「銀行から融資を受けたけど、どうやって帳簿に記録すればいい?」
借入金の経理処理は、借入の種類によって仕訳がまったく異なります。間違えると決算書の数字がズレてしまうため、正しい処理を押さえておくことが重要です。
この記事では、公認会計士・税理士として10年以上の実務経験と不動産業務への関与をもとに、借入金の2種類の違いと、それぞれの仕訳例をわかりやすく解説します。不動産業に限らず、従業員10名未満の小規模会社であれば業種を問わず参考にしていただける内容です。
借入金の種類|経理処理の前に必ず確認しよう
経理処理の前にまず確認すべきことは、融資が「手形借入」か「証書借入」のどちらかという点です。種類が違えば勘定科目も仕訳の流れも変わります。
| 種類 | 借入期間 | 返済方法 | 勘定科目 |
|---|---|---|---|
| 手形借入 | 1年以内(短期) | 期間満了後に一括返済 | 短期借入金 |
| 証書借入 | 1年超(長期) | 毎月元本+利息を分割返済 | 長期借入金 |
手形借入とは
手形借入とは、会社が銀行に約束手形を担保として振り出し、1年以内の短期融資を受ける方法です。
特徴は、融資額からあらかじめ借入期間分の利息が差し引かれた金額が振り込まれる点です。借入期間が終わったら、利息を引かれる前の額面金額を一括で返済します。
証書借入とは
証書借入とは、銀行と金銭消費貸借契約書を締結して、1年超の長期融資を受ける方法です。
手形借入と違い、利息の先引きはなく、額面金額がそのまま振り込まれます。その後、銀行から受け取る「返済予定表」をもとに、毎月元本と利息を分割で返済していきます。
手形借入の経理処理|仕訳を3ステップで解説
手形借入の仕訳は、①借入時・②決算時・③返済時の3つのタイミングで発生します。
【設例】12月末決算の会社が、6月末に3,000万円を金利2%で1年間、手形借入した場合
※先引き利息:3,000万円 × 2% ÷ 12か月 × 10か月 = 約50万円(設例上の数値)
①借入時の仕訳
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 2,950万円 | 短期借入金 | 3,000万円 |
| 前払費用 | 50万円 |
借入期間が1年以内なので、負債は短期借入金で処理します。
先引きされた利息50万円は、まだ費用として確定していないため、前払費用(資産)として計上します。費用の前払い分は資産として持っておき、期間の経過とともに費用に振り替えていくのが会計上のルールです。
②決算時(12月31日)の仕訳
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払利息 | 25万円 | 前払費用 | 25万円 |
12月末の決算時に、当期(7月〜12月)の6か月分に対応する利息を前払費用から支払利息(費用)に振り替えます。
計算式:50万円 × 6か月 ÷ 12か月 = 25万円
③返済時の仕訳
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 短期借入金 | 3,000万円 | 普通預金 | 3,000万円 |
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払利息 | 25万円 | 前払費用 | 25万円 |
返済時は、短期借入金3,000万円を普通預金から支出します。あわせて、前払費用に残っていた翌期分(1月〜6月)の利息25万円を支払利息に振り替えて、前払費用の残高をゼロにします。
【節税のポイント】短期前払費用の特例
手形借入が法人税上の「短期前払費用」の要件を満たす場合、借入時に利息の全額を支払利息として一括計上できます。翌年度分の利息を先取りで経費にできるため、支払利息の金額が大きいほど節税効果が高くなります。ただし要件の判定は複雑なため、実行する際は必ず税理士に相談しましょう。
証書借入の経理処理|仕訳を2ステップで解説
証書借入の経理処理では、銀行から受け取る「返済予定表」が必須です。毎月の返済額が「元本」と「利息」に分けて記載されているため、これを見ながら仕訳を行います。
①借入時の仕訳
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 3,000万円 | 長期借入金 | 3,000万円 |
借入期間が1年超のため、負債は長期借入金で処理します。手形借入と異なり利息の先引きはないため、受け取った金額がそのまま借入金の金額になります。
②毎月の返済時の仕訳
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払利息 | 5万円 | 普通預金 | 27万6,040円 |
| 長期借入金 | 22万6,040円 |
返済予定表を見て、毎月の返済額を次のように振り分けます。
・利息部分 → 支払利息(費用)
・元本部分 → 長期借入金(負債)の減少
この仕訳を、元本が完済するまで毎月繰り返します。返済が進むにつれて利息の金額が少しずつ減っていくため、毎月必ず返済予定表を確認しながら処理しましょう。
まとめ|借入金の経理処理は「種類の確認」が最初のステップ
2種類の借入金の違いを改めて整理します。
| 手形借入 | 証書借入 | |
|---|---|---|
| 借入期間 | 1年以内 | 1年超 |
| 勘定科目 | 短期借入金 | 長期借入金 |
| 利息の処理 | 先引き→前払費用で計上し、期間経過に応じて支払利息に振替 | 毎月の返済時に支払利息で計上 |
| 返済方法 | 期間満了後に一括 | 毎月分割(返済予定表を使用) |
借入金の経理処理でもっとも大切なのは、融資を受けた時点で「手形借入か証書借入か」を正確に確認することです。種類を間違えると勘定科目がすべてズレてしまいます。必ず融資書類や銀行の通知書を確認する習慣をつけましょう。
節税対策(短期前払費用の適用)や処理に不安がある場合は、早めに税理士へ相談することをおすすめします。


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