資本的支出と修繕費の判断方法について
この記事の対象者
  1. リフォーム費用が経費になるか固定資産になるか知りたい人
  2. 資本的支出と修繕費の注意点を知りたい人

資本的支出と修繕費とは?

不動産を購入したり、不動産を所有してある程度の期間が経つと必ず必要になるのが、リフォーム費用です。

間取りの変更やより新しくて価値の高いものへの変更の時もあれば、壁紙やフローリングの張り替えなどの原状回復だけの場合もあります。

税務上のリフォーム費用は資本的支出修繕費という2つのカテゴリーに分けられます。

資本的支出であれば、固定資産計上になり、減価償却を通して、緩やかに経費に計上され、修繕費であれば、即時に償却され、支出した年度の経費になります。

まずは、資本的支出と修繕費の違いを理解しましょう。

種類 内容
資本的支出 次のどちらかの条件を満たす支出です。

  • 使用可能期間を延長させる支出(耐久性をアップするための支出)
  • 資産の価値を増加させるための支出

例えば、1LDkの間取りの部屋を壁で仕切り、2LDKにするための支出は資産の価値を増加させるための支出と見なされます。

修繕費 破損箇所の修繕や定期的なメンテナンスのための支出です。
修理や原状回復のための支出は修繕費になります。
例えば、賃借人が退去して、汚くなった部屋の壁紙や床を張り替えた時の支出は修繕費とみなされます。

リフォーム費用は修繕費となる方が基本的に有利

資本的支出として固定資産に計上されてしまうと、減価償却を通して、緩やかに固定資産に計上されたものが経費に振り替えられていきます。

それに対して修繕費に計上されれば、その年度の経費にダイレクトに計上することができます。

通常は、経費が多く計上された方が、利益が減り、納税額も減ります

長い年月を考慮すれば、資本的支出でも修繕費でも支出した金額全額が経費に計上されることになり同じという結論になりますが、早く経費に落とせる修繕費の方が納税額が早い段階で減るので、資金繰りが非常に楽になります。

よって、リフォーム費用は修繕費となる方が基本的に有利になります。

20万円未満の支出は全額経費になります

リフォーム費用はなるべく修繕費にした方が有利だということは分かりました。

そうならば、どうしたら修繕費にできるかを考えていくのがベストでしょう。

まず、1つのリフォーム工事でかかる費用が20万円未満ならば、そのリフォームが資本的支出であった場合でも修繕費として処理できます。

例えば、アパートの床を畳からフローリングに変更するときにかかった費用が18万円だとします。

畳からフローリングに変更する工事は資産の価値を増加させるための支出に該当し、資本的支出になります。

しかし、かかった費用が20万円未満のため、全額経費で計上できることになります。

ちなみに、「1つの」リフォーム工事でかかる費用が20万円未満と記載しましたが、例えば2部屋同時に工事を行った場合、2つの部屋は別々のリフォーム工事と考えられ、別々に20万円の判断をすることになります。

ただ、保険の意味を込めて、見積書や請求書は別々に出してもらった方が安全でしょう。

20万円以上の支出を伴うリフォームになってしまったら

青色申告をしているようなら、少額減価償却資産の即時償却の特例を利用して30万円未満のリフォーム費用を一括で経費に計上してしまいましょう。

少額減価償却資産の即時償却の特例については、「30万円未満の固定資産は少額減価償却資産として一括経費にしよう」で説明していますのでそちらもご覧ください。

では、30万円以上のリフォーム費用又は少額減価償却資産の即時償却の特例を利用しない場合の20万円以上のリフォーム費用はどのように処理するかというと、リフォームの目的が資本的支出にあたるか修繕にあたるかで判断することになります。

国税庁の説明や一般的な税務解説書にはいろいろステップを踏んで、資本的支出か修繕費かを判断するように書かれていますが、非常に難解です。

ステップに沿えば沿うほど混乱していきます。

最初にステップを考えた人はおそらく天才だったのでしょう。

リフォームをした目的が、資本的支出(価値を高める支出、又は耐久性を高める支出)か修繕のための支出かだけで判断していいです。

そして、もし判断がつかなかったら、資本的支出として固定資産に計上してください。

なぜ判断が微妙のものを資本的支出に分類することを勧めるのでしょうか

税法上の資本的支出と修繕費は非常に争いがあるところで、様々な案件を通して、具体的な取り扱いが決められています。

しかし、個別具体的な事例ではどちらか判断がつかないところが多々あるのも実情です。

なぜなら、資本的支出の意味は曖昧で、人によって、価値を高める支出又は耐久性を高める支出は曖昧だからです。

仮に税理士であっても、具体的な取り扱いがあるところ以外は、調査官との調整になり、修繕費としての計上を否認されるケースもよくあります。

税理士としては、否認されないような理論を考えて、調査官と議論することはできても、主張を押し通しきれないところもあります。

そして、明らかに修繕費に該当するもの、明らかに資本的支出に該当するものは、誰にでもはっきりわかりますし、インターネットの発達により、具体的な取り扱いが決められている事例はあなた自身ですぐに調べることができます。

そうだとしたら、修繕費として通るか通らないかはっきりしない箇所で勝負して、リスクを負うより、分からないのであれば、否認されにくい資本的支出に計上しておいた方が業績や納税額も安定することになるでしょう。

それでも仮にどうしても修繕費にしたいリフォーム費用があるのであれば、否認されないように、きっちりとした筋書きを描き、理論的に説明できるだけの準備を万全に整えておくことが必要だと考えられます。