この記事の対象者 所要時間
  • 修繕費と資本的支出の具体的な見分け方を知りたい人
  • 建物取得時や工事実施時に少しでも多く経費を計上したい人
15分




修繕費と資本的支出の判別は非常に難しいです。

今回は不動産投資でよく見かける間違い事例を見てみましょう。経費にできるものを経費にしていないために税金を多く支払っている事例をよく見かけます。

税理士さんにお願いしても、報酬との関係でここまでよく見てくれないことも多いでしょうから事業主本人が気をつけないと抜け落ちる箇所でもあります。

では、具体的事例です。下記の場合の税務上の処理はどのようになるのでしょう。

修繕費と資本的支出のひな形

修繕費と資本的支出のまとめ

まずは、修繕費として全額を経費に計上できるものと資本的支出として資産に計上し、減価償却を通して徐々にしか経費に計上できないものの違いを確認しましょう。

事業主が所有している固定資産の修理・改良のために支出した金額のうち、固定資産の通常の維持管理のため、又は毀損した固定資産を原状回復するために支出した費用は修繕費になります。

一方で、事業主が所有している固定資産の修理・改良のために支出した金額のうち、固定資産の価値を高め、又は耐久性を増すことになる支出をした場合は資本的支出となります。

見積書の見方について

修繕費か資本的支出かを判断していくときは、契約書や請求書ではなく工事見積書など工事の内訳が分かるものを必ず入手して、細かく見ていくことになります。

細かい見積りを確認せずに請求書ベースで建物附属設備や構築物などの固定資産に計上している事例をよく見かけますが、細かく見れば本来経費に計上できるものを資産に計上しているので非常に損をしています。

税理士さん(顧問契約などの場合は除く)や税務調査官の人も資産に計上されていれば、税務上問題ないので、事業主の人にあまり教えてくれない事実です。

修繕費か資本的支出かの判断をする時は必ず見積書も確認すること見積書を請求書・契約書とともに保管することを忘れないでください。

それでは、見積書の項目を一つずつ確認していきましょう。

ドアの塗装費用について

まずは、見積書の①ドアの塗装費用についてです。ドアの塗装をした目的が経年劣化により今までの塗装が剥げてしまったためで、毀損した固定資産を原状回復するためだったとします。

それならば、修繕費に該当し、全額を経費に計上できることになります。

なお、③のデザイン料はこの見積書からは①ドアの塗装によるものなのか、②外壁の塗装によるものなのか分かりません。

よって、ドアと外壁のどちらにかかった費用かわからないので、ドアと外壁の塗装費用の金額で按分して、それぞれの費用にプラスすることになります。

今回はドア塗装費用も外壁塗装費用もともに190,000円なので、デザイン料100,000円÷(ドアの塗装費用190,000円+外壁塗装費用190,000円)×ドアの塗装費用190,000円=50,000円をドアの塗装費用にプラスすることになります。

よって、ドアの塗装費用190,000円+デザイン料50,000円=240,000円が経費に計上されることになります。

仕訳で示すと以下のようになります。

借方 金額 貸方 金額
修繕費
240,000円
現金又は預金
240,000円

外装塗装費用について

次に、見積書の②外壁塗装費用についてです。外壁を塗装した目的が新しい塗料を塗って耐久性を増すことだったとします。

そうであれば、資本的支出に該当し、全額固定資産に計上することになります。

ここで、20万円未満の資本的支出は重要性がないため固定資産に計上せずに全額修繕費に計上してよいという税法上の規定があります。

よって、外壁塗装費用は190,000円であり、20万円未満なので全額修繕費に計上できると考えられそうです。

しかし、ドアの塗装費用のところで説明した通り、残念ながら今回はデザイン料50,000円を外壁塗費用に加えなければなりません。

よって、外壁塗装費用190,000円+デザイン料50,000円=240,000円が20万円以上になっているため、もはや資本的支出に重要性がないとは言えないため、原則通り固定資産に計上しなければなりません。

外壁塗装費用は建物と一体化しているので、固定資産の科目としては建物勘定を使用することになります。

仕訳で表すと以下のようになります。

借方 金額 貸方 金額
建物
240,000円
現金又は預金
240,000円

デザイン料について

次に、見積書の③デザイン料についてです。

今回は、①ドアの塗装費用、②外壁の塗装費用のどちらにあたるか判断がつかなかったので、ドアの塗装費用と外壁の塗装費用の金額でデザイン料を按分しました。

しかし、もし、見積書に「デザイン料はドアの塗装費用に対してである」という一文があれば、修繕費に計上できる金額が全く違います。

つまり、「デザイン料はドアの塗装費用に対してである」という一文があれば、ドアの修繕費が190,000円+100,000円=290,000円になるばかりではなく、外壁の塗装費用は190,000円になり、20万円未満の資本的支出で重要性がないため修繕費処理することができたはずです。

そうすると、290,000円+190,000円=480,000円が修繕費として全額経費に計上できることになり、ドアの塗装費用と外壁の塗装費用のどちらにあたるか判断がつかない場合よりも、実に190,000円も経費を多く計上できたはずです。

このように見積書の記載一つで経費に計上できる費用の金額が大きく変わってきてしまう場合もあるため、発注業者に工事を依頼する際は、必ずあなた自身が最初の段階で見積書の記載の仕方を検討して、相手先に要望を伝えるべきです。

虚偽の記載は絶対に駄目ですが、正しい記載をしてもらうかもらわないかで節税額が大きく変わってしまう場合もあるため注意が必要でしょう。

撤去費用について

最後に見積書の④撤去費用についてです。

撤去費用はドアや外壁を塗装し直すために出た不要物の撤去費用になります。

つまり、工事前の従前の固定資産の撤去費用になり、新しく塗り直したドアや外壁とは別物です。新しく塗り直したドアや外壁の取得価額を構成するものでは決してありません。

よって、工事実施者に対する単なる撤去を行ってもらうための手数料に過ぎないので、支払報酬として全額経費に計上することになります。

意外と固定資産に含めて処理していることが多いので注意しましょう。全体から見ると金額的には小さいように見えますが、工事全体の金額が大きいときには撤去費用も大きくなりますので、固定資産計上すると勿体ないです。

なお、撤去費用について仕訳で表すと以下のようになります。

借方 金額 貸方 金額
支払報酬
50,000円
現金又は預金
50,000円