この記事の概要 重要度
  • 管理委託方式を採用すれば、大きな節税対策に繋がります。
  • 管理委託方式で会社に移転する所得は業務の内容とその単価で決定されます。
  • 裁決例などを見ると、管理料5%前後が管理報酬の基準になっていますが、必ずしもそれに縛られる必要はありません。





不動産賃貸業を営む個人事業主で、ある程度の利益がある人は会社を設立した方が良いということは「不動産賃貸業を営む個人事業主が管理会社を設立するメリットについて!」で説明しました。

実際に不動産管理会社を設立して、不動産賃貸業を営む個人事業主から所得を移転するには、次の3つの方式があります。

  • 管理委託方式
  • 一括転貸方式(サブリース方式)
  • 会社所有方式
  • 所得の移転しやすさでいえば、①管理委託方式>②一括転貸方式(サブリース方式)>③会社所有方式になりますが、所得を移転できる金額上限は、①会社所有方式>②一括転貸方式(サブリース方式)>③管理委託方式となります

    どの方式を採用するかが非常に重要になるため、それぞれの方式の節税対策とその注意点を細かく見ていきましょう。

    今回は3つの方式のうち「管理委託方式」を採用した場合の節税対策とその注意点です。

    なお、その他の方式はそれぞれ「一括転貸(サブリース)方式による不動産管理会社の節税方法と注意点!」、「個人事業主の賃貸用不動産を会社に移管する節税方法と注意点について!」で記載してますのでそちらをご覧ください。

    管理委託方式とは

    管理委託方式とは、不動産賃貸業を営む個人事業主が継続して賃貸不動産を所有し、管理業務のみを不動産管理会社に委託し、個人事業主から会社に対して対価を支払う方式です。

    仕訳で見ると分かりやすいです。

    【個人事業主の業務委託の仕訳】

    借方 金額 貸方 金額
    業務委託費
    100円
    現金又は預金
    100円

    【会社の受託業務の仕訳】

    借方 金額 貸方 金額
    現金又は預金
    100円
    売上高
    100円

    要は、個人事業主は業務委託費という費用を支払うことにより所得金額を減らし、会社は売上高を計上することで所得金額を増やすことにより、所得の移転を行う方式です。

    管理委託方式を採用する場合の会社の管理業務の範囲

    会社で行う管理業務の範囲は、以下のようなものが考えらます。

    管理業務の範囲
  • 入居者の募集
  • 入居者の審査
  • 賃貸借契約の締結・更新
  • 敷金・礼金・保証金等の請求・受領
  • 入居者や近隣住民などのクレーム対応
  • 退去時の書類のやりとり、現地立会
  • 退去時の敷金や日割り家賃等の金銭の精算
  • 家賃の請求・受領
  • 建物を含む敷地の清掃・見回り
  • 共用部分の保守・管理
  • 簡易修繕の実行や業者紹介
  • 不動産管理会社への業務委託料の適正額について

    管理委託方式の税務上の最大の争点は、不動産管理会社への業務委託料をどの位の金額にするかです。

    不動産管理会社への業務委託料を支払うことにより個人事業主は不動産管理会社に所得を分散でき、結果として全体の納税額を減少させることができます。

    個人事業主の所得が多ければ多いほど、業務委託料を高く設定すれば、節税効果を得られることになります。

    しかし、業務委託料を高くし過ぎると、実態の伴わない費用だとして税務調査で否認されることになります。

    個人事業主が設立したような小さい会社(以下、同族会社といいます)では、第三者のチェックの目が入らないため、やりたい放題できてしまいます

    やりたい放題できてしまうために、同族会社では、高額な業務委託料を設定し、意図的に納税額を減少させる手法が使えてしまいます

    これを規制するために、「同族会社の行為計算の否認」の規定を適用して、税務署側は実態の伴わない費用を否認してきます

    ただし、「同族会社の行為計算の否認」は伝家の宝刀であり、基本的にあまりやり過ぎなければ、税務署側は抜くことのできない刀ということになりますので、それほど恐れる必要はないと考えらます。

    税務上否認されてしまう高額な業務委託料はいくら?

    一般的な不動産管理会社の業務委託契約書では、「管理業務の範囲」で紹介した管理内容を契約書の条項に記載し、管理料は全体で○○%などと記載します

    よって、個人事業主と同族会社の業務委託契約書でも管理料○○%という形で記載することになりますが、管理料○○%は一般の管理会社の管理内容とその金額を参考にして積み上げ計算をした結果となります

    裁決例などを見ると、管理料5%前後と結論付けているものが多いですが、あくまでその個別事例での結論であってそれに縛られる必要はありません

    極論を言うと、管理会社を設立したけど、すでにサブリース会社として一般の不動産会社が入っていて、新たに設立した管理会社ではなにも仕事をしていないのであれば、管理料は一切認められないですし、築40年の木造の賃貸建物の管理業務であれば、入居者の募集・建物簡易修繕・建物の清掃・見回りに相当なコストがかかることが想定されますので、管理料は10%でも妥当な場合もあるでしょう。

    大切なのは、同族会社である不動産管理会社に
    どれだけの業務内容を負わせるかという範囲を業務委託契約書で明確にして、実際にその範囲の仕事をさせたことが分かる業務報告書を作成させること
    個々の業務内容に対する報酬を適正金額内で決定させること
    でしょう。

    ①で業務内容が実際と相違する又は行った業務内容を文書で証明できないのであれば、業務委託料の一部又は全額が税務上否認される可能性がありますし、②で著しく高額な業務報酬を設定していれば、高額と認められる部分の金額が税務上否認される可能性があります

    つまり、個人事業主(不動産オーナー)ができる対策としては、
    業務契約書と業務報告書を作成すること
    業務報酬を著しく高額にしないこと適正額は誰にも分からないのであなたが適正だと思う金額で良いですが、あまりに高額すぎれば当然否認されます)
    になります。

    ここまで決定しておけば、仮に業務委託料が高額すぎるとして税務署が否認しようとする場合、立証責任は当然税務署側が負うことになります

    もし私が、税務調査をする側ならば、ある程度きちんとした証拠が提出されている以上、覆すのを諦めると思います。

    個人事業主と会社のどっちが負担するか迷う費用について

    個人事業主と同族の不動産管理会社が管理委託業務を締結するときに細かい業務委託内容を決めておかないと後でどちらが費用を負担するかあやふやになり問題になることがあります

    例えば、共用部分の電球交換費用を個人事業主で費用負担するか不動産管理会社で費用負担するか、時々によってバラバラだと金額的に重要なインパクトがある場合は、不動産管理会社の業務委託料を一部否認されてしまうかも知れません

    また、細かい決め事をしておかないと、個人事業主と管理会社の両方で同じ電球交換の費用計上がなされているという間違いが起こる場合もあります

    不動産管理会社を設立した節税目的という趣旨から考えると、不動産管理会社に業務委託料をなるべく多く払いたいというのが本音になりますので、基本的に不動産管理会社の費用負担で管理業務を行うと決めておけばよいでしょう。

    ただし、大規模修繕など資本的支出に該当する場合は、固定資産計上が必要になる部分も出てきますので、建物所有者である個人事業主の費用負担にしておかないと管理を委託しているだけという建付けに合わなくなりますので、注意してください

    すでに外部業者に管理業務を委託している場合や管理委託業務をさらに外部業者に再委託する場合の業務委託料について

    税務相談でよく不動産オーナーから聞かれる質問に、
    ①「すでに民間の不動産会社に不動産管理業務を委託しているのだけど、自分でも管理会社を設立すれば節税対策になるの?」
    ②「会社を設立して、管理業務を行っているのだけど、一部を民間の不動産会社に再委託した場合、個人事業主に請求する業務委託料を増額していいの?」
    というものがあります。

    1つ目の質問に対しては、「民間の不動産会社に管理業務をお願いしている範囲以外の業務を同族の管理会社を設立して行えば、その分のみは業務委託料(=費用)が計上できるので、節税対策になります」というのが答えになります。

    すでに民間の不動産会社に管理業務を委託している場合は、ほぼ一般的な管理業務をカバーしている可能性が高いので、会社設立の労力と節税対策できる金額を比較のうえ、会社設立を検討すべきでしょう。

    2つ目の質問に対しては、「再委託によって会社の費用が増えたからといって、個人事業主に請求する業務委託料を増やすことはできません」というのが答えになります。

    今まで、請け負っていた業務を委託会社(同族会社)と再委託先(民間の不動産会社)の2つに分けただけなので、当然個人事業主(不動産オーナー)に請求できる業務委託料を増やす原因にはなりません

    例えば、今までの同族管理会社の業務委託報酬が8%だったのに、同族管理会社の業務委託範囲の一部である清掃業務をA不動産会社に3%で再委託したので、同族管理会社の業務委託報酬を11%に変更するということは認められません。

    個人事業主と同族会社の立場がごちゃごちゃになるために起こる間違えで分からなくもないのですが、大切なのは、業務委託料はあくまで管理業務の内容×単価で決まりますので、作業を2社に切り分けただけで業務委託料が増加するということはないのでご注意ください。