不動産賃貸業の大家が仕訳で使う勘定科目について

個人事業主や法人が行う日々の取引を整理(=仕訳といいます)するために使用するのが勘定科目です。

勘定科目は星の数ほど存在しますが、実は不動産賃貸業を営む大家が使用する勘定科目はほんの一部です。

今回は、①経営判断を税理士と協議できるようになるため、②決算書や帳簿の内容を理解できるようになるために、不動産賃貸業の大家が仕訳で使う勘定科目についてみていきましょう。

仕訳と勘定科目の関係

仕訳とは、例えば、賃借人から家賃が入金された、修繕のためにお金を業者に振り込んだなどの日々の取引を記録するための手段です。

そして、仕訳を通して日々の取引を記録するためには、勘定科目というものが使用されます

勘定科目とは、取引の内容を分かり易く分類するために使用される箱のことです。

勘定科目を正しく定義すれば、複式簿記に使用される表示金額の内容をあらわす科目のことになりますが、ここでは、簡単に内容が同じ取引を集計する箱のイメージを持ってください。

勘定科目は、資産、負債、純資産(資産から負債を引いた本当の財産)、収益、費用の5要素に分類されます。

個人事業主や法人として不動産賃貸業を営んでいくためには、この仕訳と勘定科目を理解することが必要条件になります。

適切な勘定科目を判別できないと仕訳をすることができず、仕訳ができないと日々の取引を集計する手段がなくなり、個人事業主や法人で必要になる帳簿や決算書など税務申告に必要となる成績表を作成することができなくなります

逆に、適切な勘定科目さえ判別できれば、仕訳ができ、弥生会計などの会計システムを通して帳簿や決算書などの税務申告に必要な成績表を作成できるようになるということです。

大家が仕訳で使用する勘定科目は多くない

実は不動産賃貸業で大家が仕訳で使用する勘定科目は多くありません(下に内容とともに列挙します)。

経理処理を行うだけであれば、契約書や領収書などの元資料を見て、どの勘定科目にあたるか判断できれば仕訳ができ、帳簿や決算書を作成できることになります。

資産勘定

資産勘定とは、プラスの財産を有することを表す勘定です。

勘定科目 内容
現金 事業で使用する現金。個人分は含まない。
預金 事業で使用する預金。個人分は含まない。
前払費用 事業用建物の火災保険料を購入時一括で支払い、前払分がある場合に発生する。
例)15年分の火災保険料を事業用建物購入時に支払った場合
土地 事業用の土地の購入時の価額。契約書で、土地建物一括になっている場合は固定資産税の金額等で按分する。
減価償却はないため購入時の価額が売却時まで残る。
建物 事業用の建物。契約書で、土地建物一括になっている場合は固定資産税の金額等で按分する。
建物付属設備 内装・給排水設備・電気設備・ガス設備の工事をした場合で固まりで20万円以上の金額を計上する。見積り書の摘要などで分けるのはダメ!
工具器具備品 パソコンや事務所の机や椅子など。1セットで30万以上の金額を計上する。
車両運搬具 事業で使用する車。
事業主貸 個人事業主専用の勘定科目。
事業資金から個人の生活費に入れたお金。

負債勘定

負債勘定は、債務などマイナスの財産を有することを表す勘定です。

勘定科目 内容
借入金 銀行や役員に借りたお金。
なお役員借入金は役員側では相続財産になるので注意!
未払費用 役員や従業員の社会保険料があると発生する。
前受金 通常は4月分の家賃を3月末までに前払されるためその金額合計。契約書の条件に沿う。
預り敷金 賃借人から預かっている敷金の金額。敷金のうち償却するものは収益計上。
事業主借 個人事業主専用の勘定科目。
個人から事業資金にいれたお金。

資本勘定

資本勘定とはプラスの財産である資産勘定とマイナスの財産である負債勘定の差額のことで、個人事業主や法人が所有する実質的な財産のことです。

勘定科目 内容
元入金 個人事業主専用の勘定科目。
資産と負債の差額として計上される。法人の資本金に近いイメージ。
資本金 会社専用の勘定科目で会社財産のこと。増資をしていない限り、設立時に決めた金額。
繰越利益剰余金 会社専用の勘定科目。
過去から今までどれくらい利益又は損失の蓄積があるかが分かる。プラスになっているのが望ましい。

収益勘定

収益勘定とは、個人事業主や法人に入ってくるお金を表す勘定です。

勘定科目 内容
賃貸料 家賃を処理する科目。会社では賃貸料・礼金・更新料をまとめて売上高で処理する場合が多い。
礼金 貰った礼金を処理する科目。会社では賃貸料・礼金・更新料をまとめて売上高で処理する場合が多い。
更新料 貰った更新料を処理する科目。会社では賃貸料・礼金・更新料をまとめて売上高で処理する場合が多い。
雑収入 保険金収入など適当な勘定科目がないときに使用する。
金額が多額のときは新しい勘定科目を自分で作成して計上する(内容が分かれば勘定科目名はなんでも良い)。

費用勘定

費用勘定とは、事業活動で費やした経費を表す勘定です。

勘定科目 内容
役員報酬 会社専用の勘定科目。役員の給料。
給料賃金 従業員への給料・賞与など。
外注工賃 外注先への支払い。
租税公課 不動産取得税・登録免許税・固定資産税の支払いや収入印紙の購入費用。
切手・収入印紙の残高が期末で多いときは貯蔵品に振り替える必要あり。
支払保険料 事業用建物の火災保険料の1年分の金額、地震保険料の金額
修繕費 事業用設備・物品の維持・修理費用。
20万円未満の建物付属設備に該当するものも修繕費処理できる。
水道光熱費 水道・電気・ガス料金。
旅費交通費 電車代、バス代、タクシー代、宿泊代など。
車両費 ガソリン代・車検代など車に関係する支出。
通信費 電話・インターネット料金。
広告宣伝費 不動産の借主の仲介業者にADを支払った時やATHOMEなどに部屋の広告を出した時。
接待交際費 取引先との飲食・慶弔費用など。個人事業者の場合は上限なし。中小の会社の場合800万円まで。
消耗品費 事務用品・電球・文房具など。
30万円未満の工具器具備品も含む。
福利厚生費 従業員の健康診断・学習補助・慶弔費用など。
個人事業主や会社役員のみの場合には福利厚生費は計上できない。
支払手数料 仲介会社にコンサルティングフィーを払った時。
支払報酬 税理士報酬、弁護士報酬・司法書士報酬など。
新聞図書費 新聞や業務に関連する本を購入した場合。
雑費 該当する勘定科目がない少額の金額。
支払利息 借入金の利息。

経営者はもう少し深い勘定科目の理解が必要

もしあなたが不動産賃貸業を営む経営者ならば、経営判断を税理士と協議するために、もう少し深く勘定科目の内容を知ることが必要となります

具体的には、日商簿記3級程度知識があることがベストになります

もし興味があれば、私の運営している別サイトの「最速簿記」で日商簿記3級の無料講座が見れますので、そちらを参考にしてください。