福利厚生として生命保険を活用する方法!




この記事のポイント
  1. 従業員の福利厚生のために養老保険を利用すると従業員のモチベーションが上がります
  2. 養老保険は支払保険料の半分が損金(経費)計上されるので、節税対策にも有効です。
  3. 役員やその親族のみを保険対象とする養老保険は福利厚生費にはならず、報酬や給与になってしまいます

福利厚生のための養老保険

中小企業では、従業員の福利厚生のために生命保険に加入する場合があります。

従業員の死亡退職金や弔慰金を生命保険を活用して準備するためです。

もし、従業員に不幸が起こってしまって場合、法人で契約している生命保険から、従業員の家族に死亡保険金が支払われる仕組みです。

従業員の福利厚生のための生命保険には、養老保険が利用されることが多いです。

養老保険とは、従業員が在職中に死亡した場合には、従業員の家族に死亡保険金が支払われ、従業員が退職まで生きていた時には、法人に満期保険金が支払われる保険です。

税務上の注意点を確認しよう

死亡保険金の受取人を被保険者の家族、満期保険金の受取人を法人とした養老保険を法人で契約した場合、毎年の支払保険料の半分は法人の損金(経費)にすることができます

つまり、年間200万円を支払保険料とする養老保険に法人が加入した場合、以下の仕訳をすることで、100万円を損金(経費)に計上することができます

借方
金額
貸方
金額
福利厚生費(損金科目)
積立保険金(資産科目)
100万円
100万円
普通預金
200万円

※福利厚生費(支払保険料の半分)は消費税法上、非課税取引になります。つまり、消費税課税事業者の場合、消費税の節税には繋がりません


ここで1つだけ注意して頂きたいのが、役員又は役員の親族だけを養老保険の対象(被保険者)としている場合、支払保険料は損金にはならず、その役員等に対する報酬や給与になってしまうということです。

さらに、もし支払保険料が役員報酬と認定された場合、役員報酬の損金(経費)要件は限られており、支払保険料は税務上の損金(経費)要件を満たさないため、損金(経費)に計上できない可能性があります。

つまり、役員側では、報酬の増加となり、所得税が増税されるのに、法人側では、役員報酬として損金(経費)計上できないので、中小企業の経営者にとっては、納税額がダブルで増える可能性があります。

参考までに法人税基本通達9-3-4、タックスアンサー(法人税)No5211を以下に提示します。

死亡保険金の受取人が被保険者の遺族で、生存保険金の受取人が当該法人である場合 その支払った保険料の額のうち、その2分の1に相当する金額は資産に計上し、残額は期間の経過に応じて損金の額に算入する。ただし、役員又は部課長その他特定の使用人(これらの者の親族を含む。)のみを被保険者としている場合には、当該残額は、当該役員又は使用人に対する給与とする

法人が役員に対して支給する給与の額のうち定期同額給与、事前確定届出給与又は業績連動給与のいずれにも該当しないものの額は損金の額に算入されない


生命保険を事例で確認しよう

最後に、福利厚生で生命保険(養老保険)を活用する方法を具体例で確認してみましょう。

従業員の福利厚生のために以下の保険に加入します。
毎年の保険料の支払額、満期保険金、税務上の損金(経費)の金額はいくらになるでしょうか?

  • 保険種類 養老保険
  • 契約者 法人
  • 被保険者 従業員(4名)
  • 満期保険金受取人 法人
  • 死亡保険金受取人 従業員の家族
  • 死亡保険金・満期保険金 1,000万円
  • 保険期間・保険料払込期間 65歳まで
【1年の支払保険料】
仮に被保険者の年齢を全員45歳と仮定した場合、1年の支払保険料は4名分で220万円程度になります。


【満期保険金】
解約返戻金は4名分で4,000万円(1,000万円×4名分)です。なお、20年間預け入れた期間に係る積立配当金なども考慮した解約返戻金で考えれば、年間支払保険料の合計額(220万円/年×20年=4,400万円)を多少超えるでしょう。


【税務上の損金(経費)】
毎年の税務上の損金(経費)の金額は、支払保険料220万円の半分の110万円になります。
仕訳で表すと以下の通りになります。

借方
金額
貸方
金額
福利厚生費(損金科目)
積立保険金(資産科目)
110万円
110万円
普通預金
220万円



【従業員が死亡してしまった場合の法人の仕訳(参考)】
被保険者である従業員が保険期間中に死亡してしまった場合、死亡保険金の受取人は従業員の家族であり、法人には一切お金は入ってきません。
よって、法人に資産として積み立ててある保険積立金を取り崩す仕訳をすることになります。

借方
金額
貸方
金額
雑損失(損金科目)
440万円
積立保険金(資産科目)
440万円

※積立保険金の貸借対照表金額のうち対象分を取り崩す仕訳をします。
なお、受取保険金から発生する雑損失は、消費税法上、「不課税」なので、消費税計算に影響しません



【満期保険金を受け取った時の法人の仕訳(参考)】
被保険者である従業員が退職まで生存していた場合、満期保険金が法人に入金されます。
よって、法人では以下の仕訳が必要になります。

借方
金額
貸方
金額
普通預金(資産科目)
1,000万円
積立保険金(資産科目)
雑収入(益金科目)
520万円
480万円

※積立保険金の貸借対照表計上金額のうち対象分を取り崩し、受け取った保険金との差額を雑収入にします。
なお、受取保険金から発生する雑収入は、消費税法上、「不課税」なので、消費税計算に影響しません