大家(賃貸人)が入居者から受け取った敷金は、原則として「預り金」という負債で処理し、売上には計上しません。いずれ返すお金を一時的に預かっているだけだからです。
一方で、礼金や、返さないと決まった敷金(敷金償却)は、賃貸業の本業の収入として売上高(賃貸収入)に計上します。さらに、これらに消費税がかかるかどうかは「居住用か事業用か」で変わります。
この記事では、大家側の敷金・保証金・礼金について、勘定科目・具体的な仕訳例・消費税の判定を、初めて記帳する方にもわかるように整理します。ポイントは預り金(=あとで返すために一時的に預かったお金を表す負債の科目)の扱いです。
大家が受け取る敷金・礼金の勘定科目【結論一覧】
受け取ったお金の勘定科目は「返す約束があるかどうか」で決まります。返すなら預り金、返さないなら売上(賃貸収入)です。
まず、よく出てくる4つの言葉を整理します。
- 敷金
-
家賃の滞納や退去時の修繕に備えて預かる担保金。原則としてあとで返します。
- 保証金
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敷金とほぼ同じ性質の預かり金。関西地方や事業用物件で使われる名目です。
- 礼金
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入居のお礼として受け取り、返さないお金です。
- 更新料
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契約を更新するときに受け取り、返さないお金です。
受取時の勘定科目と消費税をまとめると、次のとおりです。
| 項目 | 返還の有無 | 受取時の勘定科目 | 消費税(居住用) | 消費税(事業用) |
|---|---|---|---|---|
| 敷金・保証金 (返す部分) | 返す | 預り金 (実務では預り敷金・預り保証金) | 対象外 | 対象外 |
| 敷金・保証金 (返さない部分=償却) | 返さない | 売上高(賃貸収入) | 非課税 | 課税 |
| 礼金 | 返さない | 売上高(賃貸収入) | 非課税 | 課税 |
| 更新料 | 返さない | 売上高(賃貸収入) | 非課税 | 課税 |
それぞれ、具体的な仕訳例とあわせて以下で解説します。
敷金(保証金)とは?預り金として扱う理由
敷金(保証金)は預かっているだけのお金なので、受け取っても売上にはなりません。
敷金(保証金)とは、入居者が家賃を滞納したときや、退去時に部屋を壊したときに備えて、契約時に大家が担保として預かるお金です。多くの契約で、退去時に返すことが決められています。たとえば敷金20万円を預かっても、それは大家の儲けではなく、いずれ返す可能性があるお金です。
だから会計では、収益ではなく預り金(負債)として記録します。なお実務では、ほかの預り金と区別するために「預り敷金」や「預り保証金」という科目名で登録することが多いです。いずれも預り金(負債)の一種で、考え方は同じです。
礼金とは?受取時に売上(収益)となる理由
礼金は返す必要がないお金なので、受け取った時点で売上(賃貸収入)になります。
礼金とは、入居のお礼として入居者が大家に支払うお金で、退去時に返還する義務はありません。家賃の前払いのような性格を持ち、受け取った時点で大家の収入として確定します。
そのため、敷金と違って預り金ではなく売上高(受取家賃などの賃貸収入)で計上します。更新料も「返さないお金」なので同じ考え方です。
敷金を返還する場合の仕訳【具体例】
返す敷金は預り金で受けて、返すときに預り金を取り消すだけで、売上や費用には一切影響しません。
例:入居時に敷金10万円を普通預金で受け取り、退去時に全額を返金した(科目は実務に合わせ「預り敷金」としています)。
| 時点 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 敷金の受取時 | 普通預金 | 10万円 | 預り敷金 | 10万円 |
| 敷金の返還時 | 預り敷金 | 10万円 | 普通預金 | 10万円 |
登場する科目は普通預金(資産)と預り敷金(預り金=負債)だけで、売上は出てきません。預かって返しただけだからです。
敷金を返還しない場合(敷金償却)の仕訳【具体例】
返さないと決まった敷金は、その時点で預り金から売上高(賃貸収入)へ振り替えます。
敷金償却(=契約で敷金の一部または全部を返さないと決めること)がこれにあたります。収益に計上するのは「返還しないことが確定した時点」です。確定する時期は契約によって異なり、入居時に確定する契約(敷引き・入居時償却)では入居時に、退去時に金額が確定する契約では退去時に振り替えます。関西などで多い「敷引き」は、契約時点で返さない金額が決まっているため、入居時に収益とするのが原則です。
例:敷金20万円を預かり、退去時に契約に基づき5万円を返金せず償却(残り15万円は返金)した。
| 時点 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 敷金の受取時 | 普通預金 | 20万円 | 預り敷金 | 20万円 |
| 退去・償却確定時 | 預り敷金 | 5万円 | 売上高(賃貸収入) | 5万円 |
| 残額の返還時 | 預り敷金 | 15万円 | 普通預金 | 15万円 |
返さない敷金(償却額)は権利の対価とされ、事業用建物なら消費税の課税対象になります。居住用住宅なら非課税です(国税庁 No.6225)。
礼金の仕訳と勘定科目【具体例】
礼金は受け取った時点で全額を売上高(賃貸収入)に計上します。
例:居住用アパートで礼金10万円を普通預金で受け取った。
| 時点 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 礼金の受取時 | 普通預金 | 10万円 | 売上高(賃貸収入) | 10万円 |
居住用なので消費税は非課税です。事業用物件の礼金であれば、課税売上として処理します。なお礼金や敷金償却は賃貸業の本業収入なので、雑収入ではなく売上高(受取家賃などの賃貸収入)で計上するのが原則です(個人の不動産所得では賃貸料収入に含めます)。
本記事は受け取る大家側の処理です。一方、建物を借りる側(借主)が支払う礼金・権利金など20万円以上のものは、税務上の繰延資産となり、原則5年(契約期間が5年未満で更新時に再び支払うことが明らかな場合はその期間)で償却します。20万円未満は一時の損金にできます(国税庁 No.5460)。
なお、返還される敷金は繰延資産ではありません。借主側の具体的な処理はオフィス等の賃借時の敷金(保証金)・礼金の勘定科目と消費税で解説しています。
敷金・礼金・更新料の消費税(居住用と事業用の課税判定)
消費税がかかるかどうかは、「居住用か事業用か」と「返すか返さないか」の2点で決まります。
国税庁の取り扱いを整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 居住用(住宅) | 事業用(店舗・事務所) |
|---|---|---|
| 家賃・共益費 | 非課税 | 課税 |
| 返す敷金・保証金 | 不課税(対価なし) | 不課税(対価なし) |
| 返さない敷金(償却) | 非課税 | 課税 |
| 礼金・更新料(返還なし) | 非課税 | 課税 |
住宅の貸付けは非課税で、返さない敷金・礼金もこれに含まれます(国税庁 No.6226)。事業用建物で返さない敷金・権利金・礼金・更新料は課税対象です(国税庁 No.6225)。
大家の敷金・礼金の会計処理でよくある間違いと注意点
敷金まわりの記帳ミスは「預り金を売上にしてしまう」「償却の収益計上を忘れる」の2つに集中します。
① 預かった敷金を売上に計上してしまう…返す敷金は預り金(預り敷金)です。売上にすると利益と税金を過大に計上してしまいます。
② 敷金償却の収益計上を忘れる…返さないと確定した分は、売上高(賃貸収入)へ振り替える必要があります。
③ 居住用と事業用の消費税判定を混同する…同じ建物でも、用途によって課税・非課税が分かれます。
迷ったら、まず「返すお金か・返さないお金か」を確認するのが間違いを防ぐコツです。
まとめ|敷金を受け取ってから精算までの仕訳手順
大家の敷金処理は「返すお金は預り金、返さないお金は売上」で判断するのが基本です。基本となる受取→預り金で保管→退去時に返還・償却を判定→振替の流れを、次の手順で確認しましょう。
受け取った敷金は原則として全額を預り金(実務では預り敷金)で計上します。ただし、契約で入居時に償却・敷引き分の返還不要が確定している場合は、その分だけ受取時に売上へ計上し、残りを預り金とします。
預り金として残し続けます。損益(売上・費用)には影響させません。
契約に基づき、返す金額と返さない金額(償却)を計算します。
返さない分を売上高(賃貸収入)へ振り替えます。事業用なら消費税の課税区分にも注意します。
残りの預り金を入居者に返金して精算完了です。
礼金は受取時に売上、敷金は預り金(預り敷金)で受けて返さない分だけ収益、と覚えておくと実務で迷いません。
よくある質問
- 大家が受け取った敷金は売上に計上しますか?
-
返還する敷金は預り金(負債)で処理し、売上には計上しません。返さないと確定した分だけを売上高(賃貸収入)へ振り替えます。
- 敷金償却の勘定科目は何を使いますか?
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返金しないと確定した時点で「預り金(預り敷金)」を取り崩し、「売上高(受取家賃などの賃貸収入)」へ振り替えます。賃貸業の本業収入なので、雑収入ではなく売上高で計上するのが原則です。
- 居住用アパートの礼金に消費税はかかりますか?
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居住用住宅の礼金は非課税です。店舗・事務所など事業用物件の礼金は課税対象になります。
- 預り金と預り敷金、どちらの科目名で登録すべきですか?
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どちらでも会計上は問題ありませんが、実務では「預り敷金」「預り保証金」という科目名で登録することが多いです。ほかの預り金と区別でき、管理しやすくなるためです。


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