役員の退職金準備に生命保険を活用しよう!




この記事のポイント
  • 役員退職金の準備は会社の資金繰りを圧迫する可能性があるため早めに始めよう。
  • 生命保険を利用すれば、もし経営者に不幸があったときの退職金が満額担保される
  • 生命保険は税務面での変更が多く、退職金の支給額自体も会社の状況に左右される
  • 会社の状況に詳しい税理士がいれば、退職金を準備する生命保険の相談相手には一番最適である。

役員退職金の準備は長期的に考えよう

中小企業で経営者の役員退職金を準備することは非常に重要です。

しかし、経営者の役員退職金は準備手段が限られており、また、経営者自らが自主的に自分の退職金を準備し始めるのは大変です。

なぜなら、会社の業績を良くするためや、従業員の給料や退職金の準備のために資金が使われてしまうことが多いからです。

ただ、いくらオーナー経営者と言えど、100歳まで現役でいることはできず、どこかの時期で必ず引退を選択する日が来ます

自身の勇退の時期が近付いてから、ハッピーリタイアを目指して、急に役員退職金の準備を始めても、会社の資金繰りを圧迫してしまう可能性があります

折角、経営者として会社を大きくしてきたのに、もし、リタイア後に十分な役員退職金がなく、お金に苦労するようでは、元も子もなくなってしまいます。

よって、会社の資金繰りを考えながら、長期的に役員退職金を準備していく必要があります

生命保険を活用しよう

中小企業の経営者の死亡退職金と生存退職金の両方を準備するため、役員退職金の準備手段として生命保険を活用することは非常に有効だと考えられます。

もし、在職期間中に経営者が亡くなってしまった場合、支払った保険金額以上の受取保険金を会社に残すことができますし、元気に勇退出来た時は、受取保険金を原資として、退職金を頑張ってきた自分へのプレゼントとして受け取れます。

事例で確認してみよう

生命保険を役員退職金の準備として活用する場合、節税対策も兼ねて、解約返戻金が多い、長期平準定期保険や逓増定期保険を活用することが有名でしたが、国税庁・金融庁による「節税保険」への規制強化の動きが出たため、今後どの保険が良いか今までとは変わってくるはずです。

今回は、一例として養老保険で役員退職金の準備をした場合の例をあげておきます。

以下の条件の場合、1年の支払保険料はいくらになりますか?
また、勇退時の解約返戻金はいくらになりますか?

  • 保険種類 養老保険
  • 契約者 法人
  • 被保険者 現経営者
  • 満期保険金受取人 法人
  • 死亡保険金受取人 法人
  • 被保険者の現在の年齢 45歳
  • 保険期間・保険料払込期間 65歳まで
  • 死亡保険金 5,000万円
  • 勇退予定年齢 65歳
【1年の支払保険料】
当事務所で試算した場合、1年間の支払保険料は270万円程度になります。


【勇退時の解約返戻金】
解約返戻金自体は5,000万円ですが、20年間預け入れた期間に係る「積立配当金」もあるため、支払保険料の合計額(270万円/年×20年=5,400万円)を超えた返金が出来ることが多いです。


【まとめ】
被保険者である現経営者が保険契約の満期時まで生存している場合、支払保険料の合計額程度の受取保険金しかもらえず、預金で毎年貯めていた場合とほぼ同等の効果かしかない可能性があります
ただし、保険期間中に万一被保険者である現経営者に不幸があった場合は、会社に支払った保険金額以上のお金を残せるので、十分な効果が期待できます

用語の解説
  1. 長期平準定期保険…保険期間を非常に長く設定し、終身保険に近い死亡保障が得られる定期保険です。解約返戻率が高くなる保険です。
  2. 逓増定期保険…契約時から保険期間満了までに保険金額が増加する定期保険です。掛け捨てですが、解約返戻率が高くなる保険です。
  3. 養老保険…被保険者が保険期間中に死亡した場合には、死亡保険金が支払われ、保険期間の最後まで生きていたときは、満期保険金が支払われる保険です。

まず税理士に相談してみよう

税理士が生命保険を取り扱う理由は、生命保険の長所を生かしつつ、節税対策をより適切に立案できるからです。

中小企業の場合、期間の経過とともに会社の状況が刻々と変化するため、生命保険契約は、会社の経営状況、役員報酬の変更、経営者の勇退時期の変更に合わせて、適宜、内容を変更してさせていく必要があります

もし、税務顧問などの税理士がいるならば、会社の変化に合わせて、外部の保険販売者より的確に契約内容の見直しができるでしょう。

税理士との税務契約の内容や税理士自体のスタンスにより、生命保険を勧めるかどうかは顧問税理士の任意ですが、相談相手としては最適である可能性が高いです。