簿記の理論的な流れと経理実務の流れの違いと実務必要書類について!





会社に対して経理実務初心者向け研修を行うと、「日商簿記などで勉強する簿記の理論上の流れと経理実務の流れがまるで違うのでどうしたらいいのか?」というごを受けます。

日商簿記などで勉強する簿記理論と経理実務が大きく乖離する理由は弥生会計などの経理システムの進化によるものです。

ひと昔前は実務でも日商簿記などで勉強した通りの経理処理を行っていいたのですが、現在は弥生会計などの会計システムの進化により、仕訳を入力すると税務調査で必要になる総勘定元帳や最終成果物である貸借対照表・損益計算書などの必要書類ができます

そこで、今回は簿記理論と経理実務の差を埋めるために、まずは、①簿記の理論上の経理処理の流れを確認し、次に②弥生会計などの会計システムで行われている経理実務の流れを確認してみましょう。

読み終わる頃には、「理論から実務へ」知識のブラッシュアップができ、経理実務でなにをすれば良いか分かるようになるでしょう。




簿記の理論上の経理処理の流れ

簿記理論の全体像

まずは、簿記の理論上の経理処理の全体像を確認しましょう。

【期中】
仕訳帳⇒総勘定元帳

仕訳帳と総勘定元帳

【期末】
総勘定元帳(期中作成済)⇒試算表⇒決算整理⇒試算表⇒財務諸表(貸借対照表・損益計算書)⇒繰越試算表

決算の流れ(試算表・精算書・財務諸表)

帳簿

各々の取引(商品の売買や建物の取得など)を仕訳の形に変換することから簿記は始まります。

そして取引を記録するノートが帳簿です。

帳簿には大きく分けて2種類存在します。

  1. 主要簿:必ず作成する帳簿
  2. 補助簿:必要に応じて作成する帳簿

 補助簿については、帳簿の名称と内容だけ理解してください。

主要簿と補助簿

仕訳帳

仕訳帳:日々の取引の仕訳を記録する帳簿です。

仕訳帳の記載事項
仕訳帳図解

総勘定元帳

総勘定元帳:仕訳帳記録後に、勘定科目ごとに金額を記録する帳簿です。

総勘定元帳のルール総勘定元帳(現金)総勘定元帳(買掛金・仕入)

試算表

試算表:日々の仕訳や総勘定元帳への転記が正確に行われているかを確認する表です。試算表は①合計試算表、②残高試算表、③合計残高試算表の3種類あります。

合計試算表

総勘定元帳の勘定ごとに借方合計・貸方合計を記入します。

合計試算表

残高試算表

総勘定元帳の勘定ごとに残高を記入します。

残高試算表

合計残高試算表

総勘定元帳の勘定ごとに借方合計・貸方合計と残高を記入します。要は、合計試算表と残高試算表の合体版です。

合計残高試算表

精算表

精算表:試算表に決算整理仕訳を反映させて貸借対照表や損益計算書を作成する過程をまとめた表です。
精算表

ワンポイント

決算整理仕訳とは、1年に1度、期末に行った方が効率が良い仕訳のことです。例えば以下の項目が考えらます(例示列挙です)。

  1. 固定資産の減価償却仕訳
  2. 貸倒引当金の設定仕訳
  3. 費用・収益の見越し・繰延べ仕訳
  4. 売上原価の算定仕訳

貸借対照表・損益計算書

貸借対照表・損益計算書:精算表の右側を分離して外部報告用にまとめた表です。

貸借対照表・損益計算書の図

繰越試算表

資産、負債、純資産の期末残高は翌期に繰り越す必要があります。そのために作成するのが繰越試算表です。

繰越試算表:各勘定の翌期繰越額が正しいかをチェックする表です。

繰越試算表

実務上の経理処理の流れ

会計システム導入により要らなくなる資料がある

まずは、簿記理論上必要になる資料と作成目的をもう一度整理しましょう。

簿記理論上必要になる資料と作成目的
  1. 仕訳帳 ⇒ 日々の取引の仕訳を記録する帳簿。
  2. 総勘定元帳 ⇒ 勘定科目ごとに金額を記録する帳簿。
  3. 試算表 ⇒ 日々の仕訳や総勘定元帳への転記が正確に行われているかを確認する表。
  4. 精算表 ⇒ 試算表に決算整理仕訳を反映させて貸借対照表や損益計算書を作成する過程をまとめた表。
  5. 貸借対照表・損益計算書 ⇒ 精算表の右側を分離して報告用にまとめた表。
  6. 繰越試算表資産、負債、純資産の期末残高は翌期に繰り越す表。

弥生会計などの会計システムは人間の処理と違って単純作業の繰り返しを間違えることはありません。

そうすると、会計システムを利用すれば、人間が作成していたときに必要だった確認用やまとめるための表は要らなくなるわけです。

つまり、簿記理論上必要だった、1.仕訳帳、3.試算表、4.精算表、6.繰越試算表は完全に要らなくなります

それ以外の2.総勘定元帳、5.貸借対照表・損益計算書は内部報告用・外部報告用・税務調査の提出資料になるため必要になりますが、必要な時にボタン一つで取り出せれば良い訳です。

また、簿記理論上は仕訳帳⇒総勘定元帳⇒……と順番にしか作れなかった書類も会計システムでは、仕訳を入力すれば同時に作れます

会計システムで出力できる書類

まとめると、経理実務上必要な書類は以下のようになります。

経理実務上の必要書類
  1. 総勘定元帳
  2. 貸借対照表・損益計算書
  3. 残高試算表

 残高試算表は月次の残高を明らかにする表(内部報告用・銀行融資用)として、簿記理論とは違う意味で必要になり、会計システムを利用していても残ります。

経理実務上の用途別必要書類

経理実務上は弥生会計などの会計システム内の伝票(振替伝票・入金伝票・出金伝票)又は仕訳帳などを利用して仕訳を入力します。

仕訳さえ入力すれば、後は①総勘定元帳、②貸借対照表・損益計算書、③残高試算表が自動的に出力できます

では、どんな時にどんな書類が必要になるでしょうか?

最後に用途別必要書類をまとめてみます。

取締役会報告元資料作成用必要書類
  1. 総勘定元帳
  2. 残高試算表(月次推移版)
税務申告用必要書類
  1. 貸借対照表・損益計算書(直近1年分)
税務調査用必要書類
  1. 総勘定元帳(直近より3年分)
  2. 貸借対照表・損益計算書(直近より3年分)
銀行融資用必要書類
  1. 貸借対照表・損益計算書(直近2年分)
  2. 残高試算表(当期期中進行部分まで)

なぜ最初に簿記理論上の経理処理の流れを説明したのか?

最後になぜ最初に簿記理論上の経理処理の流れを説明したのかについて言及します。

実務上の経理処理の流れが分かっていれば、別に簿記理論上の経理処理の流れなんて知らなくてもいいように感じられる方も多いでしょう。

実は私も最初は経理実務の方の流れと用途別必要書類だけをクライアントに説明していました。

でも、それだと私の依頼した資料はなかなか出てきませんでした

気が付いたのは、「会計システムに依存していると仕訳さえ入力すれば資料がなんでも作れてしまうため、それぞれの資料の作成意味や資料間の繋がりが分からず、結果的になにを出していいか分からなくなる」ということです。

そこで、簿記理論の経理処理の流れを最初に入れたところ、結構な高確率で私の依頼資料が出てくるようになりました

もし、経理初心者の方でこの記事をお読みになっている方がいれば、是非最後に「経理実務上の用途別必要書類」の関係先はどんな意図で上記の資料を依頼するのかを考えてみてください。

そして、もし経理責任者等の経理経験者の方で、新人などの経理初心者の方の指導をする人は最初に簿記理論の流れを説明した後で、「経理実務上の用途別必要書類」の関係先はどんな意図で上記の資料を依頼するのかを経理初心者に質問してみてください。

経理実務の作業効率は簿記理論を理解しているかしていないかで大きく変わってくるかもしれませんね