
- 不動産賃貸業を営む個人事業主で節税目的で会社設立を考えている人
節税対策と会社設立のデメリットの比較が大切
不動産賃貸業の場合、物件数の増加により、売上高は増加し、また安定していきます。
また、売上高が増加し、安定すれば、利益も安定して増加し続けることになります。
そして、不動産賃貸業を営む個人事業主で、物件数の増加などにより事業の規模が拡大してきた場合に、会社を設立して節税対策を行うか迷うことがあります。
つまり、利益がある程度大きくなる(概ね500万円程度)と、個人事業主で採用される所得税率と住民税率の合計税率が会社で採用される法人税率を超過してしまうため、会社を設立した方が税率が低くなり、節税対策になります。
今回は、会社を設立した方が節税対策で優れていることを前提に、それでも発生してしまう会社設立に伴うデメリットを挙げていきます。
もし、デメリットのほうが大きいと感じたら、どんなに節税対策としては優れていても会社設立はしないほうが良いでしょう。
会社設立のデメリット
不動産賃貸業を営む個人事業主が会社を設立することのデメリットを挙げると以下の4つになります。
- 会社の設立と維持には手間とコストがかかる
- 会社の決算書や法人税等の申告書の作成は非常に煩雑になる
- 短期的に融資が受けづらくなる可能性がある
- 登記簿に役員である自分の名前が掲載されてしまう
会社の設立と維持には手間とコストがかかる
まず、会社の設立に関してですが、①定款の作成、②公証役場での定款の認証、③法務局への登記申請等と非常に手間がかかる作業が続きます。
司法書士事務所に手続きの代行をお願いすれば、だいぶ手間は省けますが、それでも設立だけで自分が行う作業の手間はかなりのものになります。
費用面でも、司法書士への報酬が5万円~10万円程度、登録免許税が最低15万円、定款承認手数料が5万円程度と最低でも30万円程度のコストが掛ることになります。
次に会社を維持する場合の手間ですが、こちらもいろいろ細かい雑務があります。
例えば、役員や会社の住所が変更になった時は登記の変更事由になりますので、登記簿の登録変更手続きを行わなければなりませんし、社会保険にも加入しなければならないので、毎月の事務手続きが非常に煩雑になります。
会社を維持するための手間についても、司法書士や社労士を雇えば、手間は自体は減らせるのですが、その分コストが掛ってきてしまいますし、手間を0にすることも不可能です。
会社の決算書や法人税等の申告書の作成は非常に煩雑になる
同じ不動産賃貸業を営んでいても、個人事業主の時に比べて会社の方が税務調査も厳しくなるので、決算書や法人税等の申告書の作成の厳格化が求められます。
また、個人事業主の場合、所得税の申告書さえ税務署に提出しておけば、個人住民税や個人事業税の申告も自動的に行われましたが、会社の場合は、法人税の申告書を税務署に提出するだけでは足りず、会社自らが法人住民税と法人事業税を計算したうえで、都道府県と市区町村に申告書を提出しなければなりません。
目安として売上高が5,000万円程度までならあなた自身で申告書を作成することも可能でしょうが、法人税・法人住民税・法人事業税の申告書作成にはかなりの手間がかかります。
なお、税理士に手数料を払えば、法人税・法人住民税・法人事業税の申告書作成・提出業務を会社で行う手間は省けますが、最低でも年間30万円以上の支払報酬がかかってきてしまいます。
短期的に融資が受けづらくなる可能性がある
会社を新たに設立した場合、最初の事業年度が終わるまでは1円も利益が出ていないことになります。
利益の出ていない会社が「将来利益が出るからお金を貸してください!」と頼んでも、当然銀行はお金を貸してくれないです。
よって、会社を設立した当初は銀行融資を受けづらくなる可能性があります。
ただし、絶対に融資を受けられないという訳ではありません。
例えば、①創業融資など創業時にしか受けられない融資もありますし、②会社の連帯保証人になるあなた自身の評価もあるからです。
また、2年~3年程度会社で不動産賃貸事業を行い、会社が軌道に乗り始めて、合理的な事業計画を描けるようになってくれば、銀行もお金を貸してくれるようになります。
さらに、会社の場合、社長は会社とは別人格になるため、社長自身が会社の連帯保証人になれば、個人事業主の時より銀行借入の機動性も大幅に上がるようになります。
よって、長期的に見た場合は、個人事業主として融資を受けるより会社として融資を受ける方が融資も受けやすくなるでしょう。
登記簿に役員である自分の名前が掲載されてしまう
会社を設立して、自分が役員になると、登記簿に自分の名前が掲載されてしまいます。
会社の登記簿は法務局にいけば誰でも見ることができます。
もし、サラリーマン大家が副業で会社を設立したならば、副業禁止の就業規則に違反するある可能性があるので、会社設立は慎重に検討しなければならないでしょう。