この記事の対象者 所要時間
  • 若い世代で高額な社会保険料を支払っている会社経営者
  • 法人化して役員報酬を自分に支払おうとしている個人事業主
  • 個人事業主で保険料が高いと感じている人
15分




社会保険料は意図的に減らすことができる

法人の場合、役員に対して役員報酬を支払うことができます。当然ですが、自分を役員にすれば自分自身に役員報酬を支払うことも可能です。この自分自身に対する役員報酬をうまく利用すれば社会保険料の削減スキームを組むことができます。

つまり、毎月の役員報酬を低額に設定して、役員賞与を高額に設定するという方法です。

次の2つの事例で社会保険料の納付額を比べてみてください。

毎月の役員報酬を10万円、役員賞与を1,080万円とする場合の社会保険料の1年間の合計納付額を計算してください。

【解答】
1年間の社会保険料の合計は117万円です。

【解説】
①役員報酬に対する社会保険料(1年分)
標準報酬が98,000円になるので、1か月の健康保険料が9,712円、厚生年金保険料が17,818になり、合計すると27,530円になります。
12か月分で27,530円×12か月=330,360円が役員報酬に対する社会保険料になります。

②役員賞与に対する社会保険料
役員賞与に対する保険料は、役員賞与に保険料率を掛けた金額となります。
また、役員賞与が573万円以上の場合は、573万円に税率を掛けた金額が健康保険料の上限額になり、役員賞与が150万円以上の場合は、150万円に税率を掛けた金額が厚生年金保険の上限額となります。
よって、健康保険料=573万円×9.91%=567,843円、厚生年金保険料=150万×18.182%=272,730円の合計840,573円が役員賞与に対する社会保険料になります。

③役員報酬と役員賞与の社会保険料の合計
①330,360円+②840,573円=1,170,933円≒117万円が1年間の社会保険料の合計額になります。

毎月の役員報酬を100万円とする場合の社会保険料の1年間の合計納付額を計算してください。

【解答】
1年間の社会保険料の合計は246万円です。

【解説】
役員報酬に対する社会保険料(1年分)
標準報酬が980,000円になるので、1か月の健康保険料が92,163円、厚生年金保険料は上限の標準報酬が620,000円なので112,728円になり、合計すると204,891円になります。
12か月分で204,891円×12か月=2,458,692円≒246万円が社会保険料の1年間の合計納付額になります。

いずれも役員が受け取る金額は1年間で1,200万円ですが、役員報酬を10万円、役員賞与を1,080万にした方が、129万円(246万円-117万円)の節約になります。

前提条件として役員報酬と役員賞与が経費(損金)になるように手配しよう

役員報酬と役員賞与は税法上は役員給与になり一定の要件を満たさないと経費(損金)に計上できません。

社会保険料を節約できても、役員報酬や役員賞与が経費(損金)に計上できなければ元も子もありません。

以下、経費(損金)計上要件を挙げておきますので、しっかり確認してください。

役員報酬の要件

役員報酬を経費として計上する要件は以下の2つになり、「定期同額給与」と呼ばれています。

  • 月払いであること
  • 支給額が事業年度を通じて原則同額であること

上記の要件から、事業年度の途中に増額すると、一部が経費にならなくなります。

ただし、決算終了後の定時株主総会での給与額の改定で、以下の要件に当てはまれば、「定期同額給与」になり、全額を経費計上できます。

  • 期首から3ヶ月以内(3月決算法人なら6月末まで)に給与改定を行うこと
  • 給与改定の毎月の支給額が同額であること
  • 給与改定の毎月の支給額が同額であること

例えば、3月末決算の法人が、5月20日に株主総会を開催し、役員報酬を100万円から200万円に引き上げる決議を行った場合に、株主総会後の5月末日から役員報酬200万円を支払ったのならば、支払い額全額を経費に計上できます。

役員賞与の要件

役員賞与を経費(損金)に計上するためには、株主総会で役員賞与の支給時期と支給金額を決定し、事前に税務署に届け出る必要があります。これを「事前確定届出給与」といいます。

事前確定届出給与の提出期限は、支給時期、支給金額を決定した株主総会から1カ月を経過する日までとなります。

仮に役員賞与が経費にならなかった場合(損金不算入の場合)、法人は経費にならなかった分を追加した法人税を支払うことになります。また、賞与を受け取った役員は当然所得税を払わなければならないので、支払った金額に対して法人税、所得税が二重課税されてしまいますので注意が必要です。

残念ながら社会保険料の削減スキームにも欠点がある

社会保険料の削減スキームですが、残念ながら欠点も存在します。

月額の役員報酬を減額してしまうと、役員退職金の経費算入可能額は「最終報酬月額×在任年数×功績倍率」で計算されるため、役員退職金の税務上の適正額に影響が出る可能性があります。

簡単に言うと、役員賞与は役員退職金の計算式には反映されないため、月額の役員報酬が低いときはその低い金額で税務上の役員退職金の経費算入可能額が計算されてしまう可能性があるということです。

仮に在任年数が20年、功績倍率が3倍だとすると、最終報酬月額が10万円の場合、10万×20年×3=600万円、最終報酬月額が100万円の場合、100万×20年×3=6,000万円と経費に計上できる役員退職金の額は大きく変わってきてしまいます。

なお、最終報酬月額ですが、直前に慌てて変更しても変更自体を否認されますので注意が必要です。

欠点と折り合いをつけて社会保険料の削減スキームを利用しよう

社会保険料の削減スキームは役員退職金の経費算入額を減らす可能性があるため、反対派が多いのが実情です。

しかし、役員の引退までの期間が長く想定される場合や報酬と賞与の割合を極端にしない場合には使えるスキームであることも多いです。

大切なのは、役員報酬と役員賞与を長い目でどう計上していくかを見通すことです。

長期計画を建てられるようなら是非欠点との折り合いをつけて実践してみても良いスキームだといえます。