- 不動産賃貸業を営む個人事業主のために「確定申告をする意味とは?」、「確定申告を青色申告で行うとどんなメリットがあるのか?」を説明しています。
確定申告をする意味について
個人事業主は、確定申告についてしっかり理解しておかないと後々大変な目に会います。
確定申告書を期限通りに提出していないと、以下の関係先との間で、問題になる可能性が生じます。
税務署との関係
個人事業主は、所得税、住民税、事業税等の納税義務を負います。
所得税、住民税、事業税は、個人事業主自身が確定申告書を作成し、税務署に確定申告書を提出後、納税するという申告納税制度を採用しています。
よって、所得(≒利益)が年間20万円以上ある個人事業主は、必ず確定申告を行わなければなりません。
もし所得(≒利益)があるのに確定申告をしていないと、何年も遡って追徴課税される恐れがあります。
銀行との関係
銀行融資との関係でも個人事業主は確定申告をしないといけません。
銀行から融資を受ける際には、確定申告書と決算書のコピーの提出を求められるのですが、個人事業主が税務署に確定申告書を提出した時にもらえる税務署側の日付印がないと、その確定申告書は正式書面とは認めらないため、銀行は受け取ってくれません。
銀行融資の審査に必要になる書類を受け取ってくれないということは、当然融資を受けることが絶望的になるということです。
賃貸人(大家)との関係
事務所を借りるときにも、申込者(賃借人予定者)は、確定申告書と決算書のコピーを賃貸人(大家)に提出することになります。
銀行の融資の審査と同じように、税務署の日付印がない確定申告書と決算書を申込者(賃借人予定者)が提出してきたら、正式書面と認められないため、賃貸人は審査できません。
よって、申込者(賃借人予定者)は事務所を借りることはできなくなります。
申告をする際には納税も忘れずに行おう!
確定申告は確定申告書と決算書を税務署の窓口に提出して終わりではありません。
必ず確定申告書で計算した納税額を税務署に支払って終わりになります。
よくある事例として、確定申告書と決算書を税務署の窓口に提出しただけで、帰ってきてしまうケースです。
納税額がある場合で、口座振替の指定などをしていない場合は必ず税務署の窓口で納税額の支払いまで行ってきてください。
個人事業主の確定申告は必ず青色申告にしよう
青色申告とは、一定水準の記帳(≒記録)をし、その記帳に基づいて正しい確定申告をすることです。
一定水準の記帳については、市販の会計ソフト(やよいの青色申告やFreee)を購入し、マニュアル通りに入力すれば、簡単にできてしまいます。
正しい確定申告については、国税庁のホームページで「確定申告書作成コーナー」というシステムがありますので、そちらに必要情報を入力できれば、自動的に正しい確定申告が出来てしまいます。
つまり、個人事業主が青色申告をすることをすることは全く難しくないということになります。
不動産賃貸業を営む個人事業主の方は是非青色申告に挑戦してください。
不動産賃貸業での青色申告の特典について
青色申告をすると様々な特典がありますが、不動産賃貸業で享受できる主なメリットは以下の4つでしょう。
項目
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内容
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青色申告特別控除 | 所得から10万円の控除が出来るため、仮に所得税率が30%ならば、納税額が3万円安くなります。 なお、5棟10室以上の部屋数がある場合は所得から65万円の控除が出来るため、所得税率が30%ならば、納税額が20万円ほど安くなります。 |
青色事業専従者給与 | 5棟10室以上の部屋数がある場合に限られますが、配偶者や親族に支払った給料が経費に計上できるようになります。 |
純損失の繰越控除 | 赤字が出た翌年から3年間は、赤字を繰り越して、黒字と相殺できます。 |
減価償却の特例 | 30万円未満の固定資産の取得までは消耗品費として経費に計上できます。 |
青色申告をするためには期限がある
個人事業主が青色申告をするためには税務署に対して事前申請をしなければなりません。
この事前申請を怠ると青色申告をすることができなくなり、上記のような4つの特典を受けることができなくなります。
不動産賃貸業を個人事業主として営んでいる場合には、上記の特典が使えなくなることは、ほぼ実質的な増税を意味することになりますので、必ず事前申請はきちんとおこなっておきましょう。
事前申請の方法としては、青色申告承認申請書を青色申告をしようとする年の3月15日までに税務署に提出するだけです。
なお、5棟10室以上の部屋数がある個人事業主で配偶者や親族に給料を支払う予定の方は一緒に青色事業専従者給与に関する届出書も税務署に提出しておきましょう。