- 不動産賃貸業を始めた個人事業主
- 不動産所得の事業的規模の詳細を知りたい人
- どんな投資用不動産を購入するか迷っている人
くま君、アパートを購入するんで税金の話を聞きたいらしいね。
そうなんですよ。
部屋数が9室の物件と10室の物件があるんでどちらにしようか迷っていて…
不動産屋さんからは不動産所得の事業的規模にあたるから、10室の方のアパートの購入を勧められたんだけど…
たしかに、不動産賃貸業が事業的規模と認めらる基準は「5棟10室」以上の部屋数を貸し出すことなんだ。
そうすると、税務上次の2つの特典があるよ。
- 65万円の青色申告特別控除が受けられる
- 家族に給料を払った時に給料が必要経費になる
そうなんだ…
うーん、あまり実感がわかないな…
例えば、65万円の青色申告特別控除だけど、所得税の税率が30%だとしたら、約20(65万円×30%)万円の節税対策になるよ。
そうなんだ。
くま君、奥さんいたよね?
うん。
それなら、奥さんに給料を払えば必要経費になる可能性があるよ。
専業でやってくれていて、300万円の給料を払えば90万円(300万円×30%)ぐらい節税になるよ。
二つ合わせて100万円以上の節税になるし、結構良いかもしれないね。
うん、節税効果は毎年続くからかなりの違いになるね。
不動産投資を初めて行う場合、マンションの1室又はアパートの1棟買いから始めることが多いです。
当然、最初に購入した不動産のみを運営して利回りを上げるだけでも良いのですが、どんどん投資用不動産を買い足していった方が、所得税の不動産所得の事業的規模の基準を満たすため、節税対策になります。
所得税法上の不動産所得の事業的規模とは
不動産が事業的規模と認められる基準は、「5棟10室」以上の部屋を所有することです。
具体的には、戸建て物件を5棟以上所有するか、もしくはアパートやマンションの部屋数を10室以上にして家賃収入を得ているかどうかで判断します。
ただし、「5棟10室」は形式ではなく実質で判断されるので、例えば、以下のような場合でも事業的規模と認められます。
- 10室以上の部屋を所有しているが、空室があり、実際入居している部屋が10室未満の場合
- 部屋の所有数は10室未満であるが、賃料が高い高級マンションを所有している場合
10室以上の部屋を所有しているが、空室があり、実際入居している部屋が10室未満の場合
10室以上所有しているのなら、事業的規模と認められます。
ただし、一定期間以上空室の状態で賃貸の募集もしていないとその部屋はカウントされず、事業的規模にならない可能性もあります。
部屋の所有数は10室未満であるが、賃料が高い高級マンションを所有している場合
「5棟10室」はあくまで形式基準なので、実質的に考えて、不動産投資が事業だと認められれば事業的規模になります。
例えば、賃料の高い高級マンションであれば1室ずつの家賃は高いことが想定されます。
賃料の高い部屋は賃料の安い部屋と同様に1室と数えられるわけでなく、実質的に考えて2部屋分など、異なった取り扱いができる場合があります。
高級マンションを所有している場合、所有部屋数が8室でも9室でも事業的規模と見なされる可能性は十分あります。
不動産投資が事業的規模になると節税効果は大きい
さて、不動産投資が事業的規模に該当した場合のみ受けられる特典を見ていきましょう。
- 65万円の青色申告特別控除が受けられる
- 家族に給料を払った時に給料が必要経費になる
※ 上記はいずれも青色申告をしている場合に認められます。
青色申告は「青色申告をしますよ」と紙切れ(青色申告承認申請書といいます)を税務署に出して、適切に記帳をしている場合に認められます。
所得税法上の不動産所得の事業的規模を満たすだけで①65万円の節税ができて、さらに②家族に給料を払っても必要経費と見なされるのは相当メリットがありますね。
事業的規模の判定
最後に事業的規模の判定のもう少し詳しい話しをして終わります。
- 建物が共有の場合はどのように判定しますか?
- 共有の場合でも、共有部分で按分するのではなく、共有者それぞれが建物をカウントできます。
例えば、マンションの1部屋を2人で共有していた場合、共有者のそれぞれが1室ずつ保有していると考えます。 - 駐車場はどう判定するか?
- 基本的に5台で1室と判定します。
ただし、東京などの首都圏では、駐車場の賃貸代金も高いので、もっと少ない台数で1室と数えられるケースもあります。駐車場がある地区の所轄税務署に問い合わせて確認してください。 - マンションと戸建てを両方所有していたら?
- 戸建ては1棟で2室と換算します。5棟10室で事業的規模なので1棟は2室と考えてください。
例:戸建て1棟とアパート8室を持っている場合
1棟×2室+8室=10室となり事業的規模に該当します。
もし投資用不動産を買う場合で迷ったら
①すでに9室保有していて、追加で1室買うかどうかで迷ったり、②初めてアパートを買う場合で部屋数が全部で9室のアパートと10室のアパートがあって、どちらを買うか迷った場合、今回説明した不動産所得の事業的規模の話を思い出してください。
不動産投資の初期段階で、あまり物件数を保有していない場合、不動産所得の事業的規模に該当して、所得税の65万円控除を受けられるだけでもメリットは相当あるはずです。
ただし、不動産投資の場合、不動産の購入額次第で、利益が出るか損するかが決まるので、無理に事業的規模にするぐらいなら、買わない方が良いという選択肢も当然出てきます。
不動産会社によっては、税法上の優遇を謳って、高い不動産を購入させようとする事例もあったりします。
税法上の優遇を受けようとして、結局、損をしていたという結果にだけはならないように気をつけましょう。