この記事の対象者 所要時間
  • 不動産売却を考えている個人事業主
  • 不動産を所有している個人事業主
おさる先生の授業
7分
詳しい説明
7分

くま君くま君

おさる先生、利益が出そうだから、投資用不動産の売却を考えてるんだけど、税金はどんな感じになるのかな?


おさる先生おさる先生

お、景気のいい話だね。
かえる君は個人事業主だったよね。


くま君くま君

うん、個人事業主として不動産賃貸業を行っているよ。
会社を作るのは大変だったからあきらめたんだ。


おさる先生おさる先生

そうなんだね。
個人事業主が不動産を売却する場合「譲渡所得」という区分になるんだ。
譲渡所得は「分離課税」と言われて、不動産所得とは合算して計算できないんだ。


くま君くま君

どういうこと?


おさる先生おさる先生

つまり、不動産を売却して利益が出た場合、その発生した利益が単体で税金計算されるんだ。
反対に不動産を売却して損失が出た場合、その損失は不動産所得の利益と相殺することはできないんだ。


くま君くま君

利益が出たときは税金を払わなくてはならないのに、損失が出たら救済されないということだね。
なんか釈然としないね。


おさる先生おさる先生

そうなんだ。法人の場合は利益が出ても、損失が出てもほかの利益や損失と合算できるんだけど、個人事業主の場合は不動産売却という単体の行為のみで税金を判断されてしまうんだ。
注意が必要だね。


くま君くま君

へー


おさる先生おさる先生

それと、かえる君は今度売却する不動産を所有してから何年になる?


くま君くま君

うーん、8年目だよ。


おさる先生おさる先生

それなら長期譲渡所得になるから良かったね。


くま君くま君

長期譲渡所得?


おさる先生おさる先生

うん、不動産を5年超所有していると税金的にもお得なんだ。
不動産の所有期間が5年以下だと「短期譲渡所得」と呼ばれて、利益に対して税率は39%なんだけど、5年超だと「長期譲渡所得」と呼ばれて利益に対して税率は20%なんだ。


くま君くま君

不動産を5年超持つと、税率は半分になるんだね。
全然違うんだね。




個人事業主が不動産を売却する時の税金

個人事業主が所有している不動産を売却した場合の税金は所得税・住民税の譲渡所得という区分に該当します。

不動産賃貸業で得られる家賃の税金は所得税・住民税の不動産所得に該当し、給与所得や事業所得などと合算して計算することができました(総合課税)。しかし、譲渡所得は総合課税にはならず、単独で所得税・住民税の計算を行うことになります(分離課税)。

譲渡所得の計算方法

譲渡所得も所得税・住民税の内訳の1つなので、1月1日~12月31日の期間で区切られ、翌年3月15日までに確定申告することになります。譲渡所得の計算式は以下のようになります。

譲渡所得税額
譲渡所得=売却金額―(帳簿価額+譲渡費用)
譲渡所得税額=譲渡所得×税率

売却金額

売却金額とは不動産を売却した値段+固定資産税の日割りの清算金となります。

帳簿価額

帳簿価額とは、不動産の購入価額―減価償却累計額(毎年の減価償却費の合計値)となります。なお、土地の場合は減価償却はないので、帳簿価額=取得価額になります。

譲渡費用

譲渡費用は登録免許税登記費用仲介手数料などです。

税率

保有期間の長短で税率が変わってきます。保有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得になり、39%(所得税率30%、住民税率9%)になります。保有期間が5年超の場合は長期譲渡所得になり、20%(所得税率15%、住民税率5%)になります。

なお、復興特別所得税2.1%が別途所得税率にかかりますが、金額的にはほとんど影響ないでしょう。

譲渡所得がプラスの場合、マイナスの場合の処理

譲渡所得がプラスの場合は譲渡所得税がかかることになります。逆に、譲渡所得がマイナスの場合は不動産所得や給与所得と相殺できずに切り捨てられることになります。難しい言い方をすると分離課税のため、総合課税とは損益通算できないということになります。

また、マイナスの場合にマイナス分を翌年まで繰り越すというような繰越制度もないです。

譲渡所得がマイナスの場合はなにも救済がない、鬼のような税制になっています。会社などの法人の場合は譲渡損が出ても他の利益と相殺できるようになっているので、個人事業主だけ救われない税制ですね。よって、個人事業主は、事業上のリスクになる場合もありますのできちんと認識しておいた方がよいでしょう。

譲渡所得がプラスで不動産を売却するなら5年間待とう!

個人事業主の場合の、譲渡所得の税率は、保有期間が5年超かどうかで19%も税率が違います。よって、譲渡所得がプラスで不動産を売却するなら保有期間が5年を過ぎてから売却した方がよいでしょう。

ただし、ここで一つ注意点です。保有期間の計算は譲渡のあった年の1月1日時点で計算します。例題で確認してみてください。

不動産の購入日と売却日が以下の場合に長期譲渡所得にあたるか判定してください。
・購入日:平成29年2月28日
・売却日:平成34年5月31日
【解答】

長期譲渡所得にはなりません。

【解説】
平成29年2月28日~平成34年5月31日までの実質の保有期間は5年3か月です。
しかし、税務上では、平成34年1月1日まで保有したことになってしまいますので、平成29年2月28日~平成34年1月1日までの4年10か月が保有期間となります。
よって、5年超保有していないので長期譲渡所得にはなりません。

実質的に5年超保有期間が過ぎていても、税法上は5年以下にされてしまうわけです。長期譲渡所得にしたつもりが短期譲渡所得として扱われ、税率が19%も違うことになりかねませんので気をつけてください。