遺言書と異なる遺産分割をした場合の相続税法上の効力について

遺言書の種類について

遺言書の種類には自筆証書遺言(自分で作成する遺言書)、公正証書遺言(公証役場で作成する遺言書)、秘密証書遺言(遺言の内容を誰にも秘密にしたい場合の遺言書)があります。

自筆証書遺言では、被相続人(亡くなった人)の死後に相続人によって偽造される恐れがありますので、相続税法上の小規模宅地等の特例が絡むような財産を保有している場合は、よほどのことがない限り公正証書遺言を作成しておくことが望ましいでしょう。

秘密証書遺言は遺言の内容を秘密にしたい場合以外には使われない形式で利用件数は年間100件程度と非常に少なくなっています。

遺言書の種類と相続税の観点から見た場合の各遺言書のメリット・デメリットを以下に記載しておきます。

種類
メリット
デメリット
自筆証書遺言
  • 遺言書の存在と内容を秘密にできる
  • 費用がかからない
  • 形式を満たさない場合、効力が無くなる場合がある
  • 偽造される恐れがある
公正証書遺言
  • 形式を満たすため法的効力が必ずある
  • 偽造される恐れがない
・遺言書の存在を秘密にできない
・費用がかかる
秘密証書遺言
  • 遺言の内容を秘密にできる
  • 遺言の存在は公証人などが立ち会うため担保されるが、内容は被相続人以外確認していないので、無効になることや争いが起きることがある
  • 費用と手間がかかる

遺言書と異なる遺産分割をした時の効力

遺言書がある場合でも、遺言書と異なる遺産分割をすることは、民法上も認められているので、相続税法上も問題ないと考えられます。

例えば、長男が父親の事業をすべて承継するため、長男だけに全財産を相続させる遺言書を父親が作成していたとします。

父親が亡くなり、遺産分割協議で長男も含め相続人全員が遺言書の内容と異なる遺産分割に合意し、遺産分割協議書を作成した場合には、長男は父親からの遺贈を放棄したものとして扱われます

よって、遺産分割協議書の内容に基づき相続税の申告をすることになります。

なお、この場合、相続人間で贈与税の課税関係が生じることもありませんし、小規模宅地等の特例を適用することに影響を及ぼすこともありません