相続税の申告期限について
小規模宅地等の特例を適用するためには、相続税の申告を行うことが必要になります。
この相続税の申告には、期限内申告だけでなく、期限後申告や修正申告も含まれます。
よく議論になるのが、小規模宅地等の特例を適用すれば、相続財産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の人数)を下回り、税務署に納める相続税が発生しなくなる場合ですが、この場合でも、小規模宅地等の特例を適用するために相続税の申告を行うことが必要になります。
ただし、期限後申告でも小規模宅地等の特例を適用出来てしまうため、税理士によっては相続税の申告を保留しようと提案してくることもあります。
相続税の申告を留保した場合、申告期限から5年が経過し、税務署長の決定処分ができる期間を経過すれば、小規模宅地等の特例を受けるための申告事体が必要なくなります。
宅地等の分割が確定していること
小規模宅地等の特例を適用するためには、相続税の申告期限までに小規模宅地等の特例の対象となる宅地等(土地・借地権・配偶者居住権など)が分割されていることが条件になります。
従って、遺産分割協議が確定していないと、小規模宅地等の特例を適用することができなくなります(相続人が1人の場合を除く)。
ただし、税務署に提出する当初申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し、申告期限から3年以内に分割が確定した時は小規模宅地等の特例を適用できることになります。
なお、この場合には、分割が行われた日から4か月以内に相続税の更生の請求書を税務署に提出することが必要になります。
3年以内に分割が出来ない場合
申告期限後3年以内の分割見込書を税務署に提出しても、3年以内に分割が出来ない事態もあります。
その場合、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」にその根拠書類を添付して、相続税の申告期限後3年を経過する日の翌日から2カ月以内に税務署に提出することになります。
なお、根拠資料とは以下の事由が生じ、分割が出来ない状況にあることを証明する資料になります。
- 相続又は遺贈に関し訴えの提起がされていること
- 相続又は遺贈に関し和解、調停又は審判の申し立てがされていること
- 相続又は遺贈に関し遺産分割の禁止、相続の承認若しくは放棄の期間が伸長されていること
また、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」は必ず期日までに提出する必要があります。
提出期限を1日でも過ぎると、分割確定後に小規模宅地等の特例の適用が出来なくなります。
相続から非常に長い期間が経過しているので、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」は提出自体が忘れられてしまう書類になりますので十分に注意しておきましょう。