会社が役員からお金を借りたり、会社の費用を役員が立て替えていたりすると役員借入金が発生することになります。
この役員借入金ですが、役員から見れば、貸付金又は未収入金と判断されるため相続財産になります。
よって、相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える相続財産がある場合には、役員が死亡するまでに役員借入金を減少又は消滅させることが好ましいです。
今回は、役員借入金を減少又は消滅させる方法の1つである代物弁済について解説していきます。
役員借入金を減少又は消滅させるための方法
役員借入金を減少又は消滅させる方法としては以下の5つがあります。
- 債権放棄
- 債権の贈与
- 代物弁済
- 債権の資本化
- 会社の閉鎖
不動産を所有する会社の場合、代物弁済で役員借入金を減少・消滅させる方法は有効になります。
代物弁済を行った時の仕訳と税務上の課税関係
まずは、役員借入金を減少・消滅させるために代物返済を行った時の仕訳と税務上の課税関係を確認していきましょう。
注意点について
代物弁済で役員借入金を減少・消滅させる方法を採用する場合の注意点は以下の2つになります。
- 会社が代物弁済で役員に引き渡す不動産の時価
- 代物弁済を行う時期
会社が代物弁済で役員に引き渡す不動産の時価
消滅する役員借入金が代物弁済で引き渡される不動産の時価の50%未満の場合は消費税の取り扱いが非常に厳しくなります。
本来ならば、上記の設例でも解説した通り、代物弁済による消費税の課税対象は役員借入金の消滅額になります。
しかし、消滅する役員借入金が代物弁済で引き渡される不動産の時価の50%未満の場合は、消費税の課税対象は不動産の時価になります。
例えば、消滅する役員借入金が5,000万円で代物弁済で引き渡される不動産の時価が1億2,000万円ならば、5,000万円ではなく、1億2,000万円が消費税の課税対象になってしまうので注意が必要です。
代物弁済を行う時期
前述の設例では、役員賞与のため損金(費用)にならない旨を記載しました。
しかし、役員の退職に伴い、代物弁済をしたのであれば、役員賞与ではなく、役員退職金になるので、不相当に高額な部分がなければ、損金(費用)に算入できます。
前述の設例の仕訳ならば、役員賞与3,000万円(≠損金)が役員退職金3,000万円(=損金)に変わり、役員退職金3,000万円を固定資産売却益2,000万円(益金)と相殺しても、1,000万円の追加損金(費用)が発生したことになり、節税対策としては抜群です。
よって、代物弁済で役員借入金を減少させる時期は、役員の退職時に狙いを定めるのが良いでしょう。
まとめ
代物弁済により役員借入金を減少・消滅させる方法の説明は以上になります。
ただし、法人税等・消費税以外にも、代物弁済を行うと不動産取得税と登録免許税(登記に必要な税金)が追加で発生してしまうというデメリットが生じます。
それでも、代物弁済を受けて、役員の所有になった不動産については、小規模宅地等の特例が利用できたり、賃貸収入を生んで老後の生活資金の糧になったりメリットが大きいものでもあります。
是非、役員借入金を減少・消滅させるための手段の候補として代物返済があることを覚えておいて頂けると良いかなと思います。
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