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  • 個人事業主のスーツ代を経費計上したい人
10分




スーツ代の経費計上は税理士間でも意見が割れる

個人事業主でも営業をするときには相手先にスーツを着ていくことは当然でしょう。ちゃんとした身だしなみをしていることは仕事を獲得するための最低条件です。その意味では、スーツを購入することは売上を上げるために必要な経費であるといえます。

ところが、スーツの購入代金を個人事業主の経費に計上することは多くの税理士が嫌がります。職業柄税理士が回りにたくさんいるので、酒の席で試しに聞いてみたのですが、7人中5人は即答でスーツ代の経費計上を否定しました。このようにスーツの経費に計上することは税理士間では分が悪いのですが、2名は経費計上できると答えてます。

今回は、両者の主張を比べて記事にしてみました。

経費にできない派の主張

スーツ代の経費計上を認めない税理士さん達の否認理由は、個人事業主の衣服費について争われた過去の判例にあります。

この判例では、個人事業主でなくても、誰もが洋服は必要であり、個人の趣味趣向が影響されやすいので、衣服費は個人的な支出であり、事業に必要な支出ではないと結論づけています。

40年前のかなり古い判例ですが、この判例がもとになってスーツ代の経費計上は今まで否認されてきました。

経費にできる派の主張

こちらは近年改正された、特定支出控除というサラリーマンのための経費の内訳項目を主な根拠にしています。

特定支出控除は、サラリーマンの給料のうち一定の要件を満たすものは税金計算上、経費のように扱って、給料から控除するというものですが、その中に新たに会社員が自費で購入したスーツで職務遂行上必要なものという項目が加わりました。

なお、原文をそのまま記載すると、「制服、事務服、作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための費用(衣服費)」なので、スーツ代以外でも革靴などスーツ関連一式も特定支出控除として認められる可能性はあります。

話を戻しますが、サラリーマンのスーツ代が経費に計上できるようになったのに、個人事業主のスーツ代を認めないのはおかしな話でしょうという理論になります。

結局スーツの経費計上を認める派と認めない派はどっちが正しいの?

仕事で聞かれたら、たとえスーツ代の経費計上肯定派であっても、「スーツは経費に計上できませんよ!」と答えるはずです。税務調査で否認されたら、それは税理士の責任ですから、保守的な回答をせざるを得ないではないでしょう。

ただ、ここからはあくまで私見ですがスーツ代を経費で計上できると思います。

否認の根拠になっている、40年前の判例はすべての衣服費を否定しているわけでもありません。職務で専ら着用していて、職種などの関係で一定の種類・品質・数量以上の洋服を必要とする場合は、個人的な使用部分はあるものの一部は事業上必要なものと認められるとしています。

つまり、40年前の判例はスーツ代を一概に経費に計上できないと言っているのではなく、納税者側が裁判でスーツの業務上の必要性を立証できなかっただけととらえることもできます。

そうであるならば、やはりサラリーマンのスーツ代の経費計上が認められのであれば、個人事業主にも認められると考える方が自然です。

しかし、スーツ代の全額を経費に計上するのは、さすがに無理があります。安物のスーツなら全額経費計上でも調査官は苦笑いかもしれませんが、普通に考えて税務上の論点があり、仕事以外にスーツを着たことはないという外形がなければ、全額経費だと主張すること自体はナンセンスでしょう。按分計算して、例えば、1週間のうち5日は出勤日数だからスーツ代の7分の5は経費にできると考えることになるでしょう。

もし、按分計算まできちんとしていたら、否認できるほどの根拠もなくなってしまうと思います(税理士や例え調査官であってもある程度きちんとした根拠があるものをダメとは言えないでしょう)。

もしスーツ代を経費に計上するのなら

もしスーツ代を経費に計上するのであるならば、仕事以外では使えないと実質的にも形式的にも言い切れない限り、必ずなんらかの基準で按分計算をしてください。按分計算をしていて、なおかつ経費に計上している理由を説明させれれば、もし私が税務調査官ならば否認する勇気はありません。

経費計上する勘定科目についてですが、金額が大きくない限りは雑費でもいいですが、消耗品費に計上しておくのが一番良いと考えれられます。仕訳例は以下の通りです。休日2日間はスーツを私用で着る可能性があるとして7分の5だけを経費計上し、7分の2は事業主貸としています。

借方 金額 貸方 金額
消耗品費
事業主貸
80,000円
16,000円
現金
96,000円