- 営業の電話で不動産投資を勧められた人
- 副業で不動産投資をやってみようと思っている人
- サラリーマン大家をやっている人
通常のサラリーマンの税金の計算方法とは?
サラリーマンが給料をもらい、そこから税金を支払う場合、所得税の給与所得というカテゴリーに分類されます。
給与所得 = 稼いだお金 - 稼いだお金に比例して認められる必要経費
会社が税金計算をしてくれているので、あまり認識されていませんが、サラリーマンの必要経費(給与所得控除といいます)は稼いだお金に比例して算出されます。
つまり、稼いだお金が多い程、多くの必要経費が認められる訳ですが、同時に稼いだお金も多くなるので、給与所得はゆるやかに増加いくことになります。
そして、給与所得以外にほかの所得(事業所得や不動産所得など)がなければ、以下の計算式により所得税の納税額が決定されます。
所得税の納税額 = 給与所得 × 税率
不動産所得がある場合
では、サラリーマンに不動産所得がある場合はどうなるでしょうか?
サラリーマンが投資用不動産を購入して、不動産賃貸業を始めると所得税の不動産所得が新たに発生します。
不動産所得 = 家賃収入 - 家賃収入を得るために使用した必要経費
通常のサラリーマンの給与所得以外に不動産所得が発生するので、以下の計算式により所得税の納税額が決定されます。
所得税の納税額 = (給与所得 + 不動産所得) × 税率
不動産所得を使って節税するスキーム
投資用不動産を購入し、不動産賃貸業を始めた場合、所得税の納税額は給与所得と不動産所得の合計額に税率を掛け合わせて計算することが分かりました。
そして、給与所得は必ずプラスになるのに対し、不動産所得はプラスの場合もあればマイナスの場合もあり得ます。
例えば、①投資用不動産を購入した事業年度や②大規模修繕を行った事業年度は、家賃収入より必要経費の方が大きくなる可能性があるからです。
この不動産所得のマイナスを使って納税額を減少させようというのが節税のスキームです。
例えば、給与所得+300万円、不動産所得△300万円の場合は、給与所得+不動産所得=0となり、税率をかけても所得税の納税額はなくなります。
所得税法上、給与所得のプラスと不動産所得のマイナスを合算することを損益通算と呼びます。
損益通算スキームの限界
損益通算スキームは不動産売買会社の営業電話などで「節税対策」として話されることが多いです。
給与所得と不動産所得の損益通算自体は所得税法上も認められており、一見優秀なスキームなのですが、使い方を間違えると、非常に危険なスキームです。
以下に損益通算スキームの代表的な問題点を3つあげてみます。
- 次の不動産を購入するときに銀行融資をしてもらえない
- お金がたまらない
- 会社の副業禁止規程に違反する可能性がある
次の不動産を購入するときに銀行融資をしてもらえない
給与所得と不動産所得の損益通算スキームの根幹は不動産を赤字にすることです。
そうであるならば、不動産を購入し続けて、赤字が出る年を増やしていかなければ意味がありません。
しかし、銀行融資の前提条件は不動産所得が黒字であることです。
不動産所得単体で何年間も赤字ということは、事業として失敗していると判断されるわけです。
よって、節税対策のスキームで不動産所得を赤字にし続けるということは、銀行融資を得づらくなることを意味します。
不動産投資は規模が大きければ大きい程、安定する商売なので、規模を大きくしていかない限り、事業としては失敗と言えます。
お金がたまらない
不動産所得をマイナスにして、所得税の納税額を減らすという考え方は、結局、お金を使って必要経費を増やすということになります。
お金を使わないで必要経費を増やせる方法は、減価償却費しかありません。
不動産所得をマイナスにするために賃貸収入より必要経費を多くするということは、サラリーマンの給料から不動産投資に係る費用を手出ししているということです。
まさに、節税するためにお金を浪費している構図以外なにものでもありません。
会社の副業禁止規程に違反する可能性がある
当たり前ですが、不動産投資だって立派な事業です。
会社によって副業に関する考え方は違うので難しいところですが、会社の副業禁止規程に違反している可能性があります。
よって、数万、数十万円の節税のために、本職自体を失うリスクを背負いこむ必要性があるか十分に検討する必要があると考えられます。
もし、仮に会社にバレずに不動産投資をしたいのならば、「あなたの副業はバレない?副業時の確定申告書の提出方法と時期について!」でまとめていますのでご興味があればそちらの記事をお読みください。
ただし、上記の参考記事の中にも書いてありますが、損益通算スキームを利用する場合に、一点だけ重要な注意点があるので、記載しておきます。
不動産所得が赤字の場合、確定申告で住民税を自分で納付する(普通納付)にチェックするだけでは足りません。
これは、不動産所得が黒字の場合の対応方法です。
不動産所得が赤字の場合は、所得税の確定申告の納付期限までに確定申告書を提出しないで、後日、還付請求を受ける際に所得税の確定申告書を提出することになります。
結論
サラリーマンの節税のための不動産投資は理論上は成り立つのですが、最終的に、①無用なリスクを背負い込むか②お金自体が減っていくため、やらない方がいいです。
ただし、ゆくゆくは本業として不動産賃貸業を営んでいく予定ならば、サラリーマンのうちに副業として、不動産投資を始めた方が、以下のような最高のメリットを受けられます。
- サラリーマンの間に不動産購入や大規模修繕を行えば、税金の一部が損益通算で還付される
- 仮に、自分が病気などで倒れても不動産収入があるので、収入補償保険に入らなくても生活できる
- 仮に、自分が死亡しても、団体信用生命保険に入っていれば、借金がなくなるため、生命保険に加入するお金が減らせる
まとめると、将来的に本業として、不動産賃貸業を行う予定ならば、サラリーマンの間に、不動産を購入し、修繕計画などを早めて、修繕費などを先に支払ってしまいましょう。
その結果、給与所得と不動産所得の損益通算で税金の還付も受けられ、不動産賃貸業を非常に有利に進めることができます。
間違っても、所得税を減らしたいからという理由で、投資用不動産を購入するという本末転倒な結論にならないように注意してください。