公認会計士・税理士事務所を10年経営して、また、自分が実際に不動産業務に関わってきた知識や経験を活かして、「不動産業を営む小規模会社の経理・税務マニュアル」をまとめてみたいと思いました。
今回は、その第12回目で、小規模会社の節税対策の全容と分類についてまとめます。
今回の記事は、不動産業でなくても小規模会社(目安:従業員10名未満)であれば、どの会社でも関係してくる記事になります。
他業種の方も含めて小規模会社の節税対策の全容と分類について知りたい人はぜひご覧ください。
会社の節税対策の全容と4つの分類
まず、会社の節税対策という場合、法人税・法人住民税・法人事業税の節税対策をイメージしてください。
また、小規模な同族会社の場合、代表取締役の役員報酬に伴う所得税が減少することも会社=代表取締役なので、会社の節税対策ということになるでしょう。
ただし、消費税に関しては、節税対策をすることが制度的に難しいです。
会社の節税対策は、以下の4つに分類することができます。
- お金を使い、実際の納税額を減らす節税対策
- お金を使わないで、実際の納税額を減らす節税対策
- お金を使い、税金の支払いを翌期以降に遅らせる節税対策
- お金を使わないで、税金の支払いを翌期以降に遅らせる節税対策

お金を使い、実際の納税額を減らす節税対策
1つ目は、お金を使い、実際に納税額を減らす節税対策です。
例えば、役員に退職金を払うことが挙げられます。
役員に退職金を支払えば、条件次第で全額経費(損金)に計上できます。
基本的に役員退職金は高額になるため、かなり多くの経費が計上できます。
また、退職金を貰った役員の方も所得税の退職所得に該当しますので、納税額がかなり優遇されます。
退職金を支払うので、会社のお金は減ってしまいますが、法人税・法人住民税・法人事業税の納税額をかなり減らすことができる節税対策になります。
お金を使わないで、実際の納税額を減らす節税対策
2つ目は、お金を使わないで、実際の納税額を減らす節税対策です。
例えば、会社を設立し、元々個人の所得のみであったところを個人の所得と会社の所得に分けることが挙げられます。
個人の所得の税率は累進課税税率が適用され、所得が多いほど税率は上がりますが、会社の所得に係る税率は一定(大体30%程度)なので、所得税の税率が高い場合は、会社に所得を付け替えた方が、税率の違い分だけ節税になります。
お金を使い、税金の支払いを翌期以降に遅らせる節税対策
3つ目はお金を使い、税金の支払いを翌期以降に遅らせる節税対策です。
例えば、経営セーフティ共済の掛金を支払った場合が挙げられます。
経営セーフティ共済の掛金を支払った期は、掛金全額を経費(損金)に算入でき、支払った期の法人税・法人住民税・法人事業税の納税額は減少します。
そして、経営セーフティ共済の加入から40カ月を経過すると、掛金の100%が帰ってくる形で解約することができます。
経営セーフティ共済の解約金は、返金された時に収益に計上されてしまい、返金された期の法人税・法人住民税・法人事業税の納税額は増加します。
結局、掛金を払った時と掛金が戻ってきた時で納税額を付け替えているだけですが、納税を先送りしている期間で新たな事業展開が出来たり、利息を得られたりするので有用な手段になります。
また、お金を使い、税金の支払いを翌期以降に遅らせる節税対策のスキームは比較的容易であり、期末ぎりぎりでも実行できるものが多いため、利用し易い節税対策になります。
お金を使わないで、税金の支払いを翌期以降に遅らせる節税対策
4つ目はお金を使わないで、税金の支払いを翌期以降に遅らせる節税対策です。
この節税対策は、費用の先食いをするものが多く、基本的に1度しか節税効果は得られません。
しかし、すぐに利用できる節税対策が多いので、利益が出過ぎて困った時に最も助けになります。
例えば、期末に従業員給料の未払分や厚生年金保険料と健康保険料の未払分を未払費用計上することが挙げられます。
未払費用計上とは、支払いが確定しているがまだ払っていない費用を未払費用として仕訳し、経費(損金)を増やすことです。
例えば、給料が25日締めの小規模会社の場合、26日~月末までの給料は支払うことが確定していますが、お金を支払っていないため経費(損金)に計上していないことが多いです。
また、厚生年金保険料や健康保険料の会社負担部分の引き落としは1か月後に確定するので、小規模会社の場合、支払日に経費(損金)計上していることが多いです。
これらは期末日に以下の仕訳をすることで、経費(損金)に計上することが出来ます。
【給料の未払額の計上】
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
給料手当 | 30万円 | 未払費用 | 30万円 |
【厚生年金・健康保険の未払額の計上】
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
法定福利費 | 10万円 | 未払費用 | 10万円 |
節税対策のまとめ
節税対策に優劣はないので、実行できる節税対策があれば実行していきましょう。
ただし、経営者は節税対策の効果を事前に把握しておくべきです。
よくある事例として、節税対策をしてみたけど、実態がないので税務署に否認されたり、税金の支払いを遅らせることには成功したけど、節税対策の実行に諸経費が掛かってしまい、返ってお金を失ってしまったという結論になることです。
巷では、色々な節税対策が提案されており、中には胡散臭いものも多いですが、無理のない範囲で怪しくないものだけを行ってください。
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