この記事の概要 重要度
  • 新築建物は事業供用日の決定方法で減価償却費が変わり節税対策になることもあります。
  • 期末間際の新築建物にかかる消耗品費は計上時期が翌期になる可能性があるため注意しよう。




減価償却費とはなにか?

減価償却費とは、会社が長期間使用する資産を購入した場合(固定資産といいます)、その購入価額を一時的に資産として計上した後,税法上の法定耐用年数にわたって規則的に費用として配分していくことをいいます。

事業供用日で減価償却費の計上開始時期は変わります

会社が従う税法である法人税法では、たとえ新築賃貸用建物が完成していても実際に使用していなければ、減価償却費を計上できないとしています。

つまり、実際に新築賃貸用建物を使用した日(事業供用日といいます)がいつかによって、当期に計上できる減価償却費は異なってくることになります。

例えば、3月末決算の会社で3月中に賃貸用建物の建設は完了していて、実際に使用していれば当期3月から減価償却費が計上できますが、3月中に建物は完成していても実際に使用したのが4月からならば、翌期の4月から減価償却が計上することになります。

たった1か月の減価償却費なんてたかが知れていると思うかもしれませんが、新築の賃貸用建物の建築金額というのは基本的に高額になるため、あまり無視できない節税額になることもあります

また、なにかしらの原因で新築建物の事業に使用できる日が遅れれば遅れるほど、建物の減価償却費は月数按分なので、その分だけ減価償却費が減ること(≒経費が減ったため納税額が増えること)につながります

状況を把握するために設例を作ったので、減価償却費の額を計算するとともに、節税額が意外に大きくなることを確認してみてください

賃貸用の木造建物(5,280万円)が3月末に完成し、その日から実際に使用し始めた場合の当期の減価償却費を計算してください。なお、会社の決算期は3月末です。
【解答】

当期の減価償却額は20万円となります。

【解説】
賃貸用建物の減価償却費の計算には法定耐用年数というものを用います。法定耐用年数とは税法上決められた、固定資産の使用可能期間(≠実際の使用可能期間)です。木造建物の場合は22年と決められています。

3月末の減価償却費=5,280万円÷22年(木造建物の法定耐用年数)÷12か月×1か月=20万円

つまり、当期3月中に実際に使用を開始していれば、20万円の経費が計上できたこと(≒節税できたこと)になります。

事業供用日(実際の新築賃貸用建物の使用日)の判断はどうする?

ここまでは、新築の賃貸用建物を実際に使用した日が事業供用日であるとぼかして書いてきましたが、では実際に使用した日とは建物取得プロセスのどの段階のことを言うのでしょうか?

主な事業供用日の候補としては以下の4つが考えられます。

  • 建物の引渡しを受けた日
  • 会社自らが賃借人の募集を始めた日又は不動産仲介業者に賃借人の募集を委託した日
  • 賃借人と賃貸借契約を締結した日
  • 賃貸借が開始し賃借人から賃料が支払わた日

考えられる事業供用日の候補を4つ挙げてみましたが、下の候補にいくにつれ、事業供用日は遅くなる(経費を計上するのが遅くなる)ことになります。

まずは、建物の引渡しを受けた日ですが、建物の引渡しを受けただけでは、その建物を事業のために使用したかどうかはわからないです。

極論を言えば、社長の自宅として居住用に使用することもできますので、必ずしも事業のために使用したかどうかはわからないことになります。

次に、会社自らが賃借人の募集を始めた日又は不動産仲介業者に賃借人の募集を委託した日ですが、これは事業供用日になります

過去の税務調査の是認例に、ホームページを介してインターネット上で募集事実があり、期末日までに賃貸借の申込み(契約ではない)が1件あったことをもって事業が開始されており、当期の減価償却費として認めらた事例があります。

賃借人と賃貸借契約を締結した日、賃貸借が開始し賃借人から賃料が支払わた日は、会社自らが賃借人の募集を始めた日又は不動産仲介業者に賃借人の募集を委託した日が事業供用日になるなら当然に事業供用日になります

よって、会社自らが賃借人の募集を始めた日又は不動産仲介業者に賃借人の募集を委託した日、賃借人と賃貸借契約を締結した日、賃貸借が開始し賃借人から賃料が支払わた日のどれかを会社が事業供用日と判断して新築の建物を建築した都度利用していれば、良いということになります。

節税対策だけを考えるなら、賃借人の募集を開始してから賃借人と賃貸借契約を締結するまで何か月も時間がかかることも想定されますので、会社自らが賃借人の募集を始めた日又は不動産仲介業者に賃借人の募集を委託した日を事業供用日とすることが良いと考えらます。

期末間際の新築建物の建築の際は消耗品費の計上にも注意しよう!

新築建物を建築する際には、もともと建物附属設備や器具備品になるものを、10万円未満なので消耗品費(経費)に計上しているもの(少額減価償却資産といいます)があるでしょう。

消耗品費だから購入した時や新築建物が完成した時に費用処理している事例が多いですが、もともとは建物付属設備や器具備品のため、新築の建物と同じように事業供用日で消耗品費として経費計上されますので間違えないようにしましょう。

期末日に「建物」が完成して建築業者から引渡しを受けているだけでは、事業供用日にならなかったように、「建物附属設備」や「器具備品」も事業供用日を迎えていなければ、経費に計上できない可能性があります

こちらは減価償却費と違い、少額減価償却資産と判断して消耗品費(経費)に計上しているものが多いとかなりの痛手になる可能性もありますので注意してください。