この記事の対象者 所要時間
  • 不動産を取得しようとしている人
  • 不動産取得時に少しでも節税したい人
12分




土地建物の按分方法はいくつかあるけどどれがいいの?

1つの不動産売買契約書で土地建物の売買契約を締結した時、それぞれの内訳価格が記載されている場合は、契約書の内訳価格が極端に土地建物のどちらかに片寄せされていない限り、その内訳価格に従って、税法上の土地と建物の取得価額とすることができました。

また、不動産売買契約書に土地建物の内訳価格が記載されていない場合は、次の4つの計算方法を参考にして土地建物の取得価額を決定することになります。

  • 消費税から逆算する方法
  • 固定資産税評価額から按分する方法
  • 建物の標準的な建築価額表を利用する方法
  • 不動産鑑定評価に基づく方法

土地と建物の按分方法の話しは「土地建物の取得価額の按分方法について」で詳しく解説していますのでそちらをご覧ください。

今回は土地建物の按分計算の方法が分かったうえで実際に、どんな方針で土地建物の取得価額を決定していけば、一番節税できるかについて解説していきます。

節税の指針として、建物取得価額を大きくすることを考える

1つの不動産売買契約書で土地建物を入手した場合、建物の金額を少しでも多くできるように按分比率を考えていくことが重要になります。

なぜ建物の取得価額を少しでも大きくしたいかというと次の2つのメリットがあるためです。

  • 減価償却できる金額が増えるため
  • 消費税の納税額が減る可能性があるため

減価償却できる金額が増えるため

建物は使用することによって消耗していくため、税法上も毎年度消耗した部分を建物勘定から減額して、同額を経費に計上することを認めています。

これを減価償却というのですが、建物の取得価額が大きいほど減価償却を通して毎年度の経費に計上できる金額が大きくなります。経費が大きくなるということは、毎年度の利益が減少することにつながるので、毎年度の納税額が少なくなり納税者にとっては有利になります。

ただし、建物比率が大きいと、建物の帳簿価額(取得価額から減価償却の合計額を控除した金額)が小さくなり、売却時に利益が増えるため、支払う税金が多くなります。

消費税の納税額が減る可能性があるため

建物の取得は課税取引であるのに対して、土地の取得は非課税取引です。建物の取得価額が大きければ、大きいほど、不動産購入時に多くの消費税を支払っているということになります。

消費税の納税方法は、受け取った消費税から支払った消費税を差し引いて、国に支払うという方法になりますので、不動産購入時に多くの消費税を支払っていれば、その分消費税の納税額が少額になる又は還付を受けられる可能性が出てきます。

以下の条件で、建物の取得価額が1,000万円のときと2,000万円のときの消費税の納税額を比較してください。

  • 商品を売り上げて受け取った消費税320万円
  • 消費税率は8%

【解答】
建物の取得価額が1,000万円の場合の消費税の納税額は240万円、建物の取得価額が2,000万円の場合の買主側消費税の納税額は160万円となる。

【解説】
建物の取得価額が1,000万円の場合
320万円-1,000万円×8%=240万円

建物の取得価額が2,000万円の場合
320万円―2,000万円×8%=160万円

設例からも分かるように、建物の取得価額を大きくできれば、消費税の納税額も「建物取得価額を大きくできた分×消費税の税率分」だけ減ることになります。

建物取得価額を少しでも大きくするためにすること

不動産売買契約書に土地建物の内訳価格を入れてもらうか金額が土地建物の総額表示であっても内書きで消費税額をいれてもらうのがベストでしょう。

ただし、売主側に立てば、土地建物の内訳価格を入れたくないし、消費税額の記載も避けたい事情があります。

さきほど、買主側でメリットに挙げた消費税が売主側ではそのままデメリットになってしまうからです。

以下の条件で、建物の取得価額が1,000万円のときと2,000万円のときの売主側の消費税の納税額を比較してください。

  • 支払った消費税は40万円
  • 消費税率は8%

【解答】
建物の取得価額が1,000万円の場合の消費税の納税額は40万円、建物の取得価額が2,000万円の場合の消費税の納税額は120万円となる。

【解説】
建物の取得価額が1,000万円の場合
1,000万円×8%―40万円=40万円

建物の取得価額が2,000万円の場合
2,000万円×8%―40万円=120万円

建物の売却は受け取った消費税を増やす効果があります。つまり、先ほどの計算式とは逆で建物の取得価額が大きければ大きいほど、「建物取得価額が大きくなった金額×消費税の税率分」だけ納税額が増えることになります。設例を見ていただけると分かるとおり、売主側から見ればかなりのインパクトです。

もし、建物の取得価額を記載することに売主さんが難色を示すようであるならば、デメリット部分である消費税額を一部買主が負担するという交渉もしてみましょう。

いずれにしろ、建物の内訳金額は売主と買主の綱引きになりやすいところなので、是非頑張って交渉してみてください。

ただし、不動産売買の対象になっている物件が人気物件で、すぐ次の買い手候補が見つかる場合、買主側から面倒くさい交渉を持ちかけると、少額の節税対策のために売買自体が消滅する可能性もありますので、気を付けてください。