この記事の対象者 所要時間
  • 定期的に行う修繕工事の税務処理を知りたい人
  • 修繕費の要件の一つである周期の短い費用について知りたい人
15分




不動産賃貸業を営んでいるとどうしても避けて通れない税務上の論点に修繕費になるか資本的支出になるかというものがあります。

仮に、修繕費として経費に計上したものが実際には資本的支出で資産に計上しなければならなかった場合、経費から資産に振り替えた期の経費は少なくなり、利益が多くなるため、納税額も増えるということになります。

さらに、修繕費か資本的支出かの判断は大規模工事の時に発生する論点で、工事費用自体が非常に多額になるので、間違った場合の納税額の増加は非常に大きな影響を及ぼします。

よって、不動産賃貸業で税務調査が行われると、必ず調査官に調べられてしまうものとして修繕費か資本的支出かという論点があります。

今回はそんな資本的支出か修繕費かという論点の一つで定期メンテナンス費用について実例を挙げて見ていきましょう。

定期メンテナンス費用に上手く当てはまれば、細かい検討をしないでも修繕費として全額経費に計上することができます。

定期メンテナンス費用とは

定期メンテナンス費用(=定期修繕費用)とは、メンテナンス(=修理)がおおむね3年以内の期間を周期として行われることが過去の実績その他の事情からみて明らかな工事に対する費用です(法人税法基本通達7-8-3)。

定期メンテナンス費用の具体例

では実際に定期メンテナンス費用にあたるものはどんなものなのかを見ていきましょう。

私が不動産賃貸業向けに物件を買おうとした時に実際にあった話しを今回は例にしてみましょう。

株式会社最速は、3年前に築50年の鉄筋コンクリート造りのマンションを購入しました。

このマンションの屋上には貯水タンクがあり、取り付けられてからかなりの年数が経過しているため、購入時に売主から「何年か一度、必ずメンテナンス工事しないと壊れるよ」と言われていました。

そこで、貯水タンクのメンテナンスを行った過去の工事記録を売買時に売主より入手しています。

購入から3年が経過したので、株式会社最速は貯水タンクの定期メンテナンスを実施して、施工業者から工事見積書も入手しています。

株式会社最速では、貯水タンクのメンテナンスにかかった費用100万円をすべて修繕費に計上しています。

株式会社最速が計上した100万円の修繕費は経費に計上して問題なかったのでしょうか?

法人税法基本通達では定期メンテナンスが、おおむね3年以内の期間を周期として行われることが過去の実績その他の事情からみて明らかな場合は、メンテナンスにかかった費用を修繕費として全額経費に計上できるとしています。

では、過去の実績その他の事情とはどういう意味でしょうか?

過去の実績その他の事情とは、メンテナンス費用が自社又は他社の実績及び業界の慣行により反復して支出されている場合を言います。

つまり、今回の案件では、株式会社最速がマンションを購入する前に、売主である他社が定期的に反復して貯水タンクのメンテナンス費用を計上していたことが立証されていれば、株式会社最速が購入後3年以内に行った貯水タンクのメンテナンス費用は修繕費として経費に計上して良いことになります。

なお、過去にメンテナンス費用が発生した実績を示す資料は特別な資料を別に作成する必要はなく、その実績を立証できる通常の記録であれば大丈夫です。

今回の事例では、不動産売買時に売主より過去のメンテナンス工事記録を貰っているので、それを挟んでおけば、特別に新しい資料を作成する必要はありません。

ここからは判断が分かれるところですが…

上記の事例は過去の実績が売主の工事記録という客観的な資料ですぐに証明できる場合でした。

ただ、定期メンテナンス工事の修繕費計上を認めている法人税法基本通達7-8-3では、「過去の実績その他の事情」を要件としており、その他の事情でも修繕費に計上できる可能性があるとしています。

例えば、新築の建物の貯水タンクで過去のメンテナンス履歴がまだないものだとしても、3年周期で反復してメンテナンスが必要であるならば、そのメンテナンス費用は修繕費として経費に計上できる可能性があるわけです。

過去の実績・その他の事情のどちらでも修繕費として経費に計上できる可能性はあるわけですが、いずれにしろ客観的な資料を必ず用意しておくことが必要と考えれます。

不動産売買時に売主から「この貯水タンクは古いので3年ごとにメンテナンスが必要だよ」と言われて、その記録をメモに取っているだけも、もしかすると修繕費として経費に計上できるかもしれません。

ただ、もしあなたが税務調査官で、納税者が売主から聞いた記録のメモだけで修繕費に計上していた場合、調査時にそのヒアリングメモを納税者から見せられたら、「本当か?」と思いますよね。

3年周期で反復してメンテナンス費用を計上しているという「客観的」な証拠があれば、要らぬ議論をせずとも良い訳です。

なぜメンテナンス費用として修繕費にしたいのか?

なぜメンテナンス費用として修繕費にしたいかということを最後に説明してこの記事を終わりにしましょう。

一般的な工事の見積書を見てもらえば分かるのですが、本当に単なる修繕費なのか新たな部品が加わるなど、実は耐用年数も伸びているため資本的支出にあたるのかなんてことは専門家でないと分かりません。

あなた(私)に分かるのは工事の写真や施工業者からの話を受けて、「きれいになったね!」程度のことです。

そうであるにも関わらず、もし定期メンテナンスでなければ、税務調査のときに見積書を見て、「これは資本的支出ではないのか?」という議論をしなくてはならなくなります。

「メンテナンス費用で3年周期で反復して支出する費用です。」と言えてしまえば、資本的支出と修繕費の細かい議論をしなくて良くなるため楽になりますよね。

定期メンテナンス費用というと3年縛りという足枷が存在してしまうため個人的にはあまり使いたくないのですが、細かい議論をしなくて良いという大きなメリットもあることは事実でしょう。