期間は、国内旅行の場合、4泊5日以内です。
もちろん、海外旅行も社員旅行として認められていて、海外旅行ならば、外国での滞在期間が4泊以内になります。
旅行会社で組まれている通常のツアーなどの場合、宿泊日数なども領収書に出てきて、すぐに分かってしまいますので、必ず上記の期間以内に社員旅行は設定しましょう。
社員旅行に参加した人数が会社全体の人数の50%以上であること
会社に従業員がいて、従業員の50%以上が参加した場合に人数に関する要件を満たすことになります。
税務調査用の証拠を残すために、旅行先で必ず1枚は集合写真を撮ると良いでしょう。
また、ある程度の従業員のいる会社では、工場や支店ごとに社員旅行にいくことも考えられます。
この場合、工場や支店の全体の人数の50%以上が社員旅行に参加していることが人数に関する要件になります。
なお、従業員が1人しかいない場合、この従業員が旅行に行かなければ、人数に関する要件を満たすことはできません。
一人当たりの旅費が最大で10万円~15万円程度であること
正確には、旅費については、税務上詳しい金額基準は定めれていません。
ただし、税務署の過去の否認事例を見ると、あまりに高額な旅費は否認される傾向にあり、だいたい一人当たりの旅費として、最大で10万円~15万円程度が妥当なラインだと推測できます。
福利厚生費に該当するかの事例について
社員旅行を福利厚生費として損金にするための具体的な要件が確認できたので、次に福利厚生費に該当するかについて事例で確認していきましょう。
自己都合により社員旅行に参加できない従業員に金銭を支給してはいけない!
社員旅行を行う際に、自己都合により、参加できない従業員に旅費相当分の金銭を支給することがあります。
しかし、自己都合により、参加できない従業員に旅費相当分の金銭を支給してしまうと、参加者も含めた全員に同額の給与を支給したものとみなされてしまいます。
よって、自己都合により、参加できない従業員には、絶対に金銭を支給してはいけないことになります。
なお、会社の業務の都合により、参加できない従業員に旅費相当分の金銭を支給することは出来ます。
この場合、通常の給与と同じ扱いになり、参加できない従業員のみ給与課税されることになります。
社員旅行の費用の仕訳と消費税の確認
最後に、会社の社員旅行の費用の仕訳と消費税について確認をしておきましょう。
【社員旅行の費用が福利厚生費に該当する場合】
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
福利厚生費 | 50万円 | 普通預金 | 50万円 |
【社員旅行の費用が福利厚生費に該当しない場合】
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
給与手当 | 50万円 | 普通預金 | 50万円 |
社員旅行の費用が、従業員に対する福利厚生費に該当しない場合、会社では、給与手当を計上しなくてはならなくなり、従業員は所得税の給与所得が増えることになります。
なお、消費税に関しては、国内旅行か国外旅行かで区分が分かれることになり、国内旅行ならば、課税仕入れになり、海外旅行ならば基本的には不課税仕入れになるでしょう。
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