この記事の対象者 所要時間
  • 事業用の不動産(事務所など)を購入した人
  • 事業用の不動産(事務所など)を購入しようという人
  • 開業1年目などで赤字が見込まれる人
おさる先生の授業
5分
詳しい説明
10分

くま君くま君

おさる先生!
不動産賃貸業を始めようと思って、投資用不動産を購入したよ。


おさる先生おさる先生

くま君、おめでとう。
これで、君も晴れて個人事業主だね。


くま君くま君

うん、ありがとう。
ところで、最初の2年間は消費税払わなくていいってきいたんだけどほんと?


おさる先生おさる先生

うん、消費税は売上を基準に課税するかを考えるんだ。
最初の年は売上がないから消費税を払わなくていいんだよ。
ただ…


くま君くま君

ただ…
なに?


おさる先生おさる先生

消費税を払う必要がなくても、手続きをすれば消費税の還付を受けられる可能性はあるんだ。
特に建物の取得を前提としている人は会社であれ、個人事業主であれ、必ず還付の手続きを検討しないと損する可能性があるよ。


くま君くま君

え、そうなの?
僕は大丈夫かな?


おさる先生おさる先生

くま君の購入した不動産(建物)は事務所用?それとも人が住むための建物?


くま君くま君

事務所用だよ。
繊維業の会社が入っている事務所をオーナーチェンジで購入したんだ。


おさる先生おさる先生

そうすると、消費税の還付の可能性があるよ。
ちゃんと税務署に申請しないと消費税の還付は受けられないから注意してね。


くま君くま君

なるほどね。
おさる先生ありがとう!




まずは、消費税を支払う義務があるか検討しよう

消費税は売上高が1,000万超あると2年後から課税される税金です。

つまり、開業した当初やその次の年、売上高が1,000万円に届かない年の2年後は消費税を支払う義務はありません。

消費税「免税事業者」でも「課税事業者」になる方がお得なこともある

大きな赤字がある年(開業当初で仕入が売上以上にある場合など)や建物を購入した年は消費税の還付を受けられる可能性があるので、売上高が1,000万以下でも「消費税課税事業者選択届出書」を出して課税事業者になっておいたほうがよい場合もあります。

例えば、以下のような投資用の土地・建物(事業用)を購入した場合です。

当期に事務所賃貸用の土地建物を、建物の価額6,480万円(消費税480万円を含む)、土地の価額4,000万円で購入しました。

そして、事務所の賃貸料として今期864万円(消費税64万円を含む)を受け取っています。

「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、消費税の課税事業者になっていた場合の消費税の還付額はいくらになりますか?

【解答】
消費税の還付額は実に416万円にもなります。


【解説】

事務所を貸して受け取った消費税(64万円)は税務署に支払うために一時的に借主から預かっていると考えます。

反対に建物を購入した時に支払った消費税(480万円)は税務署に支払ってもらうために売主に一時的に預けていると考えます。

64万円を預かって、480万円を預けているため差額の416万円(64万円-480万円)はあなたが預けすぎているので税務署が還付という形で返してくれることになります。

消費税課税事業者選択届出書を出していない場合、免税事業者として消費税の還付という考え方はなくなるので、当然消費税の還付額は0円です。

消費税課税事業者選択届出書を出している場合、課税事業者として消費税の還付を416万円受けることができます。

どちらがお得かは一目瞭然ですね。

ただし、消費税課税事業者選択届出書は開業した時は、開業した年の最終日まで、事業を継続しているときは前事業年度の最終日までに提出しなくてはならず、一度選択すると3年間は課税事業者となってしまいます。

単年で還付を受けられるかどうかを考えるだけでなく、長期的に見て課税事業者になった方がよいかを必ず判断してください。

非課税売上があると結論が変わるので注意

消費税の還付についてなのですが、実は非課税売上(消費税を預かっていない売上)があると圧倒的に減少してしまいます。

例えば、非課税売上の例として、居住用の建物の賃貸業を行っている場合の住人からもらう家賃があります。

あなたが賃貸住宅に住んだ場合(住んでいる場合)を思い出してみてください。

勿論、家賃に消費税は含まれていませんよね?

課税売上(消費税を「預かっている」売上)と非課税売上(消費税を「預かっていない」売上)があると、課税売上と非課税売上を生み出すために支出した費用の消費税(第三者に「預けている」消費税)も按分することになります。

言葉では難しいので以下の例題で確認してみましょう。

当期に事務所と居住併用の建物を、6,480万円(消費税480万円を含む)で購入しました。

そして、事務所の賃貸料として今期432万円(消費税32万円を含む)を受取り、居住用の建物の賃貸料として200万円を受け取りました。

「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、消費税の課税事業者になっていた場合の消費税の還付額はいくらになりますか?

【解答】
還付額は288万円です。

【解説】
事務所を貸して受け取った消費税(32万円)は税務署に支払うために一時的にあなたが借主から預かっていると考えます。

反対に建物を購入した時に支払った消費税(480万円)は税務署に支払ってもらうためにあなたが売主に一時的に預けていると考えます。

ただし今回は、あなたが借主から預かった消費税32万円-あなたが売主に預けた消費税480万円=448万円が還付されるという結論にはなりません。

建物を購入した費用6,000万円は課税売上(事務所用)と非課税売上(居住用)の両方の売上を生むために支払った費用です。

居住用の建物の賃貸では、あなたは借主から消費税を預かっていないので、当然に非課税売上(居住用)を生むために購入した建物の消費税は還付されないことになります。

そうであるならば、あなたが建物購入時に売主に預けている消費税480万円は課税売上(事務所用)と非課税売上(居住用)で使用している部分に分けれられ、課税売上(事務所用)の消費税から差し引かなくてはなりません。

よって、32万円-480万円÷(400万+200万円)×400万円=288万円が還付されることになります。

まとめ

今回は不動産賃貸業を参考に消費税の還付のお話をしましたが、赤字が多い場合など、ほかの事業でも十分に還付が生じる可能性はあります。

考え方は全く同じなので割愛しますが、開業したばかりなどで消費税を支払っていない事業者の方は是非一度「消費税課税事業者選択届出書」を税務署に提出するか検討してみるといいでしょう。

「消費税課税事業者選択届出書」を出しているかどうかで消費税の還付でかなりの金額が動くことを説明しましたが、消費税の手続きについては紙切れ一枚で恐ろしい金額が変動することが良くあります。

また、消費税の書類の提出期限も「前年度」までなど締切りが早く、気が付いたら恩恵を受けられないということもあります。

いずれにしても消費税を判断する際は早めに慎重な検討が必要ということを覚えておいてください。