
私の会計事務所が税理士・ファイナンシャルプランナー・保険代理店だということもあり、節税対策になる生命保険はないかという相談を受けることがあります。
当然、生命保険が節税対策になるのは重要なことですが、前提として、その「人」がどんな保険に入りたいかが一番重要です。
相談者と話していると、生命保険の基本的な話がすっぽり抜けていて、「なぜ生命保険ではないとダメなのか?」ということがよくあります。
そこで、今回は節税前に知っておきたい生命保険の基本を確認します。
保険の種類をきちんと理解していた方が、結果的に無駄な保険に入らずに済み、一番お金が残る可能性が高いと考えらます。
- 生命保険契約を結ぶ際は、生命保険の形態・種類を覚えておこう!
- 個人事業主の場合、事業経費に出来る生命保険はありません。ただし、プライベートな生命保険と判定されるので、4万円の「所得」控除は受けられます。
- 法人の場合、生命保険を利用すれば、支払保険料の一定額(多くの場合は40%)を損金(経費)に出来ます。
生命保険の基本的な形態
生命保険には基本的に3つの形態があります。
生存保険
生存保険とは、契約から一定期間経過後に被保険者が生存していた場合に保険金が支払われる保険です。
例えば、個人年金保険料控除4万円(生命保険料控除とは別枠)を利用するための個人年金保険が生存保険に該当します。
死亡保険
死亡保険とは、被保険者(保険の対象者)が死亡した場合に保険金が支払われる保険です。
例えば、終身保険や定期保険が死亡保険に該当します。
生死混合保険
生死混合保険とは、生存保険と死亡保険の両方を組み合わせた保険です。
例えば、養老保険が生死混合保険に該当します。
生命保険の種類
節税目的の生命保険は、以下のどれかの生命保険をもとにするか又は組み合わせて設計されています。
もし、あなたが保険の種類を知らないと、節税の目的のためだけで生命保険に加入してしまい、後でなんの効果を期待していたのか分からなくなる場合がありますので注意が必要です。
定期保険グループ
定期保険とそれに関連する生命保険のグループです。
ちなみに、定期保険とは、保険期間に期限があり、被保険者(保険の対象者)が保険期間中に死亡した場合に死亡保険金が支払われる保険です。
長期定期保険
保険期間に期限があり、被保険者(保険の対象者)が保険期間中に死亡した場合に死亡保険金が支払われる保険です。
ただし、保険期間が非常に長期に渡る定期保険(100歳ぐらいまで保険期間が続きます)です。
逓増定期保険
保険期間に期限があり、被保険者(保険の対象者)が保険期間中に死亡した場合に死亡保険金が支払われる保険です。
ただし、保険期間の経過により保険金額が増加する定期保険になります。
低解約返戻金型定期保険
保険期間に期限があり、被保険者(保険の対象者)が保険期間中に死亡した場合に死亡保険金が支払われます。
ただし、保険期間中に解約返戻金が低い期間が設定されるため保険料が割安となります。
昔は、解約返戻金が低い期間に法人から個人に生命保険を譲渡するというウルトラC的な提案をする保険会社もありました。
無解約返戻金型定期保険
保険期間に期限があり、被保険者(保険の対象者)が保険期間中に死亡した場合に死亡保険金支払われます。
ただし、解約返戻金がないため、保険料が割安になります。
医療保険グループ
医療保険とそれに関連する生命保険のグループです。
医療保険
被保険者(保険の対象者)が病気やケガで入院したり、手術を受けたときに給付金が支払われる保険です。
がん保険
被保険者(保険の対象者)ががんで入院したり、手術を受けたときに給付金が支払われる保険です。
一時期は、保険料の全額を損金(経費)にできる保険として人気でしたが、税法が変更されています。
長期障害保険
被保険者(保険の対象者)が不慮の事故で障害を負ったり、感染症等で死亡した場合に災害死亡保険金が支払われる保険です。
特定疾病補償保険
被保険者(保険の対象者)ががん、急性心筋梗塞、脳卒中等の特定疾病になったときに死亡保険金と同額の特定疾病保険金が「生前」に支払われる保険です。
その他生命保険グループ
そのほかにも色々な種類の生命保険があります。
終身保険
保険期間が「一生」になり、被保険者(保険の対象者)が保険期間中に死亡した場合に死亡保険金が支払われる保険です。
収入保障保険
保険期間には期限がありますが、被保険者(保険の対象者)が保険期間中に死亡した場合、遺族に年金が支払われる保険です。
養老保険
保険期間に期限があり、被保険者(保険の対象者)が保険期間中に死亡した場合には、死亡保険金が支払われ、保険期間の最後まで生きていたときは、満期保険金が支払われる保険です。
最後に抑えておきたい基本事項
生命保険の基本的な形態と色々な種類の生命保険を紹介してきましたが、最後に①個人事業主・サラリーマン、②法人経営者別に節税対策になる生命保険を考えていきましょう。
- 個人事業主・サラリーマンの場合…基本的に事業経費にできる生命保険はない(生命保険自体がプライベートで必要になる保険なので)
- 法人経営者の場合…生命保険の保険料は法人の損金(経費)になる。ただし、全額損金(経費)になる生命保険は税法改正で消滅している。支払保険料が少額なものを除き、現状は支払保険料の40%程度までしか損金(経費)に算入出来ない。
個人事業主・サラリーマン
個人事業主・サラリーマン自身を被保険者(保険の対象者)とする生命保険の保険料はプライベートでも入る可能性が高いので事業経費にできません。
ただし、個人事業主が従業員を雇っている場合に、その従業員を被保険者(保険の対象者)とした生命保険に加入したときは事業経費の対象になる可能性があります。
個人事業主・サラリーマンが生命保険料を支払う場合には、生命保険料控除として所得控除(最大4万円)を受けることが節税対策の基本になります。
なお、更なる節税対策としては、個人年金保険を使い、個人年金保険料控除4万円(生命保険料控除とは別枠)を受けることが可能です。
この場合、個人年金保険料は1万円程度/か月にすべきです。
法人経営者
法人経営者の場合、生命保険の保険料は法人の損金(経費)になります。
ただし、基本的に生命保険の保険料の40%までが損金(経費)だと思った方がよいでしょう。
過去には、支払保険料の全額を損金(経費)にできる生命保険もありましたが、すでに廃止されています。