コンサル業務・税務業務で新規のクライアントに行くと、法人で生命保険契約に加入していることはよくあります。

なお、「期末に利益が残り過ぎてしまったので、生命保険に加入しました」という節税対策の場合が、法人の生命保険の場合には多い印象です。

個人的には、節税対策は生命保険に入る大きな要因ですが、節税対策以外に生命保険に加入する目的を持つことが非常に大事だと思います。

生命保険を利用した節税対策はあくまで「課税の繰り延べ」であり、生命保険を解約時や満期到来時には、それまでの保険金支払額と同額程度の課税がされる運命にあります。

今回は、法人が生命保険に加入する目的を確認していきましょう。

どれか一つにでもあてはあるようならば、生命保険に加入する理由は十分にあるはずです。




この記事のポイント
  1. 生命保険に加入する際には「節税対策」だけでなく、①相続・事業承継、②従業員の福利厚生、③役員退職金・修繕費等の準備、④事業保障の目的も考えてみましょう。
  2. 生命保険の支払額は加入目的・節税額のバランスを考えて決めましょう。
  3. 生命保険に加入後も加入目的が変化するごとに保障内容と保険料を適宜確認していくとが重要です。

生命保険の加入目的とは?

法人で生命保険に加入する目的は次の4つが考えらます。

法人の生命保険加入目的
  1. 相続・事業承継
  2. 従業員の福利厚生
  3. 役員退職金・修繕費等の準備
  4. 事業保障



そして、上記4つの加入目的に密接に関係するのが節税対策になります。


生命保険の加入目的と節税


定期保険や終身保険などの生命保険契約を締結している法人数は、全体の法人数の実に70%弱にも及んでいるという統計もあります。

生命保険は法人が支払う保険料を大幅に上回る高額な死亡保障を準備することができます

そのため、高額な支払いが生じる

①経営者の相続・事業承継、

②従業員の福利厚生(従業員の死亡退職金や弔慰金)、

③役員の退職や法人所有建物の修繕、

④経営者が倒れた時の事業保障(従業員の給料など)

の場合に備えて法人で生命保険契約に加入することは非常に有用になります。

そして、生命保険料の支払額は一定額が損金(経費)になるため、上記の備えをするのと同時に保険料の支払時には当然節税対策にもなり得ます

ただし、いくら節税対策になるからといって、保険料を高額にすることは、法人の支出を増加させることになるため、お勧めできません。

保険料と節税のバランスを十分に考慮しながら、最適な保険料を設定していくことが必要になります。

無駄な保険料の支出を避けるためにも、生命保険に加入後も加入目的が変化するごとに保障内容と保険料を適宜確認していくとが重要です。

加入目的の概略

それでは、それぞれの生命保険の加入目的の概略を見ていきましょう。

相続・事業承継

中小企業の経営者の相続の場合、株券や不動産など遺産分割しづらい資産が多いです。

そんな時に生命保険に加入しておけば、遺産に含まれる現金(保険金)が多くなり、遺産分割をスムーズに行うことができます

また、生命保険金の受取りには、相続人一人あたり500万円の非課税枠があり、節税対策としても有効です。

中小企業の事業承継ですが、税務上の優遇措置として、事業承継税制というものがあります。

事業承継税制は改正を繰り返していろいろ改善していますが、多くの中小企業にとっては非常にハードルが高い制度でしょう。

事業承継の際には、株価が高い(≒きちんと利益を出している)中小企業の場合、贈与税・相続税等がかかるのですが、生命保険で納税額を担保しておけば、事業承継税制を利用しなくても良い場合もあります

また、生命保険を利用すれば、事業承継時に必要な資金を毎年平準化して積み立てられるので、資金繰り的にも非常に楽になります

従業員の福利厚生

中小企業では、従業員の福利厚生のために養老保険に入り、従業員のモチベーションを高めている場合があります。

養老保険とは、保険期間に期限があり、被保険者(保険の対象者)が保険期間中に死亡した場合には、死亡保険金が支払われ、保険期間の最後まで生きていたときは、満期保険金が支払われる保険です。

つまり、法人を契約者として、従業員を被保険者(保険の対象者)、従業員の家族を死亡保険金の受取人として養老保険に加入しておけば、従業員に不幸があったときでも死亡保険金を従業員の家族に渡せることになります

役員退職金・修繕費等の準備

経営者の死亡退職金・生存退職金を準備するために生命保険を利用することができます。

また、自社所有の建物の修繕などに備えて生命保険を利用することができます。

いずれの場合も、将来の支出に備えて、早い段階から生命保険に加入して、保険料を支払っておけば、会社の資金繰りを圧迫することもなくなります

そして、保険料の支払額は一定額を損金(経費)にでき、毎年の節税対策としても非常に有用です。

事業保障

多くの中小企業では、経営者は、経営戦略の立案者=営業責任者=融資業務責任者=人事採用責任者ではないでしょうか?

つまり、経営者が、経営方針を決定し、それに基づいて営業をし、必要ならば銀行に融資相談をして、また法人の人員を確保していくスーパーマンのような役割を担っているのではないでしょうか?

仮に、そんな経営者が突然倒れたり、死んでしまっては、後継ぎなどが法人を立て直すまでにかなりの時間が必要になります

場合によっては、経営を立て直す前に事業資金が尽きて法人を清算しなければならないかもしれません。

生命保険に入っていれば、有事に保険料を受け取れて、資金繰りを心配しなくてよくなるため、事業を継続できる可能性が高くなるでしょう。