決算書の利益の作り込みと銀行融資のための格付けの関係について!
この記事の対象者
  1. 銀行融資を受けるために銀行側の格付け方法を知りたい
  2. 不動産賃貸業を営む上での銀行融資の注意点を知りたい

不動産賃貸業を行うためには物件を取得するために銀行から借り入れを行うことが必須条件になります。

そうであるならば、不動産賃貸業を行っている人(これから不動産賃貸業を行う予定の人も含む)は最低限の借入れの知識を知っていなければならないでしょう。

今回は銀行が融資を行う際に最も重視する格付けについての説明です。

格付けは決算書を中心に行われている

事業主が銀行から融資を受ける際に、銀行側では事業主に対して格付けを行います。

その格付けによって、銀行はお金を貸すか貸さないか、金利をどの程度要求するかを決めることになります。

つまり、事業主の格付けが悪いと金利が上がったり、場合によっては融資自体を受けられないことになります。

よって、不動産賃貸業を営む際には、銀行から融資を受けられる格付けを最低でもしてもらわないといけません。

では、銀行による格付けはどのように決められているのでしょうか?

銀行による格付けの基本的な考え方については「金融検査マニュアル」に記載されており、主に事業主が作成した決算書に基づいて判断されることになります。

つまり、決算書を通して事業主が開示した利益や財産などの定量的な情報に基づいて格付けは評価されることになります。

正常先か要注意先に格付けされなければならない

ここからは銀行の格付け方法について見ていきましょう。

銀行はまず信用格付けを行います。

この信用格付けを元に以下の6つの債務者区分を決定します。

ただし、不動産賃貸業を行う上では、上の3つ(正常先・要注意先・要管理先)だけを覚えておけば十分でしょう。

区分 内容
①正常先 業況が良好であり、かつ、財務内容にも特段の問題がないと認められる債務者。
②要注意先 金利減免・棚上げを行っているなど貸出条件に問題のある債務者、元本返済若しくは利息支払いが事実上延滞しているなど履行状況に問題がある債務者のほか、業況が低調ないしは不安定な債務者又は財務内容に問題がある債務者など今後の管理に注意を要する債務者。
③要管理先 要注意先の債務者のうち、当該債務者の債権の全部又は一部が「要管理債権」である債務者
なお、「要管理債権」とは、3ヶ月以上の延滞となっている融資、もしくは貸出条件緩和債権である融資のことです。
④破産懸念先 現状、経営破綻の状況にはないが、経営難の状態にあり、経営改善計画等の進捗状況が芳しくなく、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者。
⑤実質破綻先 法的・形式的な経営破綻の事実は発生していないものの、深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しがない状況にあると認められるなど実質的に経営破綻に陥っている債務者。
⑥破綻先 法的・形式的な経営破綻の事実が発生している債務者をいい、例えば、破産、清算、会社整理、会社更生、 民事再生、手形交換所の取引停止処分等の事由により経営破綻に陥っている債務者。

上から銀行にとって格付けの良い会社になるのですが、2番目の要注意先までが新規融資を受けられる可能性がある格付けになります。

3番目の要管理先からは新規融資を受けることができません

要管理先以降は一気に貸倒れリスクが高まるため、銀行側に旨味がなくなるからです。

よって、事業主が不動産賃貸業を営んでいこうとするのなら、必ず①正常先か最低でも②要注意先に属していないといけないことになります。

格付けをよくするためにはどうしたら良いか?

最初にお話ししたように格付けは主に決算書の数値で決まってしまいます。

決算書の数字で決まった格付けを後から定量的な情報(あなたの能力・市場の将来性や成長性・あなたの営業力など数値にできない情報)で修正しますが、影響は微々たるものです。

また、当然ながら銀行内の評価者の違いで数値の見かたが変わってしまっても問題なので、銀行側では一定のスコアリングモデルを構築して事業主の評価(=格付け)を決めます。

このスコアリングモデルですが、必ずしもあなたの利益だけを評価しているのではなく、①安全性、②収益性、③成長性、④債務返済能力などを評価してスコアリングをしています。

細かく突き詰めると非常に難しくなるので、簡単に言うと、きちんと毎期利益を計上して、それがきちんと留保されてお金を持っていれば格付けが良くなるということです。

さらに言えば、毎期最高益を出しているような、つまり、不動産賃貸業ならば、毎期安定物件を着実に増やしているような経営者ほど良い格付けになるということです。

利益を計画的に作り込んでいくことが重要になる

ここまでの話しだと、「格付けが良い方が融資を受ける際に交渉が楽だし、なにより金利が低くなるから、是非頑張って利益を上げよう。」ということになるでしょう。

ただ、よく考えると不動産賃貸業を営む事業主の最終目的は、投資を通して沢山のお金を手元に残すことであり、利益をたくさん計上して、融資を受けるための格付けを上げることではありません。

そうであるならば、多額の利益を計上することにより納税額が増加するデメリットと格付けが上昇するメリットを比較検討して経営を行っていくとこが重要になるでしょう。

融資のための格付けは良いに越したことはありませんが、何より大事なことは節税対策も含めて利益を計画的に作り込んでいくことになります。