この記事の対象者 所要時間
  • 個人事業主で黒字が多すぎて節税対策に限界を迎えている人
  • 法人の経営者で退職金を使った節税対策を考えている人
  • 法人の役員に対する退職金の節税対策を知りたい人
10分




法人の場合は退職金も経費に計上できる

個人事業主の場合、自分や奥さんなどに退職金を支払っても経費に計上することはできませんでした。

しかし、法人の場合、自分や奥さんなどが役員になっていれば、役員退職金を支払うことができ、一定の上限はありますが、支払った役員退職金は経費(損金)に計上できます。

個人事業主で黒字が多すぎて納税額が多い人は法人成りすることにより、法人経営者で役員退職金をまだ利用していない人はいずれご自身や奥さんが引退するときまでにスキームを整えることにより、大幅な節税ができることになります。

役員退職金を受け取る側も税務上優遇される

役員退職金を受け取る側では、所得税が課税されることになります。

通常の役員報酬は給与所得というカテゴリーに分類されますが、役員退職金は退職所得というカテゴリーに分類されます。

この退職所得なのですが、似たような性質を持つ給与所得よりかなり税負担が軽減される措置がとられています。

まずは、退職所得の計算式をみてみましょう。

退職所得の計算式
(収入金額-退職所得控除額)×1/2

退職所得控除額は以下のように計算されます。

勤続年数 退職所得控除額
20年以下 40万円×勤続年数
(80万円に満たない場合には、80万円)
20年超 800万円+70万円×(勤続年数-20年)

退職所得控除自体は給与所得にも給与所得控除があるためそこまで大きなメリットにはなり得ません。不動産所得や事業所得と比べれば大きなメリットですが…

給与所得よりかなり税負担が軽減される措置とは、計算式の後ろにある1/2のところです。

この1/2はおそろしいメリットになりますので、設例を使って同額の役員報酬と役員退職金を支払った場合の納税額を比べてみましょう。

役員報酬で2,000万を貰っている人と役員退職金(10年勤務)として2,000万円を貰った人のそれぞれの納税額を計算してください。

【解答】
役員報酬の場合の納税額540万円、役員退職金の場合の納税額170万円

①役員報酬の場合
給与所得=給与収入―給与所得控除額
=20,000,000-2,200,000=17,800,000円
納税額=(所得金額―控除額)×税率
=(17,800,000円―1,536,000円)×33%
540万円

①役員退職金の場合
退職所得=(退職金―退職所得控除額)×1/2
=(20,000,000-400,000×10年)×1/2=8,000,000円
納税額=(所得金額―控除額)×税率
=(8,000,000円―636,000円)×23%
170万円

給与所得で2,000万円を貰った場合540万も納税しなければなりませんが、退職所得で2,000万円貰った場合わずか170万円を納税すれば済みます。

役員退職金を支払った場合と支払わなかった場合の法人の税金額の比較

法人が役員退職金を支払った場合には経費(損金)に計上でき、役員の側では退職所得として所得税が計上されるのは分かりました。

では、役員退職金を経営者に支払った場合は支払わなかった場合に比べてどのくらい節税効果があるのかを見ていきましょう。なお、法人のお金≒経営者のお金の場合に成り立つ理論です。自分や奥さん以外にも株主がいる場合は節税はできますが、法人のお金≠経営者のお金になってしまいますので、経営者側はリスクを負うことになります。

家族経営の会社で、法人の利益が現在3,000万円あります。役員退職金を2,000万円払うときと払わない時の所得税+法人税の納税額を求めてください。なお法人税率は25%とし、役員は10年勤続していたとします。

【解答】
役員退職金を払う時の納税額420万円、役員退職金を払わない時の納税額750万円

【解説】
(1)役員退職金を支払う時の納税額
①役員退職金の所得税
退職所得=(退職金―退職所得控除額)×1/2
=(20,000,000-400,000×10年)×1/2=8,000,000円
納税額=(所得金額―控除額)×税率
=(8,000,000円―636,000円)×23%
170万円

②会社の法人税
法人税=最終利益×税率
=(30,000,000-20,000,000)×25%
250万円

③合計
所得税+法人税=170万+250万
420万円

(2)役員報酬を支払わない時の納税額
会社の法人税=利益×税率
=30,000,000×25%
750万円

実に330万円もの節税になります。

個人事業主が法人成りして役員退職金を支払った場合の節税額

最後に個人事業主が法人成りして役員退職金を支払った場合にどれぐらい節税できるかのシミレーションをしてみましょう。

個人事業主で利益が3,000万円あります。そのまま個人事業主でいる場合と法人成りして役員退職金を2,000万円払う場合の所得税+法人税の納税額の比較をしてください。なお法人税率は25%とし、役員は10年勤続していたとします。

【解答】
個人事業主のままの時の納税額1,080万円、法人成りして役員退職金を支払う時の納税額420万円

【解説】
(1)個人事業主のままの時の納税額
所得税=(利益―所得控除額)×税率
=(30,000,000―2,796,000)×40%
1,080万円

(2)役員退職金を支払う時の納税額
①役員退職金の所得税
退職所得=(退職金―退職所得控除額)×1/2
=(20,000,000-400,000×10年)×1/2=8,000,000円
納税額=(所得金額―控除額)×税率
=(8,000,000円―636,000円)×23%
170万円

②会社の法人税
法人税=最終利益×税率
=(30,000,000-20,000,000)×25%
250万円

③合計
所得税+法人税=170万+250万
420万円

実に660万円もの節税になります。