公認会計士・税理士事務所を10年経営してきた知識と、自分自身が実際に不動産業務に関わってきた経験を活かして、「不動産業を営む小規模会社の経理・税務マニュアル」をまとめています。
今回は、小規模会社にかかる税金の種類を一覧形式でわかりやすく解説していきます。
本記事は不動産業に限らず、従業員10名未満の小規模会社すべてに関係する内容です。経営者・経理担当者・これから起業を考えている方にも役立つ内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事でわかること
- 小規模会社にかかる8種類の税金・社会保険料の全体像
- 各税金の申告期限・免税点・特例のポイント
- 経理事務を減らしつつ節税につながる実務上のコツ
小規模会社の経理・税務における3つの目標
小規模会社は大企業と違い、経理・税務業務に多くの人員を割くことができません。だからこそ、限られたリソースの中で次の3つを同時に達成することが目標になります。
特例制度を活用して、毎月の事務処理を最小化する。
軽減税率や免税点を漏れなく適用し、無駄な納税を防ぐ。
申告漏れや計算ミスによる加算税・延滞税を回避する。
これらを達成する第一歩が、自社にかかる税金の種類を正しく把握することです。各税金には免税点や特例が設定されており、ルールを把握しておくだけで作業量も税額も大幅に削減できます。
社会保険料は厳密には税金ではありませんが、強制徴収される点・会社負担が発生する点で実質的に税金と変わらないため、本記事では一緒に解説します。
小規模会社にかかる税金・社会保険料の全体像
まずは全体像を把握しましょう。小規模会社にかかる主な税金・社会保険料は、次の8種類です。
| 区分 | 税金・保険料の種類 | 申告・納付期限 |
|---|---|---|
| 国 税 | 法人税 | 事業年度終了の翌日から2か月以内 |
| 消費税 | 事業年度終了の翌日から2か月以内 | |
| 源泉所得税 | 原則:翌月10日 / 特例:年2回 | |
| 地方税 | 法人住民税 | 事業年度終了の翌日から2か月以内 |
| 法人事業税 | 事業年度終了の翌日から2か月以内 | |
| 固定資産税(償却資産) | 毎年1月31日まで | |
| 社会保険料 | 労働保険・雇用保険 | 毎年6/1〜7/10 |
| 厚生年金・健康保険 | 算定基礎届:毎年7/10まで |
各税金・社会保険料の詳細解説
① 法人税
法人税は、会社の所得(利益)に対して課される国税です。期中の取引記録に基づき、事業年度終了の翌日から2か月以内に税務署へ申告・納付します。
小規模会社にとって特に重要なのが、中小法人に対する軽減税率の特例です。資本金1億円以下の中小法人は、所得のうち年800万円以下の部分について、本来19%の税率が15%に軽減されます(租税特別措置法)。
| 区分 | 所得区分 | 税率 |
|---|---|---|
| 中小法人(資本金1億円以下) | 年800万円以下の部分 | 15%(軽減税率) |
| 中小法人(資本金1億円以下) | 年800万円超の部分 | 23.2% |
| 普通法人 | 全所得 | 23.2% |
軽減税率の適用を受けるには、申告書とあわせて「適用額明細書」の提出が必須です。提出を忘れると軽減税率が適用されず、本来より高い税額となるため必ず添付してください。
② 法人住民税
法人住民税は、会社が所在する都道府県・市区町村に納める地方税です。事業年度終了の翌日から2か月以内に地方自治体へ申告します。
小規模会社が必ず押さえておくべきポイントは、赤字でも最低7万円(均等割)の支払い義務があることです。法人住民税は「法人税割」と「均等割」の2つで構成されており、均等割部分は所得の有無に関係なく課税されます。
つまり、会社を設立して活動している限り、毎年最低7万円の納税が発生すると覚えておきましょう。
③ 法人事業税
法人事業税は、会社が事業活動を行うことに対して都道府県が課す地方税です。事業年度終了の翌日から2か月以内に申告します。
実務上のポイントは、事業税の申告書は法人住民税の申告書と一体化していること。地方自治体へは1つの申告書で両方を申告・納付できます。なお、赤字決算の場合、事業税は原則として課税されません(外形標準課税対象法人を除く)。
④ 消費税
消費税は、次のいずれかに該当する場合に申告義務が発生します。
- インボイス制度に登録している(適格請求書発行事業者である)
- 2年前(基準期間)の課税売上高が1,000万円超である
- 資本金が1,000万円以上である(設立1〜2期目の特例)
申告・納付期限は、事業年度終了の翌日から2か月以内です。
還付を受けたい場合のポイント
消費税の申告義務がなくても、「消費税課税事業者選択届出書」を前年度末までに提出すれば課税事業者になれます。設備投資など多額の支出があり赤字幅が大きい年度は、消費税が還付される可能性があるため検討する価値があります。
なお、インボイス制度開始に伴い免税事業者から課税事業者になった事業者には、「2割特例」(納税額を売上消費税額の2割に軽減)も利用可能です(経過措置)。
⑤ 固定資産税
固定資産税には、対象資産によって次の2種類があります。
| 種類 | 対象資産 | 申告の要否 | 免税点 |
|---|---|---|---|
| 土地・建物に対する固定資産税 | 土地、建物 | 不要(自治体が計算・通知) | 土地30万円 / 家屋20万円 |
| 償却資産に対する固定資産税 | 事業用エアコン、看板、舗装、機械装置など | 必要(1月31日まで) | 150万円未満 |
土地・建物の固定資産税は自治体側で計算し納付書を郵送してくれますが、償却資産税は会社側で毎年1月31日までに申告しなければなりません。
償却資産の合計額が免税点(150万円)未満で納税額が発生しない場合でも、申告書の提出は必要です。無申告には過料が科される自治体もあるため必ず申告しましょう。
⑥ 源泉所得税
従業員の給料や、税理士・司法書士・弁護士などの報酬を支払う際、会社は所定の金額を源泉徴収し、従業員や専門家に代わって税務署に納付する必要があります。これが源泉所得税です。
原則として、源泉徴収した日の翌月10日までに納付しますが、小規模会社にとって極めて重要な特例があります。
源泉所得税の納期の特例
給与の支給人員が常時10人未満の事業者は、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を事前に税務署へ提出することで、源泉所得税の納付を年2回(7月10日・1月20日)にまとめることができます。
出典:国税庁「No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例」
| 区分 | 納付回数 | 納付期限 |
|---|---|---|
| 原則 | 年12回 | 翌月10日 |
| 納期の特例適用後 | 年2回 | 1〜6月分:7月10日 7〜12月分:翌年1月20日 |
中小企業の場合、納期の特例を活用することで年10回分の納付事務を削減できるため、必ず申請しましょう。
⑦ 労働保険(労災保険・雇用保険)
役員を除く従業員が1名以上いる場合、会社は労働保険(労災保険・雇用保険)への加入義務があります。
加入後は毎年、「労働保険概算・確定保険料/石綿健康被害救済法一般拠出金申告書」を作成し、毎年6月1日〜7月10日の間に所轄都道府県労働局および労働基準監督署へ提出します(年度更新)。
従業員を雇う前に必ず認識すべきこと
従業員0名→1名になるタイミングは、経理・税務業務の負担が大きく増えるポイントです。労働保険の手続き、給与計算、年末調整、源泉徴収など事務作業が一気に増えるため、覚悟を持って従業員を雇用してください。
⑧ 厚生年金・健康保険
会社で働く人(役員を含む)が1名以上いる場合、厚生年金・健康保険への加入義務があります。
加入後は、毎年6月中旬に日本年金機構から送付される「算定基礎届」を、7月10日までに事務センターまたは管轄の年金事務所へ提出します。
労働保険と異なる重要な点は、役員にも厚生年金・健康保険の加入義務があることです。ただし例外として、役員報酬が0円の間は加入義務がありません。設立直後で役員報酬を取らない場合は、加入手続きが不要となります。
まとめ:特例を活用して事務負担と税負担を最小化しよう
今回は、小規模会社にかかる8種類の税金・社会保険料について解説しました。最後に、本記事の重要ポイントをまとめます。
📌 この記事のまとめ
- 法人税は年800万円以下の所得に15%の軽減税率(適用額明細書の提出必須)
- 法人住民税は赤字でも最低7万円の均等割が発生
- 消費税はインボイス登録・売上1,000万円超・資本金1,000万円以上で申告義務
- 償却資産税は150万円未満は非課税だが申告は必要
- 源泉所得税は納期の特例で年2回にまとめられる(従業員10人未満)
- 従業員0名→1名で社会保険・労働保険の事務が一気に増える
各税金の免税点や特例制度を正しく理解し活用することで、経理事務の作業量と税負担の両方を削減できます。まずは自社にかかる税金の全体像を押さえることが、健全な会社経営の第一歩です。


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