相続税の税率と速算表|税額の計算手順を税理士が初心者向けにわかりやすく解説

【初心者向け】相続税の計算方法を分かりやすく解説します!

うちの相続税はいくらになるのだろう。相続が現実味を帯びてきたとき、多くの方が最初に抱くのは、この漠然とした不安ではないでしょうか。

ところが相続税は、遺産の総額に税率をそのまま掛けても、正しい税額は出ません。金額の見当がつかないまま時間だけが過ぎると、納税資金の準備も遺産分割の話し合いも進められません。

本記事では、国税庁の速算表(=税率と控除額の早見表)の正しい使い方と、納付額を確定するまでの5ステップを、税理士が初心者向けに解説します。

目次

相続税の計算は5ステップ|全員分を出してから各人分に分ける流れ

相続税は、相続人全員分をまとめて計算してから、1人ずつが納める金額に分ける税金です

相続税額の計算に必要な情報は3つです。相続した財産がいくらあるか、法定相続人(=法律で相続する権利がある人)の人数、そして誰がどれだけ相続したかです。

3つがそろえば、あとは順番にあてはめるだけで税額を概算できます。計算の流れは国税庁が示す順序に沿っています(国税庁タックスアンサー No.4152「相続税の計算」)。

STEP
課税価格(=1人が受け取る財産すべての金額)を出す

受け取った財産をすべて足し、そこから借金や葬式費用を差し引いた金額が、その人の課税価格です。相続する人ごとに、1人ずつ計算します。

STEP
課税遺産総額(=相続税がかかる部分)を出す

相続人全員の課税価格を合計し、そこから基礎控除額(=相続税がかからない一定額)を差し引きます。

合計が基礎控除額以下なら相続税はかからず、計算はここで終わります。

STEP
相続税の総額(=相続人全員分の税額)を出す

課税遺産総額を法定相続分(=民法が定める取り分の割合)で分け、分けた金額に速算表の税率と控除額をあてはめます。出てきた金額を全員分足し合わせたものが、相続税の総額です。

STEP
各人の税額(=1人ずつが負担する相続税)を出す

ステップ3で出した相続税の総額を、各相続人が実際に相続した財産の割合で分けます。相続税の総額が400万円で、財産全体の4分の1を相続した人なら、その人が負担する相続税は100万円です。

相続した財産の割合が大きい人ほど、負担する相続税も大きくなります。

STEP
納付税額(=実際に納める金額)を確定する

各人の税額を、相続税額の2割加算と税額控除で調整します。2割加算は配偶者・子・父母以外が相続したときに税額が2割増える制度、税額控除は配偶者の税額軽減などで税額を差し引ける制度です。

調整したあとの金額が、実際に税務署へ納める金額です。

ここからは、5つのステップを1つずつ詳しく見ていきます。

ステップ1:課税価格を計算する|相続財産の評価と債務・葬式費用の控除

課税価格は、その人が相続した財産の評価額から、引き継いだ債務と葬式費用を差し引いた金額になります。

どの財産が対象になり、何を差し引けるのかは、相続税の課税対象になる財産とは?範囲・計算式で詳しく解説していますのでそちらをご覧ください。

たとえば住居3,000万円と預金1,000万円を受け取り、借入金500万円を引き継いだ人なら、3,000万円+1,000万円−500万円=3,500万円が課税価格になります。

ステップ2:課税遺産総額を出す|基礎控除額と法定相続人の数え方

課税遺産総額は、相続人全員の課税価格を合計し、そこから基礎控除額を差し引いた金額になります

基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算します(国税庁タックスアンサー No.4152「相続税の計算」)。人数ごとの金額は次のとおりです。

法定相続人の数基礎控除額
1人3,600万円
2人4,200万円
3人4,800万円
4人5,400万円
5人6,000万円

課税価格の合計が基礎控除額以下なら、相続税はかからず申告も原則として不要です

相続放棄をした人や養子がいる場合は、法定相続人の数え方に決まりがあります(相続税法第15条第2項、国税庁タックスアンサー No.4152「相続税の計算」国税庁タックスアンサー No.4170「相続人の中に養子がいるとき」)。

相続人の状況基礎控除額の計算に含める人数
相続放棄をした人がいる放棄した人も含めて数える
(放棄しなかった場合と同じ人数になる)
養子がいて、実子もいる養子は1人分だけ含める
(養子が2人以上いても1人)
養子がいて、実子はいない養子は2人分まで含める
(養子が3人以上いても2人)

ステップ3:相続税の総額を出す|速算表の税率と法定相続分

相続税の総額は、課税遺産総額をそれぞれの相続人に法定相続分(=民法が定める取り分の割合)で配分し、配分した金額ごとに速算表にあてはめて計算した金額の合計金額になります。

法定相続分は、誰が相続人になるかで決まります(国税庁タックスアンサー No.4132「相続人の範囲と法定相続分」)。

相続人の組み合わせ法定相続分
配偶者と子配偶者2分の1・子2分の1
配偶者と父母配偶者3分の2・父母3分の1
配偶者と兄弟姉妹配偶者4分の3・兄弟姉妹4分の1
子だけ子が全部

子や父母、兄弟姉妹が2人以上いるときは、その割合を人数で等分します

各相続人に対して法定相続分で配分した金額に、次の速算表の税率と控除額を適用します(国税庁タックスアンサー No.4155「相続税の税率」)。

法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

各相続人の計算結果をすべて合計したものが、相続税の総額です

ステップ4:各人の相続税額を出す|実際の取得割合による按分

各相続人の税額は、相続税の総額に、その人が実際に相続した財産の割合を掛けて按分した金額になります。

ステップ3では、法定相続分を利用しますが、ステップ4では、実際に相続した財産の割合を利用することになります。

使う割合何のために使うか
ステップ3法定相続分速算表に当てはめるために各相続人の暫定の配分額を計算するため
ステップ4実際に相続した財産の割合相続税の総額を相続人ごとに分けるため

相続した財産の割合が大きい人ほど、負担する相続税額も大きくなります

たとえば相続人が2人で、一方が3分の2、もう一方が3分の1を相続したとします。相続税の総額が300万円なら、それぞれの相続税額は200万円と100万円に分かれます。

なお、上記の例でそれぞれの相続税額を150万円ずつに設定すると、一方からもう一方に対して50万円の贈与が行われたと判断されます。

相続税は、まず、法定相続分で各相続人の暫定の配分額を決め、実際の取得割合で負担金額を分けるという構造になっていることを覚えておきましょう

ステップ5:各相続人の納付税額を確定する|2割加算と税額控除

各相続人が実際に納める税額は、相続税額の2割加算と税額控除を反映させて確定します

2割加算は、配偶者と一親等の血族(=子や父母)以外の人が財産を受け取ったときに、その人の納付税額が2割増える制度です(国税庁タックスアンサー No.4157「相続税額の2割加算」)。

2割加算の対象になる人対象にならない人
兄弟姉妹配偶者
甥・姪
養子にした孫父母
遺言で財産を受け取った第三者子が先に亡くなったため、代わりに相続する孫
(代襲相続)

兄弟姉妹や甥・姪が相続すると、その人の納付税額は1.2倍になります

反対に、納付税額を減らせる控除もあります。主な税額控除は次のとおりです(国税庁タックスアンサー No.4158「配偶者の税額の軽減」国税庁タックスアンサー No.4164「未成年者の税額控除」国税庁タックスアンサー No.4167「障害者の税額控除」)。

控除の種類内容対象になる人注意点
配偶者の税額軽減1億6,000万円か法定相続分のいずれか多い金額まで非課税配偶者申告書の提出が必要
未成年者控除10万円×(18歳−相続開始時の年齢)18歳未満の法定相続人1年未満の端数は切上げ
障害者控除10万円×(85歳−相続開始時の年齢)85歳未満の障害者である法定相続人特別障害者は20万円で計算

配偶者の税額軽減を使った結果、全体の相続税額が0円になる場合でも、相続税の申告書の提出は必要です。申告しなければ、この軽減そのものが受けられません。

障害者控除の対象になるのは、身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳などの交付を受けている方です。

手帳がなくても、65歳以上で障害の程度が手帳をお持ちの方に準ずると市区町村長が認めた場合は、障害者控除対象者認定書の交付を受けることで障害者控除の対象になります。

なお、要介護認定は介護保険の制度なので、要介護認定を受けているだけでは障害者控除の対象になりません。この場合も、市区町村に申請して障害者控除対象者認定書の交付を受ける必要があります(相続税法第19条の4、相続税法施行令第4条の4、所得税法施行令第10条)。

【計算例】遺産9,000万円・相続人3人のケース

相続人が配偶者と子2人のケースで、遺産が9,000万円、債務700万円、葬式費用300万円の場合、相続税の総額は350万円、納付税額は175万円になります。

なお、実際の取得割合は、配偶者が2分の1、子2人が4分の1ずつ取得したものとします。

ステップ計算内容金額
課税価格の合計遺産9,000万円−債務700万円−葬式費用300万円8,000万円
課税遺産総額8,000万円−基礎控除4,800万円3,200万円
相続税の総額配偶者1,600万円×15%−50万円=190万円、子800万円×10%=80万円×2人350万円
各人の税額実際の取得割合で按分(配偶者2分の1・子各4分の1)配偶者175万円・子各87.5万円
納付税額配偶者の税額軽減により配偶者は0円子各87.5万円
(合計175万円)

相続税の計算でよくある間違い|速算表の税率を適用する金額の取り違え

相続税の計算で最も多い誤りは、速算表の税率を適用する金額を取り違えることです。

速算表に関して誤りやすい点と、正しい取扱いは次のとおりです。

誤りやすい点正しい取扱い
実際に取得した金額に税率を適用する法定相続分で分けた金額に税率を適用する
遺産の総額に直接税率を掛ける基礎控除額を差し引いたあとに税率を掛ける
速算表の控除額を差し引かない税率を掛けたうえで控除額を差し引く

相続税の税率は、金額が大きくなるほど高くなる仕組みです。法定相続分で分けずに計算すると、本来より高い税率が使われ、税額は実際より大きくなります

なお、税率を適用する相手が法定相続分で分けた金額と決められているのには、理由があります。誰がどれだけ相続しても、相続税の総額が変わらないようにするためです

まとめ|相続税の計算で押さえるべき4つのポイント

相続税額を正しく求めるには、税率を適用する金額と、総額を各相続人に分ける順序を押さえることが欠かせません。

  • 基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下であれば、相続税はかかりません
  • 速算表の税率は、課税遺産総額を法定相続分で分けた金額に適用します
  • 速算表で求まるのは相続人全員分の総額で、各人の税額は実際の取得割合で按分します
  • 2割加算や税額控除に当てはまる人は、最後にその調整をして納付税額が決まります

法定相続分は税率を決めるための計算上の割合であり、実際に誰がどれだけ相続するかとは別のものです

相続が発生する前に概算を把握しておけば、納税資金の準備や遺産分割の方針を落ち着いて検討できます

相続税の計算と速算表に関するよくある質問(FAQ)

相続税の計算方法や速算表の使い方のうち、疑問が生じやすい点を質問形式で整理しました。

相続放棄をした人がいる場合、相続税の基礎控除額はどう計算しますか?

相続放棄をした人も、放棄がなかったものとして法定相続人の数に含めて計算します。そのため、相続放棄があっても基礎控除額が減ることはありません。

相続税の税率は、遺産の総額に対して何%と決まっているのですか?

いいえ。相続税の税率は遺産の総額に対して決まるのではなく、遺産の総額から基礎控除額を差し引き、その残りを法定相続分で分けたあとの金額に対して決まります。

例えば、遺産が1億円で、相続人が配偶者と子1人だとします。基礎控除額4,200万円を差し引いた5,800万円を法定相続分で分けると、1人あたりの金額は2,900万円となり、これに15%の税率があてはまります。

なお、相続人が多いほど1人あたりの金額は小さくなり、あてはまる税率も下がります。

自分が実際に相続した金額に速算表の税率を掛けて、相続税を計算してもよいですか?

いいえ、税率を掛けるのは、実際に相続した金額ではなく法定相続分で分けた金額です。実際に相続した金額に速算表の税率を掛けると、本来より高い税率が使われ、税額が大きくなってしまいます。

遺産の分け方を変えれば、相続税の総額は減らせますか?

相続税の総額は、法定相続分で分けたと仮定して計算するため、実際の分け方を変えても総額は変わりません。

ただし、配偶者の税額軽減や2割加算は誰が相続するかで変わるため、各人が納める金額の合計は分け方によって変わります。

配偶者の税額軽減を使えば、配偶者に相続税はかからないのですか?

いいえ、必ずかからないわけではありません。1億6,000万円と配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額までが非課税で、これを超える部分には相続税がかかります。

ただし、今回の相続で配偶者が多く取得すると、次に配偶者が亡くなったときの相続で子の税額が増えます。目先の税額だけで判断しないよう注意してください。

参考文献

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