「今期は利益が1,000万円ほど出そうだが、税金を支払うためにいくら残しておけばいいのか」。決算期が近づくと、経営者の方からよくいただくご質問です。
決算書ができるまで納税額がわからないと、納税資金の準備が間に合わず、黒字なのに資金繰りが苦しくなりかねません。大まかな納税額なら、決算を待たずに利益へ「実効税率」を掛けるだけで見当がつきます。
本記事では、中小企業の利益区分別の実効税率早見表を使って、法人税・法人住民税・法人事業税の概算額を算出する方法を解説します。2026年4月に始まった防衛特別法人税の影響もあわせて確認できます。
実効税率とは?表面税率との違いをやさしく解説
実効税率とは、会社の利益に対して法人税・法人住民税・法人事業税が合計で何%かかるかを表した税率です。利益に実効税率を掛けるだけで、3つの税金の概算納税額をまとめて把握できます。
以下では実効税率の仕組みを説明しますが、正直かなり難しい論点になります。どうしても理論も知りたいと思う人以外は、次章以降の内容まで読み飛ばしてもらっても結構です。
実効税率と表面税率(=法律で定められた税率をそのまま足し上げた率)の違いは、法人事業税を経費として差し引いているかどうかにあります。
法人税と法人住民税は、そもそも経費になりませんが、法人事業税だけは、支払った事業年度の経費になります。
経費が増えれば税金の計算のもとになる利益が減るため、実際の負担は税率の単純合計より軽くなります。単純に足すと約37%でも、実効税率は約33.6%まで下がります。
実効税率の計算式
実効税率 = {法人税率×(1+地方法人税率+住民税率)+事業税率×(1+特別法人事業税率)} ÷ {1+事業税率×(1+特別法人事業税率)}
なお、3つの税金それぞれの計算方法や申告先は、法人税・法人住民税・法人事業税の計算と申告方法で詳しく解説しています。本記事は、3つをまとめて概算でつかむ方法に絞って説明します。
中小企業の実効税率早見表【利益4区分】
中小企業(資本金1億円以下)の実効税率は、利益の区分に応じて21%台から34%台までの4段階になります。自社の利益がどの区分に入るかを見れば、掛けるべき税率がすぐ決まります。
| 利益の区分 (税引前当期純利益-繰越欠損金) | 実効税率 |
|---|---|
| 年400万円以下 | 21.37% |
| 年400万円超800万円以下 | 23.17% |
| 年800万円超 約2,440万円以下 | 33.58% |
| 約2,440万円超 | 34.43% |
区分が分かれる理由は3つあります。法人税の軽減税率、法人事業税の3段階の税率、そして2026年に始まった防衛特別法人税です。
防衛特別法人税は2026年4月に始まった国税です。年500万円の基礎控除があるため、利益が約2,440万円までは負担が生じません(国税庁「防衛特別法人税が創設されました」)。
上の表は標準税率をもとにした数値です(国税庁タックスアンサー No.5759「法人税の税率」、総務省「令和7年度 法人住民税・法人事業税 税率一覧表」)。利益が増えるほど税率が上がる階段状の構造で、境目は400万円・800万円・約2,440万円の3か所です。
概算納税額を出す4つのステップ
概算納税額は、利益から過去の赤字を差し引き、実効税率を掛けて定額の法人住民税を足せば求められます。決算書を待たずに、試算表だけで決算前に見当をつけられます。
なお、税理士が決算前に納税額の見当をつけるときも、同じ手順を使います。
決算期末の試算表から、税引前当期純利益を読み取ります。減価償却などの決算整理が済んだ試算表を利用しましょう。
繰越欠損金(=過去の赤字のうち、まだ使っていない残額)があれば、税引前当期純利益から差し引きます。
繰越欠損金の残高は、前期の法人税申告書の別表七(一)「欠損金の損金算入等に関する明細書」の翌期繰越額で確認できます。
繰越欠損金が税引前当期純利益より大きい場合は、差し引いた後の金額はゼロになります。
差し引いた後の金額を早見表の区分ごとに分け、それぞれの実効税率を掛けて合計します。全体に一律の税率を掛けると、納税額を大きく見積もりすぎます。
最後に法人住民税の均等割(=赤字でもかかる定額部分)を加算します。
資本金等1,000万円以下・従業者50人以下なら最低7万円です。
【計算例】税引前当期純利益3,000万円・繰越欠損金100万円の概算納税額
税引前当期純利益が3,000万円で繰越欠損金が100万円ある会社なら、概算納税額は約894.3万円になります。
繰越欠損金100万円を差し引いた2,900万円が、実効税率を掛けるもとになります。
| 区分 | 計算式 | 税額 |
|---|---|---|
| 年400万円以下の部分 | 400万円 × 21.37% | 85.5万円 |
| 年400万円超800万円以下の部分 | 400万円 × 23.17% | 92.7万円 |
| 年800万円超 約2,440万円以下の部分 | 1,640万円 × 33.58% | 550.7万円 |
| 約2,440万円超の部分 | 460万円 × 34.43% | 158.4万円 |
| 法人住民税の均等割 | 定額(最低額) | 7.0万円 |
| 概算納税額の合計 | ― | 約894.3万円 |
差し引き後の2,900万円を早見表の区分ごとに切り分け、それぞれの実効税率を掛けています。最後に法人住民税の均等割7万円を足して完成です。
実効税率を使うときに注意したい3つの点
実効税率による概算には、押さえておくべき前提が3つあります。前提を知らずに使うと、概算が実際の納税額から大きくずれます。
| 見落としやすい点 | 内容 |
|---|---|
| 均等割は赤字でもかかる | 法人住民税の均等割は利益に関係なく発生します。赤字決算でも最低7万円の納税資金が必要です。 |
| 自治体で税率が上乗せされる | 早見表の数値は標準税率です。所在地によっては超過税率が適用され、実効税率が1%前後高くなります。 |
| 繰越欠損金を差し引いてから当てはめる | 早見表の区分は、税引前当期純利益から繰越欠損金を差し引いた後の金額で判定します。利益の額をそのまま当てはめると、区分がずれて概算を誤ります。 |
正確な納税額は決算書と申告書を作って初めて確定します。概算額は、納税資金をいつまでにいくら用意するかを決めるための目安として活用してください。
まとめ|実効税率を覚えれば納税資金は早く読める
実効税率を覚えておけば、決算を締める前でも納税額の見当がつきます。納税資金を早めに用意できるので、決算期の資金繰りが安定します。
押さえておきたい5つのポイント
- 中小企業の実効税率は利益の区分に応じて21.37%〜34.43%の4段階
- 概算納税額は「利益×実効税率+均等割」で求められる
- 繰越欠損金があれば、実効税率を掛ける前に差し引く
- 均等割は赤字でも最低7万円かかる
- 2026年4月に防衛特別法人税が始まり、利益2,440万円超の区分が加わった
中小企業の実効税率に関するよくある質問
実効税率と概算納税額について、経営者の方からよくいただく質問をまとめました。
- 法人の実効税率とは、どのような税率のことですか?
-
実効税率とは、法人税・法人住民税・法人事業税の3つを合計すると、会社の利益に対して何%の税金がかかるのかを表した税率です。
決算を締める前でも、利益の見込み額に実効税率を掛ければ、3つの税金を合わせて納める金額がおおよそいくらになるかを先に知ることができます。
- 中小企業の実効税率は、1年間の利益のうち800万円を超える部分では何%になりますか?
-
1年間の利益のうち、800万円を超える部分には33.58%の実効税率がかかります。ここでいう利益とは、税引前当期純利益から繰越欠損金を差し引いた金額です。
1年間の利益を800万円以下に収められれば、実効税率は21.37%から23.17%にとどまります。800万円を境に10%以上の税率差が生まれるため、決算前に利益の見込みを確かめておく価値があります。
- 2026年4月に始まった防衛特別法人税によって、中小企業の実効税率はどう変わりましたか?
-
実効税率を当てはめる利益の区分が、3つから4つに増えました。区分の判定に使うのは、1年間の税引前当期純利益から繰越欠損金を差し引いた金額です。
400万円以下は21.37%、400万円超800万円以下は23.17%、800万円超2,440万円以下は33.58%、2,440万円超は34.43%です。新たに加わったのは、4つ目の2,440万円超の区分です。
- 赤字の会社でも、納めなければならない税金はありますか?
-
赤字の年は利益がないため、実効税率を使った計算そのものが不要になります。法人税と法人事業税は発生せず、納めるのは法人住民税の均等割だけです。
均等割は、資本金等の額が1,000万円以下で従業者数50人以下の会社なら最低で年7万円かかります。
参考文献


コメント