この記事の概要 重要度
  • 会社の決算期を変更して課税時期を繰り延べる節税方法があります。
  • 決算期変更自体は非常に簡単な手続きでできてしまいますが、節税目的の決算期変更は注意が必要です。
  • 決算期変更による新しい期末日は月末にすることをお勧めします。




期末間際の決算期変更は節税対策になる

期末間際に大きな売上高が計上されることはよくあります。

特に不動産売買を行っている会社だと不動産の売却に伴って期末日間際に多額の利益(=売上高又は固定資産売却益)が計上されることがあるでしょう。

そんな時は、決算期変更を考えてみることが一つの節税手段になることもあります。

まずは、以下の図を見てみてください。

決算期変更影響図

3月末に決算期を迎える会社で、3月中に不動産売買取引があり、売上高(=固定資産売却益)が4,000万円計上されたと考えてください。費用の方は3月中に100万円使っています。

なにもしないで3月末を決算を迎えるのと2月末決算に決算期変更をするのとでは、1,230万円-60万円=1,170万円も納税額が変わってくることが分かります。

会社の決算期変更は意外に簡単です

決算期変更のプロセスは3つだけです。

  1. 決算期変更の影響を試算します。

    法人税・住民税・事業税の節税効果、消費税への影響も考慮して決算期変更を検討します。

  2. 臨時株主総会を開き、特別決議を行います。

    決算期変更は定款の変更決議になりますので、株主総会の特別決議が必要になります(会社法466条)。

  3. 管轄の税務署と都税事務所等及び市町村に事業年度変更届を提出します。

    事業年度変更届は所定の書式で必ず提出してください。都税事務所等及び市町村に対しても届出が必要なことを忘れないでください。

決算期変更の影響を試算する

最初のステップとして決算期変更の影響を試算することになります。注意点は以下の2つです。

  • 消費税の影響は試算できているか?
  • 決算期変更を多用していないか?
  • 消費税の影響は試算できているか?

    不動産会社で消費税課税事業者の場合、決算期変更をすると、課税売上割合が大きく変わります

    課税売上割合が変わることで、
    通常の消費税の計算方法が変わることがある
    繰延消費税の再計算が必要になる
    課税売上割合が著しく変動したときの調整の検討が必要になる
    という3つの影響があります。

    本来は①~③の影響をすべて把握したうえで決算期変更を行いたいところですが、②と③の影響は実務上正確に把握するのが非常に難しいので、ザクっと把握する程度にしてまずは、①を優先して考えることになるでしょう。

    また、消費税課税事業者と非課税事業者を彷徨っている会社は特に注意が必要です。決算期変更した事業年度も1事業年度としてカウントされてしまうため、本来は消費税の非課税事業者で行けたものを1年早く消費税課税事業者になってしまうケースもありますので慎重に判断してください。

    決算期変更を多用していないか?

    決算期変更について制限する決まりはありません。よって、理論上は決算期変更を何回でもできることになります

    ただし、節税対策の決算期変更を多用することはお勧めしません

    決算の月数が12か月にならなくなるので、年度間比較が難しくなるためです。実際に関与クライアントで決算期変更を行うこともありますが、年間比較をするときに税理士ですら決算変更期の業績について、一瞬異常値だと思ってしまうぐらいです。当然、経営者の方も決算変更期の業績を他の期と比べると渋い顔をしています。

    当然ですが、節税対策が経営判断に影響を及ぼす可能性は極力排除するべきです。決算期変更の多用は経営者であるあなた自身の判断を鈍らせる可能性が高いのでほどほどにしておくべきです。

    また、決算期変更は意図的に売上高を翌期に繰り延べる手法です。当然、税務署の目に留まる可能性は高くなり、多用していると、なにか怪しい会社だなと思われる原因にもなると考えらます。怪しいから税務調査してみようと思われないのが一番です。税務調査は指摘がなにもなくても、時間的にも金銭的にもマイナスになるからです

    決算期変更を多用することはお勧めしませんが、決算期変更は、節税対策としては、非常に有用な方法でもあります。よって、ここぞという期のみに行うのがベターでしょう。

    例えば、当期の期末間際に不動産売買を行って、多額の利益が出ていて、翌期にその不動産売却益をもとに新しい事業を展開をしたいときなどです。納税する代わりに事業投資に資金を使えれば、あなたの会社をさらに大きくすることができるでしょう。

    臨時株主総会を開き、特別決議を行う

    決算期変更は法務局で登記のいらない定款変更に分類されます。

    法務局で登記のいらない定款変更なので、株主総会の特別決議で決算変更の決議を取り、可決したことを議事録に残しておくだけでOKです。

    会社の原始定款(設立時に作成した定款)を見たことある人からよく質問を受けるのですが、原始定款自体を書き換えることが定款変更手続きではありません

    定款変更とは、株主総会で定款変更の決議をし、可決したことを株主総会議事録に残すことです。

    そして、商号変更などの場合は法務局で登記が必要な定款変更になるので、定款変更を法務局に申請することになりますが、決算期変更は法務局で登記がいらない定款変更なので、株主総会議事録のみを残すだけでOKです。

    株主総会議事録の議題のひな形(コピペ可です)を掲載しておきますので、参考にしてください。

    臨時株主総会議事録の例文
    議案〇〇条 定款変更の件
     議長は、現行定款の事業年度を変更する必要性並びにその理由について説明し、定款第○〇条を次のとおり変更したい旨を述べ、総会にその賛否を問うたところ、総会は満場異議なく賛成したので次の通り可決し確定した。
    (現行定款)
    第○○条 当会社の事業年度は毎年4月1日より翌年3月31日までとする。
    (変更後定款)
    第○○条 当会社の事業年度は毎年3月1日より翌年2月28日までとする。

    管轄の税務署と都税事務所等及び市町村に事業年度変更届を提出する

    記載例を下記に掲載しておきます。必ず管轄の税務署以外に都税事務所等及び市町村にも提出してください

    税務署・都税事務所への決算期変更届

    様式はインターネットのYahoo検索で「異動届出書 〇〇都(道府県)」で入手できることが多いです(分からなければ電話で確認してください)。

    国税庁・都道府県・市町村で統一様式のことが多いので、同じものを3枚(税務署提出用、都道府県税事務所提出用、市町村提出用)作成・提出することになるでしょう。

    なお、東京23区に事務所がある場合は、区役所への提出は不要なので2通作成・提出でOKです。

    決算期変更後の期末日について

    決算期変更により、新しい期末日を決めることになります。期末日については特段の定めがないので、いつでも良いことになります。例えば、3月29日や6月21日などの中途半端な日付を期末日にしても構いません。

    ただ、期末日は月末に合わせた方が良いでしょう。理論上は、期末日付をいつに設定しても良いのですが、実務上はそうは行きません。もし、期末日を中途半端な日付にすると、前期と当期などの決算間比較が完全にできなくなるのと、仕訳などの記帳が非常に煩雑になり、必ずミスを誘発します

    上場企業でも中途半端な決算日を設定している会社はありますが、それは経理を行う人員が充実しているのと、最初からその中途半端な日付を決算期に設定しているので慣れているからできる芸当です。

    中小企業で決算期を中途半端な日付に設定することは、自分達の首を絞めることになると必ずおさえておいてください。

    不動産業の場合、ある日突然大きな売上高が計上されることは少ないでしょう。例えば、3月末決算の会社で3月末の不動産売買契約が締結されるならば、その前の2月末前には取引が始まっているはずです。ならば、必ず不動産売買取引の準備と並行して決算期変更の準備をしておくことで、2月末を新しい決算期に設定するよう調整すべきです。

    さらに、決算期末直前の不動産売買取引(例えば3月末決算で3月31日の取引)になる場合は、決算期変更よりも不動産売買取引自体を遅らせることを検討すべきです。

    不動産売買契約が4月に行われれば、4月の利益になるので結局は決算期変更と同じ効果を得られますし、なによりあなたの会社は売買の売り手側になるので、買い手側より立場が強く要望が通る可能性があるので是非検討すべき事項になります。