会社の借入金について、代表者やその親族が連帯保証人となっていませんか。
役員が連帯保証人となっている場合、会社が役員に支払う連帯保証料は経費に計上できます。
制度を知らないまま放置すると、毎期活用できたはずの節税の機会を逃します。
本記事では、連帯保証料の上限額、役員側の所得税の取扱い、設定額の決め方を解説します。
役員に支払う連帯保証料は会社の経費にできる?損金算入できる理由
会社が役員に支払う連帯保証料は、会社の経費(法人税法上の損金)として計上できます。
会社が銀行などの金融機関から借入れをする場合、金融機関から役員個人に連帯保証を求められることがあります。
たとえば、会社が銀行から1億円を借り入れる際に、社長個人が連帯保証人となるケースが典型例です。
連帯保証人(=会社が借入金を返済できなくなったときに、会社に代わって返済する義務を負う人)には、個人の財産を失うリスクがあります。
連帯保証料とは、役員が引き受ける保証リスクの対価として、会社が役員に支払う金銭です。
役員が負担するリスクに見合った対価であるため、会社が支払った連帯保証料は経費として認められます。
ただし、会社が連帯保証料の金額を自由に決められるわけではなく、法人税法上の適正額には上限があります。
次章では、経費として認められる連帯保証料の上限額を確認します。
役員への連帯保証料はいくらまで経費になる?上限は信用保証協会の保証料率
会社が役員に支払う連帯保証料は、信用保証協会の保証料率を参考にした金額までが経費として認められます。
会社が連帯保証料の金額を自由に決められない理由は、2つあります。
1つ目は、連帯保証料の料率を操作するだけで、会社が自由に利益を減らせてしまうためです。
2つ目は、経費にできる金額に制限がある役員給与を保証料の名目で支払うことで、その制限が骨抜きになってしまうためです。
国税庁の質疑応答事例では、役員の個人保証が必要であることが明らかであれば、相当な額の保証料を経費として認めて差し支えないとされています。
あわせて、保証料の額については「信用保証協会において徴している金額を参考にする」と示されています(法人税関係質疑応答事例集・平成13年10月/情報公開法第9条第1項による開示情報)。
裁判所も同じ考え方をとっており、次の宮崎地方裁判所の判決が実務上の基準になっています。
本件保証のように会社の代表取締役等の役員が当該会社の債務の保証を行い、その対価として保証料の支払を受ける場合において、その適正な額を確定する基準については、支払が行われること自体が例外的であること、対価の趣旨に見合った額を直接的に算出することは不可能であり、比較の対象となり得る適切な事例も存在しないこと、そして、右基準が会社の役員に対する給付の損金算入の限度額を画する意味において問題とされていることを考慮すると、営利を目的としない性質の共通性を重視して、保証のための費用額の範囲内の金額を受領し、利益を得ないことを前提として設定されている信用保証協会の保証料の算出基準を参考として定めた基準(保証する債務額の年利率1%を上限とする。)により、会社の役員が当該会社の債務を保証した場合に支払われるべき適正な保証料額を確定すべきであるとする被告の主張は相当であると認めることができる。
引用元:宮崎地方裁判所 平成10年(行ウ)第6号 法人税賦課処分等取消請求事件
平成12年11月27日判決(税務訴訟資料第249号731頁)
宮崎地方裁判所の判決と国税庁の質疑応答事例から、連帯保証料の上限は信用保証協会の保証料率を基準に判断する取扱いが定着しています。
次章では、実際に何%の料率を採用すればよいかを確認します。
連帯保証料の料率の決め方|上限は信用保証協会の最高料率
連帯保証料の料率の上限は、信用保証協会の最高料率です。
役員への保証料が争われた宮崎地方裁判所の判決(平成12年11月27日)が、当時の信用保証協会の最高料率であった年1%を上限としたためです。
判決当時の信用保証協会は借入金の全額を保証しており、現在これに対応するのは責任共有制度(=信用保証協会が全額を保証せず、金融機関も一部のリスクを負担する仕組み)の対象外となる保証です。
したがって、責任共有制度の対象外となる保証の最高料率が、連帯保証料の上限になります。
信用保証協会の信用保証料率表|9区分の料率一覧
最新の料率は、各信用保証協会が公表している「信用保証料率表」で確認できます。
ただし、料率の基本部分は全国共通で、東京・千葉・埼玉・福岡のいずれの信用保証協会でも同じ数値です。
参考までに、本記事の執筆時点で最新である2026年(令和8年)6月23日更新の東京信用保証協会「信用保証料率表」を記載します。
なお、料率は改定されることがあるため、実際に設定する際は最新の料率表をご確認ください。
| 料率区分 | 責任共有制度の対象 (一般的な融資) | 責任共有制度の対象外 (協会が全額保証) |
|---|---|---|
| 区分1 | 1.90% | 2.20% |
| 区分2 | 1.75% | 2.00% |
| 区分3 | 1.55% | 1.80% |
| 区分4 | 1.35% | 1.60% |
| 区分5 | 1.15% | 1.35% |
| 区分6 | 1.00% | 1.10% |
| 区分7 | 0.80% | 0.90% |
| 区分8 | 0.60% | 0.70% |
| 区分9 | 0.45% | 0.50% |
※区分1は信用状況が厳しい会社に、区分9は財務内容が良い会社に適用されます。ただし区分は信用保証協会がリスク評価モデルで判定するため、会社側で自社の区分を知ることはできません。
上記の表のとおり、責任共有制度の対象外となる保証の最高料率は年2.2%です(2026年(令和8年)6月23日時点)。
連帯保証料は何%に設定する?実務での決め方
上限が分かっても、実際にいくらに設定するかは会社ごとに判断することになります。
信用保証協会の保証付融資を利用している会社は、保証決定の通知書に記載された実際の保証料率をそのまま参考にできます。
国税庁の質疑応答事例が示す「信用保証協会において徴している金額」に、まさに該当するためです。
一方、信用保証協会の保証付融資を利用していない会社には、参考にできる自社の保証料率がありません。そのため、宮崎地方裁判所の判決の考え方が手がかりになります。
宮崎地方裁判所の判決当時の保証料率は、保証の種類や金額に応じて定められており、信用状況に応じた区分はありませんでした。
現在の保証料率は、信用状況に応じた9つの区分に分かれる仕組みに変わっています。
宮崎地方裁判所の判決の考え方をそのまま当てはめれば、現在の最高料率を採用できる可能性があります。
ただし、現在の最高料率は信用状況が最も厳しい会社に適用される料率であり、判決当時の最高料率とは性格が異なります。
税務調査で論点になる可能性があるため、その料率とした理由を説明できる資料を用意しておくことが大切です。
次章では、連帯保証料が経費として認められないケースを確認します。
連帯保証料が経費として認められないケースと否認されたときの影響
役員の保証が形式的なだけで危険を負担していない場合、連帯保証料は経費として認められません。
国税庁の質疑応答事例は、役員の個人保証が必要であることが明らかであることを経費として認められる前提としています。
会社に定期預金や不動産などの担保があり、役員の保証が形式的なものにすぎない場合、その保証料は経費になりません。
会社が、経費にできる上限を超える連帯保証料を役員に支払った場合の影響も確認しておきましょう。
上限を超えた部分は、保証料ではなく、株主総会などで決めた役員報酬とは別に支払われた臨時の給与として扱われます。
役員に対する給与のうち経費になるのは、あらかじめ定めた時期に同額を支給する定期同額給与など一定の要件を満たすものに限られ、臨時の給与は経費になりません(法人税法34条)。
経費が減ると、その分だけ会社の所得金額が増えるため、納めるべき法人税も増えます。
すでに提出した申告書の税額が少なすぎたことになり、修正申告や税務署による更正によって、不足していた法人税を後から納付することになります。
申告した税額が少なかったことに対して過少申告加算税が、納付が期限に遅れたことに対して延滞税が、それぞれ課されます。
さらに、経費にできる上限を超えた連帯保証料は給与にあたるため、会社はその金額についても源泉所得税を徴収して納付する義務を負います。
徴収漏れとなっていた源泉所得税を後から納付することになり、不納付加算税と延滞税も課されます。
次章では、連帯保証料でどれだけ節税できるかを具体的な金額で確認します。
連帯保証料の節税額はいくら?計算方法と保証額別のシミュレーション
連帯保証料による節税額は、保証額に料率を掛けた経費計上額に、法人税率等を掛けて計算します。
例えば、保証額1億円・料率年1%・法人税率等30%の場合、節税額は年30万円になります。
以下は、料率を年1%、法人税率等を30%と仮定した場合の、保証額ごとの経費増加金額と節税金額です。
| 連帯保証金額 | 経費増加金額 | 節税金額 |
|---|---|---|
| 5,000万円 | 50万円 | 15万円 |
| 1億円 | 100万円 | 30万円 |
| 2億円 | 200万円 | 60万円 |
銀行から多額の借入金があり、役員が連帯保証人になっていれば、連帯保証料による経費の計上額も相当の金額になるでしょう。
また、同族会社の場合、連帯保証人が複数設定されていることもあります。
役員2人が会社の借入金の連帯保証人になっている場合には、2倍の連帯保証料が経費に計上できます。
ただし、複数の役員に支払う場合も、それぞれの役員に危険を負担している実態が必要です。
次章では、連帯保証料の仕訳と勘定科目を確認します。
連帯保証料の仕訳と勘定科目|未払計上の方法も解説
連帯保証料は、支払保証料などの科目で費用に計上し、相手科目は現金預金または未払費用とします。
仕訳例は以下のようになります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払保証料※ | 100万円 | 現金預金 又は 未払費用 | 100万円 |
支払保証料の勘定科目がご利用の会計ソフトにない場合は、支払利息の勘定科目で処理することも可能です。
なお、連帯保証料は、期末に未払費用として計上することもできます。
ただし、期末までに保証料の取り決めがあり、当期の保証期間に対応する金額であることが前提です。
期末日を過ぎてから保証料を取り決めても、その事業年度の経費にすることはできません。
次章では、連帯保証料を受け取った役員側の税金を確認します。
連帯保証料を受け取った役員の税金はどうなる?
会社から連帯保証料を受け取った役員は、その金額を所得税の雑所得として計上する必要があります。
【雑所得の計算方法】
雑所得=総収入金額-必要経費
受け取った連帯保証料は、雑所得の総収入金額に計上します。
役員が保証のために直接支出する費用は通常ないため、必要経費はゼロとなることが多く、受け取った金額がそのまま雑所得の金額になります。
役員報酬だけを受け取っている役員は、給与所得しか発生していないため、通常は勤務先の年末調整で所得税の精算が終わります。
連帯保証料を受け取ると雑所得が生じますが、給与を1か所から受けていて年末調整が済んでいる人は、給与所得と退職所得以外の所得が年20万円以下であれば、所得税の確定申告は不要です(所得税法121条)。
年20万円を超える場合は、所得税の確定申告が必要になります。
ただし、医療費控除やふるさと納税の寄附金控除などのために確定申告をする場合は、20万円以下であっても、連帯保証料による雑所得を含めて申告する必要があります(国税庁タックスアンサー No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」)。
なお、所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税については市区町村への申告が必要です。
連帯保証料は所得税と社会保険料も踏まえて決める|役員報酬との調整
連帯保証料の経費計上額は、「役員の連帯保証金額×信用保証協会の最高保証料率」で計算できますが、あくまで経費計上額の上限を定めたものであるため、上限の範囲内であれば、経費計上額は変えられます。
一方で、連帯保証料は受け取った役員の雑所得を増やす効果があり、役員の所得金額を高くしてしまいます。
また、所得税は累進課税税率なので、役員の所得金額が高くなると、その分税率も上がります。
つまり、「所得税の税率<法人税の税率」になるように計算して、連帯保証料を決定すべきです。
さらに、連帯保証料は役員報酬ではないため、連帯保証料を支払ったことで、社会保険料が上がることはありません。
つまり、社会保険料を負担することなく、役員に資金を移転できるということになります。
ここから一歩進めて、連帯保証料を支払う分だけ役員報酬を見直すという考え方もあります。
役員報酬を連帯保証料の分だけ引き下げれば、役員の手取りを変えないまま、会社と役員が負担する社会保険料を抑えられます。
ただし、役員報酬を引き下げると、将来受け取る厚生年金の額も下がります。
目先の保険料負担と将来の年金額のどちらを重視するかは、役員の年齢や退職までの期間によって異なります。
まとめ|役員への連帯保証料を経費にするための条件と注意点
会社が役員に支払う連帯保証料は、役員が実際に危険を負担しており、金額が信用保証協会の保証料率の範囲内であれば、経費として計上できます。
- 経費にできる根拠:会社が役員に支払う連帯保証料は、役員が保証によって背負うリスクに対する対価であるため、経費として認められます。
- 金額の上限:経費にできる金額の上限は、信用保証協会の保証料率を基準に判断します。民間の保証会社の保証料率は営利目的で決められているため、根拠にはできません。
- 料率の決め方(保証付融資を利用中):すでに信用保証協会の保証付融資を利用している会社は、保証決定の通知書に記載されている実際の料率をそのまま参考にできます。
- 料率の決め方(利用がない場合):保証付融資を利用していない会社は、信用保証協会の最高料率を上限として、その料率にした理由を説明できる金額を選びます。
- 残すべき資料:税務調査で料率の根拠を確認されることがあるため、取締役会議事録や保証契約書、料率を計算した資料を残しておきます。
- 経費にならない場合:会社に十分な担保があり、役員の保証が形式的なものにすぎない場合は、危険を負担している実態がないため経費になりません。
- 上限を超えたとき:上限を超えて支払った部分は役員給与として扱われ、経費にならないうえ、法人税と源泉所得税の両方で追徴されます。
- 役員側の税金:連帯保証料を受け取った役員は、その金額を雑所得として扱います。給与以外の所得が年20万円を超える場合は、所得税の確定申告が必要です。
- 社会保険料との関係:連帯保証料は役員報酬ではないため社会保険料はかかりません。その分だけ役員報酬を見直せば負担を抑えられますが、将来の厚生年金や役員退職金の上限にも影響します。
自社の借入金のうち役員が連帯保証している金額を確認し、連帯保証料を経費にできる余地がないか、一度点検してみてください。
参考文献
- 宮崎地方裁判所 平成10年(行ウ)第6号 法人税賦課処分等取消請求事件 平成12年11月27日判決(税務訴訟資料第249号731頁)
- 国税庁「法人税関係質疑応答事例集(平成13年10月)」161「役員に対して支払った保証料」(情報公開法第9条第1項による開示情報)
- 東京信用保証協会「信用保証料率の体系」および「信用保証料率表」(2026年6月23日更新)
- 一般社団法人全国信用保証協会連合会「信用保証料」
- 国税庁タックスアンサー No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」
- 法人税法 第22条第3項・第4項(各事業年度の所得の金額の計算)、第34条(役員給与の損金不算入)|e-Gov法令検索
- 所得税法 第35条(雑所得)、第121条(確定所得申告を要しない場合)|e-Gov法令検索


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